自民党総裁選が激しく盛り上がる中、石破茂首相が着々と「次」を見据えた動きを強めている。政界関係者の間では「危ない石破」に変身しつつあるとの声も出始めた。
そのきっかけとなったのは、10月1日に都内で行われた「日本メガネベストドレッサー賞2025」。政界部門で受賞した石破首相は、授賞式で異色のサングラス姿を披露。ネット上では「まるであぶない刑事」「ボス感がすごい」といったコメントが相次ぎ、政治の枠を超えて注目を集めた。
だが話題はファッションだけにとどまらない。石破首相は退陣を控えながらも、精力的な外交・政策活動を展開しているのだ。9月には国連総会一般討論演説に出席し、ガザ問題など国際課題に言及。さらにトランプ米大統領と立ち話を交わし、訪日を招請し、月末には韓国を訪れ、李在明大統領との首脳会談を実現させるなど、外交舞台で存在感を示している。
国内でも野党第1党・立憲民主党との接近が目立つ。野田代表が掲げる「給付付き税額控除」や「ガソリン税の暫定税率廃止」について前向きな姿勢を見せ、緊密な連携を築きつつある。さらに、戦前の「反軍演説」として知られる斎藤隆夫衆院議員(当時)の国会発言を議事録に復活させようと調整しており、戦後80年の節目に向けたメッセージ発表の準備も進めている。
こうした一連の動きについて、政界アナリストは次のように指摘する。
「石破首相は自らのカラーを鮮明にし、次の政権にその継承を強く求めている。新たなキングメーカーを狙っているとも言えるし、場合によっては総裁選への再挑戦を視野に入れている可能性すらある」
石破首相は現在68歳。麻生太郎元首相より17歳若く、トランプ米大統領よりも一回り若い。海外では70代後半でも現役で活躍するリーダーが存在することを考えれば、再チャレンジの可能性を排除できない。
“危ない石破”の異名がネットで飛び交う一方で、政界では「再浮上への布石では」との見方がじわりと広がっている。サングラス姿のユーモラスな話題の裏に、次の日本政治をにらんだ周到な布石が潜んでいるのかもしれない。
(田村建光)

