スーパーGT公式テストではGT300クラスのトップ10に度々顔を出していたNILZZ Racing。このチームで今季からジェントルマンドライバーの井田太陽と共に日産GT-R NISMO GT3(車名未発表)を駆るのが、ジェームス・プルだ。
プルはイギリスとマレーシアの国籍を持つ26歳。2015年にはMSAフォーミュラ(現イギリスF4)時代にランド・ノリス、コルトン・ハータ、ダニエル・ティクトゥムと争った経歴を持ち、2017年にはBRDC F3(現GB3)でランキング2位を獲得。その後、キャリアの軸足をGTレースへと移した。
彼はGTワールドチャレンジ・ヨーロッパに3年間参戦したが、2021年末にFIAのドライバーランクがシルバーからゴールドへ昇格したことで、キャリアの見直しを余儀なくされた。優秀なゴールドドライバーが世界中に多数いる中、GTレースでシートを獲得するのは容易ではないからだ。
その頃プルはスーパーGTが開催されていたSUGOを訪れた。そこで当時同じADDマネジメントに所属していたトヨタのGT500ドライバー、サッシャ・フェネストラズを通じて宮田莉朋と知り合い、交流を深めた。その宮田との友情が、日本でレース活動をする道を切り開いていったという。
「日本に来た時はFIAのゴールドドライバーになってしまっていたからシート獲得が難しく、レースができていなかった」
プルはmotorsport.comのインタビューにそう語った。
「ずっと日本に来たいと思っていたので、“ワーキングホリデー”の形で来日した。莉朋は東京を案内してくれて、日本のレースについて色々教えてくれた。その代わり、彼がスーパーフォーミュラで遠征中は彼の猫の世話をしていたんだ!」
「サッシャを通じて莉朋と知り合い、その後東京で一緒に過ごすようになって、シムレースや音楽など共通の趣味が多いことがわかった」
「彼は本当に素晴らしい人間で、すごく助けてもらった。今回シートが決まったときに真っ先に連絡したのも彼で、『君がいなければここまで来られなかった』と伝えた」
プルは2024年にはHitotsuyama Racingからスーパー耐久に参戦。この年はST-Zクラスでの参戦だったが、2025年はST-XクラスでアウディR8 LMS GT3 Evo2をドライブし、2度の表彰台を獲得した。そして同年はスーパーGT・GT300クラスに参戦するHELM MOTORSPORTSのリザーブドライバーとなり、鈴鹿でのテストでGT-Rをドライブするなど経験を積んだ。
「2024年の終わり頃からスーパーGTのことは考えていたけど、ヨーロッパでGT3に乗っていたとはいえ、日本ではほとんど無名だった」とプルは言う。
「だからスーパー耐久で1年間GT3に乗り、まずまずのシーズンを送ることができた。そして昨年はスーパーGTのシートを得るために必死に動き、チームに連絡を取り続けた」
「スーパーGTを初めて見た時から、ずっとここで走りたいと思っていた。だから今ここにいることが本当に嬉しい」
「日本で全てをひとりでやるのは本当に大変だったけど、ようやくその努力が報われた」
所属するNILZZ Racingは英語を解するスタッフがいないことから、プルは日本語の習得にも引き続き力を入れていると語る。現在のレベルについて聞かれると、「まだまだです!」とのこと。
「チームは本当に素晴らしくて、みんな良い人たちだ。ただ、英語を話せる人がいないので、レースに向けて日本語を一生懸命勉強している。チーム内で使われるスラングを理解するのが大変だ。無線もすべて日本語になる」
「今も毎日アプリで勉強をしていて、少しずつ上達してきている」
“植毛GT-R”や“脱毛GT-R”の名で親しまれてきたNILZZ Racingは、開幕前テストでプルと藤原大暉が好タイムを記録した。先日の富士テストでは、2日間総合タイムで29台中11番手であった。
プルは明確な目標設定は避けつつも、自身のポテンシャルを示すには十分なパフォーマンスが期待できると語る。
「ここまでのペースは決して悪くない。もちろんまだ序盤なので、誰がどのタイミングでアタックしているのか、誰が爪を隠しているのかは分からない。でも全体的には良い感触だ」
「これは自分の実力を示す絶好のチャンスだと思っている。今がキャリアの中で一番いいパフォーマンスができている感覚がある」
「スーパー耐久での走りがあまり注目されなかったのは残念だったけど、だからこそ今年は全力を尽くして、自分の実力を見せたいと思っている」

