
【今さら聞けないサッカー用語:ハーフスペース】理論的に考えることで、戦術が大きく転換。活用方法は多様化し、相手側の対策も進化した
聞いたことはある、何となく意味も分かる。でも、詳しくは知らない。そんなサッカー用語を解説。第14弾は「ハーフスペース」だ。
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ピッチを縦方向に5つのレーン(エリア)に区切った場合、中央(センターレーン)とアウトサイド(ウイングレーン)の間に存在する中間のエリアを指す。言葉の通り「半分のスペース」という意味だが、いわゆる”ポジショナルプレー”との関係性が強く、現代サッカーの攻撃設計を理解するうえで、極めて重要な概念になっている。
旧来のサッカーでも指導者や選手が抽象的にイメージすることはあったかもしれないが、中央とサイドの中間にあるハーフスペースの存在を理論的に考えるようになったことで、チーム戦術が大きく転換した。
中央はゴールに最も近いが守備の密度が高く、相手のボランチやセンターバックに囲まれやすい。一方でサイドは比較的自由にボールを持てるが、タッチラインがあるためプレーの方向が限定され、ゴールに直結しにくい。ハーフスペースはその中間に位置するため、中央ほど守備の密度が高くなく、サイドほどプレーの選択肢が制限されないという特徴を持つ。
このエリアでボールを受けると、選手は複数の選択肢を持つことができる。前方へドリブルで仕掛ける、中央のFWへスルーパスを通す、外側へ展開する。あるいは直接シュートを狙うといったプレーが可能になるのだ。
守備側から見ると、誰がどう対応するべきかが判断しにくい。センターバックが出れば中央が空き、サイドバックが絞れば外側が空く。こうした守備の判断の遅れを生みやすい点が、ハーフスペースの大きな価値と言える。
たとえば4-3-3のウイングが外に張った状況で、インサイドハーフがこのエリアにポジションを取ることで、相手の守備ラインの間に立ち、攻撃の起点を作るケースが増えている。このシステムを使うチームが増えたのも、ハーフスペースの活用と大きく関係している。
もちろん対戦相手にもその狙いが分かりやすいため、流動的なポジションチェンジなども必要になる。サイドバックの選手がビルドアップに関わりながら、インナーラップで抜けていくなど、ハーフスペースの活用方法は多様化している。4-2-3-1など異なるシステムをベースにしながら、動きの中でハーフスペースを活用するのも有効なプランだ。
代表例は、ペップ・グアルディオラ監督がマンチェスター・シティを率いた初期の数シーズン。高いポゼッションをベースに、ハーフスペースを活用する戦術が浸透した3年目の2018-19シーズンは国内のタイトルを総なめにした。
しかし、プレミアリーグをはじめ欧州全体にハーフスペースを活用した戦術が広まっていくなかで、相手側の対策も進化する。ハーフスペースを埋める5バックや徹底した中閉めのブロック、攻撃側の位置的優位を封じるマンツーマンなどだ。
一度、対策が進むと、守備の方が攻撃を上回りやすいのはサッカーの傾向であり、もはやハーフスペースを狙うだけでは得点を奪うことは難しい。それでも大事な要素であることは間違いなく、カウンターやロングボールを起点とした波状攻撃など使い分けていくことが有効だろう。
文●河治良幸
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