「俺だけ」という呪い
「お前に優しくしてくれるのは俺だけ」。彼が口癖のように繰り返すその言葉を、いつしか本当のことだと思うようになっていました。
友人からの食事の誘いも、「あいつら本当にお前のこと考えてると思う?」と言われれば断るしかなく、気づけば私の世界は彼だけになっていたのです。
会社の飲み会も、学生時代の友人との集まりも、少しずつ遠ざかっていきました。「俺がいないとお前は生きていけないだろ」。その言葉に頷くたび、本当にそうなっていく自分がいました。
ひとりで決めた夜
別れを決めたのは、ある夜の電話がきっかけでした。残業で疲れ果てた私に彼は「俺を待たせるなんて、どういうつもり?」と言いました。謝りながら、ふと気づいたのです。私はいつも謝ってばかりだ、と。
翌日、「別れたい」と伝えると、彼は笑いました。「無理だよ。お前は俺なしじゃやっていけない」。その言葉を聞いた瞬間、不思議と胸の奥が凪いでいくのを感じました。「やっていけるかどうか、自分で確かめたい」。そう伝えました。
