ナショナリズムとグローバリズムはなぜ揺れ動くのか
–––––書籍の中でも触れられていましたが、近年は反グローバリズムの流れも強くなっていると感じます。この点について、どのように見ていますか。
トランプ大統領の動きなども象徴的ですが、世界全体の流れとして、たしかに現在は反グローバリズムの方向に動いていると思います。おそらく、この流れはしばらく続くのではないでしょうか。
ただ、反グローバリズムが完全に正しいかというと、そうとも言い切れません。歴史を見ていると、ナショナリズムの時代とグローバリズムの時代が行き来してきたからです。
国ごとに団結して国家の利益を重視するほうがいい、という考え方が強まる時代があります。しかし、それだけでは国内格差が広がったり、大きな市場にアクセスできなくなったりする。そこで、世界をつないだほうが発展するという発想が広がり、グローバリズムが進みます。
ところが、そのグローバリズムが行き過ぎると、今度は国民国家のまとまりが弱くなり、「やり過ぎではないか」という反動が出てきます。そして再びナショナリズムが強くなる。
–––––ナショナリズムとグローバリズムが振り子のように行き来してきたと。
そうですね。どちらか一方が正解というより、歴史の中でバランスを取りながら揺れ動いてきたと言えると思います。今は行き過ぎたグローバリズムへの反動として、反グローバリズムの声が強くなっている時期なのではないでしょうか。
歴史を学び、世界の流れを予測する
–––––中東情勢やウクライナ戦争、あるいは台湾有事など、現在の国際情勢を理解するうえで、どのように学んでいけばよいと思いますか?
ニュースは、長く続いているマンガを途中から読み始めるようなものです。それまでの経緯を知らないと、なぜその出来事が起きたのかが見えにくい。ただ、だからといって最初から全部読むのも大変ですよね。
世界史も同じで、ニュースを見ていて「気になるな」と思ったことを少し調べてみる。YouTubeやXなども含めて、そこから徐々に興味を広げていけばいいのではないかと思います。
–––––台湾有事など日本に直接影響がありそうなテーマだと、関心も高まりそうです。
生徒からも「台湾はどうなるんですか」と聞かれることがあります。その背景を理解するには、中華人民共和国がどう成立したのかを押さえることが重要です。
蒋介石の国民党と毛沢東の共産党が戦った国共内戦の結果、毛沢東が中国本土で中華人民共和国を建国し、蒋介石は台湾へ逃れて中華民国政府を維持する。この流れは教科書にも書かれています。
ただ、その後の文化大革命や天安門事件、台湾の戦後史などは、かなり簡略化されている印象があります。予備校でも第二次世界大戦後の部分は「戦後史」としてまとめて扱われることが多いですね。
–––––最近は国際情勢の緊張が高まり、日本でも不安の声を聞くことがあります。歴史を学ぶことは、そうした状況を冷静に見ることにつながるのでしょうか。
歴史を学べば必ず冷静な判断ができるかというと、難しい部分もあると思います。ただ、大きな流れを見ることはできます。例えばグローバリズムと反グローバリズムのように、世界が今どちらの方向に動いているのか、という流れです。
歴史を振り返ると、その時代を動かした人物は当時の人から見ると予想不能に見えたことも多い。例えばナポレオンもそうです。今のトランプの行動も、一つ一つを見ると理解しにくい部分がありますが、後から振り返ると「こういう流れだったのか」と説明できる可能性があります。
今はトランプの「Make America Great Again」や、イタリアのメローニ政権、ハンガリーのオルバン政権のように、自国の利益を優先する政治が広がっている印象です。そうした流れが、これからの時代は強くなっていくのかもしれません。
取材・文/毛内達大

