仲間に会える場所を作ることが地域貢献に
100周年を記念して実施された巡回企画展© ICEBUCKSアリーナのスタンドはファンが応援する場であると同時に、ファン同士が仲間に会うための場所でもあり、セルジオ氏は、そうした場所を無くさないためにもチームを存続する必要があると考えているそうだ。
「僕が最初にアイスバックスへの協力を頼まれたとき、『チームがなくなったら友達に会う場所がなくなるから、どうにかしてほしい』と頼まれました。僕はスポーツってこういう力があるんだ、勝ち負けじゃなくて、みんなが友達になって、スポーツ観戦が憩いの場になっているんだと驚いたんです」
だからこそ地域貢献において、選手がプレーするフィールドはきっかけでしかないとセルジオ氏は語る。
「スポーツは試合に出られる人の数は限られている。でもスタンドには選手になりたい子ども、なれなかった大人たちがあふれています。フィールドはもちろん大切だけれども、それは人が集まるためのきっかけでしかありません。人が集まれるスタンドがあり、彼らが仲良くなれる環境をつくること、それが地域貢献です」
訪問先の栃木県富屋特別支援学校で、アイスホッケーの要素を屋内で手軽に楽しめるユニホックを教える選手たち© ICEBUCKSただ、年間を通して試合が開催される期間は限られている。そこでアイスバックスはいろいろなイベントを開催したり、選手が地域の幼稚園や特別支援学校を訪問したりと、ファン同士、地域の人と選手がコミュニケーションを図る、ハッピーとちぎプロジェクト、略して「ハピトチ」という活動を行っている。
こうした歩みを続け100年を越えた今、次の100年に向かってアイスバックスは何を目指すのかを伺ったところ、こんな答えが返ってきた。
「時間が経てば選手も地元の人も入れ替わっていきます。今、応援してくれている子どもたちが次の選手になる。選手は引退したら、ここに残って地域に貢献する。勝った負けたじゃなくて、そういうことを積み重ねていけるチームを作るという理念はぶれちゃいけません。そうやってお祭りと同じように、地域に密着して何百年と続けていきたいですね」
今回の取材は日光と東京をオンラインで繋いで行った。こうした科学技術の進歩は便利であると同時にとても危険なことだと警鐘をならす。「科学の進歩は否定はしない。ただ、今、世界中の社会で争いが起きているのは、人と人のぬくもりがなくなってきているからじゃないですかね」。
人と人が繋がり、喜びや悔しさを共有し、互いを思い合う、そんな機会が失われつつある今。スポーツは、地域を、そして世界を繋ぐ救世主になってくれるのかもしれない。
text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:株式会社栃木日光アイスバックス
