復活の呪文か、それとも怪しい暗号か。10月1日のヤクルト戦で、なんとも珍しい「事件」が起きていたことをご存じか。ベイスターズ公式観戦アプリ「BAYSTARS STAR GUIDE」が突如として異常な挙動を見せたのだ。球団が鳴り物入りで導入したAI解説機能「BASE☆BLUE」。この夜ばかりは、その先進技術が思わぬ方向に迷走してしまった。
6回表、DeNAの武田陸玖がプロ初登板。二死二塁の場面でヤクルトの代打・鈴木叶との初対戦だ。カウント0-1から投じた124キロのスライダーを中前へ弾き返され、痛恨の同点打を許した。ところがその場面でアプリ画面に現れたのは「戦入時でで全舗でどもあさひうぁばあだっいじょう」という意味不明の文字列だった。
「ホラーかと思った」
「一瞬、スマホが壊れたかと焦った」
「まるでドラクエの復活の呪文みたい」
利用者はそんな声を上げ、大騒ぎに。次打者・岩田幸宏の場面では通常通りの解説が表示されたため、初顔合わせのデータ不足でAIが処理落ちしたのではないか、との憶測が出た。
「BASE☆BLUE」は8月18日に導入された新機能で、投手と打者の対戦過去データを瞬時に解析し、打席ごとの見どころや相性をリアルタイムに提示するのが特徴だ。横浜スタジアムでの観戦時はもちろん、自宅での試合中継視聴中にも利用可能で、球団は「NPB球団として初の公式AI解説サービス」とアピールしている。名称の「BASE」には、BASEBALL(野球)、DATABASE(データベース)、FAN BASE(ファンベース)という3つの意味が込められている。
DeNAは親会社がIT企業という強みを背景に、NPBでも先進的なデジタル施策を積極的に展開してきた。トラッキングデータの活用や球場演出のデジタル化はすでに定評があり、「AIを駆使する球団」というイメージが定着しつつある。そんな中で導入された観戦アプリは、本来なら自慢の取り組みだが、今回はまさかの不具合により、別の意味で注目を浴びることになってしまった。
武田と鈴木の初対戦で起きた文字化けアクシデントは、幸いにも笑い話として受け止められた。ただ一方で「大事な場面でまた不具合が出たら困る」との不安も。それでも結局はネタにして楽しんでしまうのが、ベイスターズファンらしいが。
テクノロジーは時に、思わぬトラブルを招くことがある。クライマックスシリーズの真剣勝負では、ぜひ万全の状態で!
(ケン高田)

