
「同じ種と思われていた鳥が、実は別種だった」
スウェーデン・ウプサラ大学(Uppsala University)の研究で、これまで1つの種だと考えられてきた日本の鳥が、最新の遺伝子解析により、2つの種に分かれることが判明しました。
そのうちの1つは科学的に新種として正式に認定され、「トカラムシクイ(Phylloscopus tokaraensis)」と命名されています。
一体どのような鳥なのでしょうか?
研究の詳細は2026年3月17日付で科学雑誌『PNAS Nexus』に掲載されています。
目次
- 見た目では分からない「もう1つの種」
- 新種発見が示す「見えない絶滅リスク」
見た目では分からない「もう1つの種」
今回研究対象となったのは、日本に生息する希少な渡り鳥「イイジマムシクイ(Phylloscopus ijimae)」です。
この鳥は、東京の南に位置する伊豆諸島と、そこから南西約1000kmにあるトカラ列島という、限られた地域にのみ生息しています。

従来、これらの個体群は同じ種と考えられてきました。
しかし研究チームは約10年前、DNA配列の違いから両者が明確に異なる可能性に気づきます。
その後、現地調査や博物館標本の比較、そして全ゲノム解析などを組み合わせた詳細な研究が進められました。
その結果、トカラ列島の個体群は伊豆諸島のものとは遺伝的に大きく異なり、さらに鳴き声にも一貫した違いがあることが確認されました。
興味深いのは、外見上の違いがほとんど見られない点です。
羽の色や体の大きさなどはほぼ同じで、人の目では区別できません。
それでも遺伝子と鳴き声という「見えない特徴」が、両者を別種と裏付けたのです。
【実際に新種と認定された鳥がこちら】
この結果を受け、研究者たちはトカラ列島の個体群を新種「トカラムシクイ(Phylloscopus tokaraensis)」として正式に記載しました。
また、日本国内で新種の鳥が発見されたのは、1981年に記載されたヤンバルクイナ以来45年ぶりとなります。
新種発見が示す「見えない絶滅リスク」
今回の発見が重要なのは、新種が見つかったこと自体よりも、その背景にあります。
トカラムシクイとイイジマムシクイはいずれも、非常に限られた島にのみ生息する小規模な個体群です。
さらに、遺伝的多様性も低く、環境変化や病気に対して脆弱である可能性が指摘されています。
つまり、これまで1種とされていたことで見えにくくなっていた「絶滅リスク」が、実はより深刻だったことが明らかになったのです。
研究では、両者が約300万年前に分岐し、その後は交雑せず独立した進化を続けてきたことも示されています。
見た目は似ていても、進化的には完全に別の道を歩んできた存在だったのです。
このように、外見だけでは区別できない「隠蔽種」は世界中に存在すると考えられています。
そして、それらはしばしば認識されないまま環境変化の影響を受け、気づかれずに消えていく可能性があります。
今回の研究は、DNA解析のような手法が、こうした“見えない生物多様性”を明らかにするうえで不可欠であることを示しています。
参考文献
New rare bird species discovered in Japan
https://www.uu.se/en/press/press-releases/2026/2026-03-17-new-rare-bird-species-discovered-in-japan#:~:text=A%20previously%20unknown%20species%20of,are%20identified%20around%20the%20world.
45 年ぶりに鳥類の新種発見!? ―トカラ列島で独自に進化を遂げた希少種トカラムシクイ―
https://research-er.jp/articles/view/154159
元論文
Discovering and protecting cryptic biodiversity: A case study of a previously undescribed, vulnerable bird species in Japan
https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgag037
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

