●こぼれ話
「これからはパソコンだ」と思う田中真史さんに、「やっぱりオフコンだ」と立ちはだかる先輩。それでも自分を信じて独立した。意志の強さと行動力、そして当時28歳という年齢にも驚く。田中さんの先見性もさることながら、それほどまでにパソコンは大きな可能性を感じさせるものであったのだと、当時をイメージすることができる。秘めた可能性にワクワク感を覚えた人も多かったのだろう。
ちなみにオフコンを選んだ先輩は、少しビジネスを変化させながらも継続して事業されているとのこと。つまり、どちらを選ぶかというよりも、選んだ先でどう成功させていくかという強い意志が、田中さんにも先輩にもしっかりあったということではないだろうか。
独立時のエピソードのほか、組み込み系のテスト事業からWeb系のテスト事業への転換、上場、AIを活用したビジネスモデルへのシフトなどからも分かるように、決めたことを実現させていく実行力とチャレンジ精神には凄まじさを感じる。
そして、次は競走馬の事業。競馬に明るくない私でも、有馬記念を獲るということがとても大きな挑戦であることは想像できる。「少しでも可能性があるならチャレンジしたい」と、とても明るくおっしゃるので「本当に実現するのでは」と思えてくる。できた時の喜びや希望のほうに目を向けて、一緒に進んでみたくなるパワーがある。「あー、こんな感じで巻き込んできたのかな」と、田中さんが発するパワーが社員に伝播していく様子を感じ取ることができる。
ソフトウェアテスト企業であるバルテス・ホールディングスは、AIの進化により、その役割が大きく変化している。これをチャンスと捉え、人に依存し過ぎないビジネスモデルの転換を進め、求められる人材像もしっかりと変化させてきている。最終的には、働いてくれる社員の豊かさの追求だ。
「どんな社長ですか」と社員の方に聞いてみると、「本当に話しやすいです」と明るく即答いただけた。良い関係性が分かる表情であった。田中さんの温かく熱い思いはしっかりと届いているようだ。(奥田芳恵)
心に響く人生の匠たち
「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。
「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
奥田喜久男(週刊BCN 創刊編集長)
<1000分の第389回(下)>
※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

