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綱島のYTCは日本企業とアップルの絆。ティム・クックCEOが国内サプライヤー4社のプレゼンを受ける

iPhoneカメラならではの自然な色合いを実現している有機と無機両方を扱うAGC

続いてプレゼンテーションをしたのはAGC。

同社からは代表取締役 兼 社長執行役員の平井良典氏、代表取締役 兼 専務執行役員の倉田英之氏、専務執行役員 電子カンパニー プレジデントの鈴木伸幸氏がいらっしゃった。

AGCの旧社名『旭硝子株式会社』が示すように、同社はガラスメーカー。ガラスメーカーとしては世界最大規模の企業で、建築材料、自動車向けガラス、電子部品……と、あらゆるガラス関連製品を扱っている。また、現在ではガラス関連素材だけでなく、化学品事業や、バイオ医薬原薬、診断薬素材なども作る総合素材企業となっている。

今回はiPhone 17シリーズのカメラ部分の話ということで、AGCが作っているIRカットフィルター(以下IRCF)について説明された。

AGCのIRCFは、iPhone 17シリーズのすべての製品の、フロント側の18MPセンターフレームカメラを含む、すべてのカメラモジュールに使われている。

通常、スマホのカメラのセンサーは、すべての光に反応する。つまり、赤外線にも反応して映像を作ってしまう。太陽光などが強く、赤外線が多く含まれていると激しく赤飛びしているような映像になってしまうのだ。それを防ぐのがIRCFというわけである。

iPhoneならではの、美しいバランスの取れた自然な色合いの写真を実現するために、AGCのIRCFは大きな役割を果たしている。赤外線と言われる領域(通常700nm以下の波長)の光をスパッと遮断し、可視光域の光に完全に影響を与えない……という、非常に特殊な性能を必要とするのだ(赤外線カットフィルターと言われるが、400nm以上の紫外線もカットされている)。

AGCはガラスという『無機』素材の世界トップ企業でありながら、化学品薬品、バイオ医薬なども扱っており『有機』の技術も併せ持っている。その技術が、赤外線をスパッと除外しながら、可視光に影響を与えずにバランス良く透過するという性能に活きている。これこそが、iPhoneの写真/動画の自然な美しさを大きく支えている技術なのである。

また、スマホのカメラモジュールは非常に『薄さ』を要求される世界。センサー、レンズ、ズーム機構などが1/1000mm単位のスペースを奪い合うことで、スマホ本体の最凸部の厚さが決定している。赤外線をカットしつつ、極限の薄さ、かつ割れないこと……も要求されるという、過酷な要求に応えているのもまたAGCの技術なのである。

絶縁体であるセラミックの内部に立体的回路を組み込んだ、京セラのカメラ基板

iPhoneのカメラを実現するのに、京セラのセラミックもまた欠かせない役割を果たしてる。

話をされたのは、代表取締役社長兼執行役員社長の谷本秀夫氏、取締役兼執行役員常務の嘉野浩市氏、取締役兼執行役員常務の山田通憲氏。

京セラといえば、独自技術を持つ京都の企業……ということで知られているが、そもそもなぜ、京セラの部品が世界中で重用されるかご存じだろうか?

セラミックというのはその名の通りルーツは『焼き物』。工業材料としての『ファインセラミック』は酸化物(アルミナ、ジルコニアなど)、炭化物(SiC)、窒化物(Si₃N₄)などを超高温で焼き固めて作る『無機非金属材料』の総称。つまり、フラットに言えば、金属以外の素材を焼き固めた高精度、高純度の結晶製品ということになる。

セラミックは、固く、軽く、耐熱性が高く、耐食性に優れ、そして絶縁性を持つ。とりわけ、この絶縁性が大きな意味を持つのである。

京セラの事業は、1959年、ブラウン管テレビの絶縁部品『U字ケルシマ』から始まった。その後、集積回路用多層パッケージ、太陽光発電技術など、常にセラミックを活かした最先端技術を開発してきた。

クックCEOが見ているのは、布を重ねたようなセラミックの素材。これが、iPhoneのカメラのマウント基板になるのだ。

この素材はセラミックの原材料になるものを鋳造して作られ、それを切り分けてシート状にしている。このシートに小さな穴を開けて加工し、それを十数枚重ねる。この穴を導電性材料で埋めることでここが電気回路になり、こうすることでZ方向の配線が可能なる。この行程を11回繰り返して内部に立体的な電子回路を持った基板が出来上がるいうわけだ。最後に、釜で焼結させて、切り分けると、カメラユニットをマウントする基板になる。焼結される時に15%ほど収縮するのだが、その収縮サイズを読み切って生産する。焼結した状態ではセラミックなので、通電性がなく、非常に強固。これが京セラしかできないセラミック基板の技術なのだ。

素材となる布のシートには後々回路になる超微細な穴が開いている、それを見ているクックCEO。

京セラは積層セラミックコンデンサーや、水晶デバイスも開発しており、現場にはそのパーツも展示されていた。おちょこのような小さなケースに、それぞれ1000個ずつ入っているという小さな部品だ。しかし、これもまたiPhoneのような精密な電子機器を作る際には欠かせない部品なのだ。こういう小さな部品も含めて、iPhoneには多くの日本製部品が使われていることに驚いた。

配信元: Dig-it

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