
松木玖生、北野颯太、高井幸大…U-20W杯でともに戦った仲間の刺激を受けて。選手としての価値を上げるために、山根陸が横浜FMで体現していきたい姿
横浜F・マリノスユースからトップチームに昇格して5年目。今や欠かせない主力のひとりとしてチームを支える山根陸に、今後の目標とその先に見据えるキャリアについて訊いた。(第3回/全3回)
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「やはり嬉しかったですね」
2月28日のJ1百年構想リーグ第4節、東京ヴェルディを日産スタジアムに迎えた一戦。ボランチでスタメン出場した山根は、2-0で迎えた49分にペナルティアーク付近からミドルシュートを突き刺した。
昨季の第11節、アウェー浦和戦(1-3)でJ1初ゴールを決めたが、「自分が小さい頃からずっと夢見てきた場所」での待望の初ゴール。もちろんボランチは得点を最優先に考えるポジションではないだろうが、ボランチや最終ラインもバイタルエリアに頻繁に顔を出す攻撃的なチームスタイルだからだろう。「なかなか日産スタジアムでのゴールが遠かったので、時間がかかってしまいました」とも振り返る。
攻撃面で違いを作り出すこと、得点に絡むこと、そのためにより前のゾーンでプレーできるようになること。以前に攻撃面の課題についてそう語っていた山根は、「意識的にゴール前に進入していく回数を増やしていたので、そこは成長だと感じています」と手応えを口にする。
技術力、判断力、展開力、危機察知能力……。あらゆる能力に長ける山根は、これまで中盤の底でバランサーの役割を担うことが多かったように映る。ビルドアップ時に巧みなターンで対峙する選手を剥がしたり、相手の逆を突くトラップでプレスを回避して前進するプレーを何度も目にしてきたが、最近は新たな一面を覗かせている。
チャンスと見るや、ボランチの位置からスルスルとバイタルエリアまで上がり、仮に奪われてもセカンドボールにいち早く反応できるポジションを取りながら、果敢にゴールも狙う。4節の東京V戦で奪ったゴールは、まさにその特長が表われたシーンだったと言えるだろう。
「あの(得点)シーンで言えば、もちろん一瞬のひらめきと感覚も大きかったと思います。ただ、もっと上に行くためには、個で局面を変えられるようにアップグレードしていかないといけない。駆け引きとか、相手の逆を取って剥がしたりするのは得意なので、“ここぞ”という時にそれを発揮できるかが大事だと思っていました。選手としての価値を上げることや、どれだけインパクトを与えられるかは、ここ数年で考えている部分のひとつです」
174センチ、70キロと決して大柄ではないが、フィジカル面の成長も著しい。1年目からは体重が5キロも増加。試合で相手に当たり負けすることもほとんどなくなった。
「昔は相手に当たられたら終わりだと思っていたんです(笑)。細いし、スピードもそんなにないし。だから正直、当たらないようにプレーしていたところもあって……。もちろんフィジカルトレーニングは欠かさなかったので、それを積み重ねてきた成果が今に繋がっていると思います。バチって当たった時の感覚も昔とは違う」
今季も7節終了時点で全試合に出場していることを踏まえれば、もうチームに欠かせない主力と評せるだろう。山根自身も自覚しているからこそ、自らにより厳しい目を向ける。
「これまでの4年間で、目に見える結果は少なかったと思います。もちろん数字に表われにくいところで成長している部分はたくさんありますが、選手の価値という部分でも、チームを勝たせるという部分でも、数字は大事になる。
ただ、それがなくても圧倒的に良いパフォーマンスをしたい。まだまだ学ぶことが多いですけれど、この4年間で積み重ねてきたものをこれからもピッチで体現していきたいです」
今後の目標を訊けば明確なものはないというが、「より突き抜けたい」とも強調する。
「目標ですか? うーん……。これという明確なものはないんです。ただ、さきほども言いましたが、チームを勝たせるには圧倒的にならないと。自分の今後のことなんて分からないし、僕みたいなタイプは目の前に出てきた課題を一つひとつクリアしながら、とにかく怪我をせず、心・技・体を成長させ続けていければと考えています」
今後のことは分からない――。それが本心だろう。だが一方で、松木玖生(サウサンプトン)、北野颯太(ザルツブルク)、高井幸大(ボルシアMG)ら23年にU-20ワールドカップをともに戦った仲間たちが海外にステップアップ。その現状に焦りがないわけではない。
「ワールドカップで戦ったメンバーのほとんどがヨーロッパに行っていて、自分もそこは目標にしているし、正直焦りもあります。今も彼らと連絡を取ったりして刺激をもらっています。
でも、自分は目の前のことをやるしかないし、その積み重ねがその先に繋がると信じています。早ければ早いなりのメリットがありますが、自分にはまだまだやるべきことがあるし、F・マリノスでいろんなものに勝たないといけない。そこにフォーカスしています。
一度きりのサッカー人生ですし、A代表も大きい夢のひとつです。でも、夢やタイミングを考えたらキリがないので、自分が今何をしなければならなくて、どんな環境でやるのが正しいのかというのは大事だと思っています」
地に足を付けて、着実に歩を進められるのは山根の強みと言えるだろう。
「目標はもっともっと遠いところにあるので歩みを止めるつもりもない。まだ何かを手にしたわけでもないので、ハングリーにやり続けていきたい」と語った山根が、これからどんな成長を遂げていくのか。地道にコツコツと努力を続けた先に、きっと栄光が待っているはずだ。
※このシリーズ了(全3回)
取材・文●金子徹(サッカーダイジェスト編集部)
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