
10月より上演されるミュージカル『忍たま乱太郎』第15弾 再演 走れ四年生! 戦え六年生! 〜閻魔岳を駆け抜けろ〜に出演する湯本健一。人気キャラクターの立花仙蔵を6年間も演じ続けているなど俳優としての活動が中心だが、もともとは声優を志して芸能界に飛び込んだという。声優を目指したきっかけや俳優業への想いなど、これまでを振り返りながら語ってもらった。
■アニメをきっかけに声優を目指し芸能界へ
――まずは芸能界に興味をもったきっかけについて教えてください。
小さい頃からアニメが好きで、とくに深夜帯のアニメをよく観ていました。中学生くらいの時期に声優という職業があることを認識して、声優になりたいと思っていたんです。高校を卒業して声優の専門学校へ入学して声優事務所に入ったのですが、声優のお仕事よりも舞台のお仕事と縁があって、巡り巡って今に至るという感じですね。
――声優と舞台俳優とでは少し方向性が違うような気がしますが、フィールドが違うことに戸惑いはなかったのでしょうか?
声優オーディションをたくさん受けてきましたが、声優として現場に行くことがなかなか叶わなかったんです。ただ、その状況で何もしないのはもったいないと思って舞台のオーディションも受けたところ、出演が決まって。自分ができること、自分が求められている場所を探していたら舞台にたどり着いたという感覚です。
――さまざまな作品に出演し、お芝居の経験も積み重ねてきた今、最初に目指していた声優業についてはどのように考えているのでしょう?
それこそ、ミュージカル「忍たま乱太郎」関連で、声を収録するお仕事があったんです。ヘッドホンをつけてマイク前に立ったときに、違う人生を歩んでいたら“この場所”が僕のメインの活動場所になっていたのかなとも思いました。舞台の仕事も楽しいし、やりがいを感じていますが、やっぱり今でも声優業への憧れがあるんだなと気づいたんです。だから今後も、もしチャンスがあればチャレンジしていきたいなと思っています。
――俳優業での楽しさややりがいは、どんなときに感じていますか?
小中学生の時に僕が声優さんを応援していたように、今は僕がお客様たちに応援していただく立場になったので、ファンの皆さんからのお手紙やSNS上でのコメントを見ると、やっていてよかった、生きていてよかったと感じます。原作のある作品だと、お客様一人ひとりにキャラクターのイメージがあると思いますが、僕の芝居や表現がみなさんの解釈と合っていたという感想を見聞きすると、すごくうれしくなりますね。キャラクターを預からせていただいている身なので、作品やキャラクターを愛している皆さんと同じイメージを持てているということに安心します。

■6年間演じてきた”忍ミュ”立花仙蔵への想い
――ミュージカル『忍たま乱太郎』には、6年ほどご出演されています。これまで立花仙蔵という役柄と向き合ってきた中で、想いや演じ方に変化はありましたか?
最初、仙蔵は完璧かつクールで何でもできる六年生の先輩という印象でした。でも、公演を重ねていくと、本当は完璧ではなくて、人が見ていないところでたくさんの努力をしているんだろうなと感じるようになったんです。クールなキャラクターという設定ではありますが、アニメを観ていると表情が豊かなシーンもありますし、やっぱりまだ15歳だよなと思うときもあって。だから今は“人間味のあるAB型の15歳の男の子”として向きあっていますね。
――同じ役柄を6年間も続ける、というのもなかなかないことですよね。
本当にそうだと思います。めちゃくちゃありがたいことだなと感じています。“忍ミュ”はこれまでにも代替わりをしてきた作品でもありますし、正直、そろそろ次の人のために席を空けないといけないのかな…と思うこともあるのですが、僕としてはまだまだ仙蔵をやりたいんです。わがままかもしれないけれど、できるならずっと、と思っています。それほどに僕にとって大切なキャラクターなんです。
――ミュージカル『忍たま乱太郎』第15弾 走れ四年生! 戦え六年生! 〜閻魔岳を駆け抜けろ〜の情報解禁時には、「たくさんの経験をくれた役」とのコメントもされていましたね。
立花仙蔵という役をとおして、舞台だけではなく、ライブやそれ以外のイベント、先ほども少しお話したマイク前での声撮りだったりと、“忍ミュ”に携われていなかったらできなかった経験をたくさんさせてもらっています。それがとてもありがたいなと感じていますね。
――10月には第15弾の再演もありますが、初演を踏まえてどのような公演にしたいですか?
第15弾の初演は、チケットが取れずにご来場いただけなかったお客様がたくさんいると伺いました。劇場で観るために配信をあえて観ずに、10月からの再演を楽しみにしてくださっている方もいらっしゃるのかなと思っているので、気持ちは初演というか、最初の気持ちを忘れずに大切に作り上げていきたいなと。初演を観てくださった方にも、再演で第15弾に初めて触れるお客様たちにもしっかりと楽しんでいただけるように精一杯、頑張りたいです。

■人との縁が今につながっている
――これまでの活動の中で、ターニングポイントになったと感じる出来事があれば教えてください。
間違いなく“忍ミュ”もそのひとつですが、それ以外でいうと、2015年に上演された『天満月のネコ』です。主演をやらせていただいた作品でもあったので、俳優としてたくさんのことを吸収できました。そして何よりも、この作品でご一緒させていただいた人との縁で、別の作品への出演が決まったり、アクションの勉強をするきっかけとなった人へつなげてもらったりと、いろいろな歯車が動き出すきっかけになった作品だと思っています。
――のちに広がる人とのつながりを持てた作品だったんですね。
そうですね。あとは、2016年にオトメステージVol.3「マフィアモーレ☆」という作品で、仲田博喜さんとご一緒したのもすごく大きいです。以前所属していた事務所を紹介してくれたのが仲田さんで、その在籍中に『忍たま乱太郎』への出演も決まりましたし、僕の中では恩人と呼べる方です。またいつか仲田さんと共演して、直接感謝の言葉を伝えられたらと思っています。
――ご自身に魅力があるからこそ人の縁がつながっていくのかなと思いますが、周囲からはどのような人だと言われることが多いですか?
自覚はないのですが、変な人とかと言われることが多いです。自分のことを真面目な人間だと思っているのですが(笑)。普段の仕事でも、集合時間の一時間前には付近に到着するようにしていますし。あと、“忍ミュ”で共演している鈴木祐大くんからは、「計算して面白いことはできないタイプ」と言われたことがあります。本気でやっているのに、なぜか笑いが起こる…みたいな感じですね。

■映像作品に挑む今の思いと今後の展望
――将来的なビジョンとして考えていることはありますか?
長く俳優活動を続けていくためにも、できることの幅を広げた方がいいなと思っているので、映像の現場にも挑戦したいです。そのために、今は映像のオーディションを中心に受けさせていただいています。
――Netflixシリーズ『グラスハート』にも出演していますね。
少し映り込ませていただいた程度ではありますが、現場の規模がとても大きくて、なかなかできない貴重な経験をさせていただきました。
――映像作品で挑戦してみたい作品やジャンルはありますか?
とくにこれというのはなく、何でも挑戦していきたいです。その作品の監督に求められているものを探っていき、表現できる俳優でありたいなと。愛を持って丁寧に作られている作品の中で役に向き合っていくような、そんな現場に出合いたいです。
――最後に、最近のオフの日の過ごし方やリフレッシュになっていることがあれば教えてください。
事務所のプロフィールにも書いているのですが、洗車です。運転をしていると、仕事のことも含めて頭の中の整理ができるんですよ。瞑想と近い感覚なのかな。だから、そうやって楽しんで運転をしているときに車のボディが汚れていたら恥ずかしいから、時間がある時は洗車をしていますね(笑)。

◆取材・文=榎本麻紀恵
ヘア&メーク=田中宏昌
スタイリング=北村梓(Office Shimarl)

