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「絶対に曲げるな」胸に響いたレイソル指揮官の言葉。群馬を率いる沖田優のブレない信念「今の方向性をこの先も突き詰めていく」

「絶対に曲げるな」胸に響いたレイソル指揮官の言葉。群馬を率いる沖田優のブレない信念「今の方向性をこの先も突き詰めていく」


 2025年のザスパ群馬は、前年までプレーヤーだった細貝萌氏が社長に就任。5月にはベイシアグループに入るなど、クラブ組織が大きく変貌した年だった。

 そこで新社長や佐藤正美強化部長が言い続けていたのが、「攻撃サッカーでJ2に戻り、近い将来、J1昇格を果たす」ということ。同シーズンからチームを率いることになった沖田優監督も強い野心を感じ取っていたという。

「クラブ側が考えているビジョンを達成するためにも、超攻撃的なチームにザスパを変えて、そこに到達するんだという意識は自分自身も強かったですね。

 傍から見ると、自分の戦い方を落とし込む作業はかなり難しいという印象だったかもしれないですけど、選手たちの順応スピードは非常に速かった。昨シーズンの開幕戦でもずっと攻撃していましたからね。

 宮崎キャンプ中から多少なりとも手応えはありましたけど、実際に開幕してみて『この選手たち、ホントに凄いな』と感心しました。もっと時間がかかると考えていたので、本当に驚かされたくらいでした」と、指揮官は1年前の状況を振り返る。

 しかしながら、3~5月にかけて6戦未勝利と足踏み状態に陥り、猛暑の夏場に入ると13試合勝ちなしという信じがたい苦境に直面することになった。

 クラブは細貝社長の名前で二度の声明を発表。1回目の9月時点では「あくまでJ2昇格を目ざし続ける」というスタンスだったが、10月に入ると「J3残留」に舵を切らざるを得なくなった。
 
「近年、J3からJ2に上がった他チームを見ると、堅守速攻型のチームが大半を占めていました。実際、昨季のJ3を戦っても、その傾向を色濃く感じました。最終的に優勝した栃木シティ、2位に入ったヴァンラーレ八戸、J2昇格プレーオフを制したテゲバジャーロ宮崎にしても、そういうスタイルのチーム。想定はしていましたが、J3の中で安定して結果を出し続ける厳しさを痛感しました」と、沖田監督も神妙な面持ちで言う。

 新人監督が勝てなければ、様々な苦悩が押し寄せてくるのは想像に難くない。細貝社長らが「絶対に監督は代えません」と言い続けたとしても、責任の重さをひしひしと感じたはずだし、「このまま続けていいのか」という疑問も脳裏をかすめたことだろう。

 そんな時、沖田監督の背中を押してくれた人物がいた。魅力的な攻撃サッカーで、昨季にJ1優勝争いを演じた柏レイソルのリカルド・ロドリゲス監督である。

「勝てていなかった夏場に練習試合をさせてもらったんですが、その時にかけられたのが『絶対に曲げるな』という言葉でした。『群馬は素晴らしいサッカーをしているんだから大丈夫だ』と言ってもらえて、本当に嬉しかったですね。

 僕は、大木(武)さんやミシャ(ミハイロ・ペロトロヴィッチ)さんのように優れた監督からいろんなことを学んで、自分のサッカーに活かすようにしてきました。

 昨季のリカルドさんの柏も本当に素晴らしい戦いを見せていましたし、『いつかザスパ群馬がJ1でああいうサッカーをしながら勝っていきたい』と思わせてくれるようなスタイルを実践していました。

 しかもリカルドさんは就任1年目で、あれだけガラッとサッカーの質を変化させた。そのマネジメント力にも一目置かせてもらっていました。そういう偉大な監督から前向きな言葉をいただいて、すごく力が湧いた。僕は今の方向性を、この先も突き詰めていくつもりです」と、沖田監督は語気を強めていた。

 結局、昨季は14位でフィニッシュ。最終盤に6連勝して、前向きな機運で2シーズン目の2026年を迎えることができた。

 その間、昨季の主軸だった高橋勇利也がいわきFCに移籍。代わって奈良クラブから百田真登、神垣陸、RB大宮アルディージャを満了になっていた貫真郷らが加入。昨夏にレンタル加入したモハマド・ファルザン佐名、安達秀都、中島大嘉らも残留し、分厚い戦力で百年構想リーグを戦っている。
 
 この中で心境著しい1人が中島ではないか。ご存じの通り、2月28日のブラウブリッツ秋田戦でハットトリックを達成。J2クラブを相手に今季初勝利の原動力となったのだ。

 沖田監督は札幌時代から中島を指導しており、彼の長所やマイナス面、性格的なところもよく分かっていた。そういった関係性も中島の成長にプラスに働いていると見ていいだろう。

「大嘉に限らず、他の選手に対してもアプローチはまったく変わっていなくて、僕自身はプロとして契約に至っている時点で、ものすごい個性や特長がある選手たちだとリスペクトを感じています。その良さをどうやって一緒に伸ばしていくか、試合に出て活躍できるように仕向けていくかという部分に日々、向き合っているということですね。

 昨季のスタート時の順応力に驚かされた話をしましたけど、選手たちは自分の良さや凄さに気づいていないケースもけっこう多い。『ここまで攻撃の練習ばかりしたことがなかった』『やっていてすごく楽しい』という声も耳にしましたし、未知なる能力もピッチ上に表われてくると感じたし、実際にそうなってきています。

 我々の攻撃サッカーが実践された時に、大嘉の持つ得点能力も引き出される。実際、あんなに強力なフィニッシャーはなかなかいないので、もっとできると思います」
 
 沖田監督は筑波大時代に教員免許を取得したというが、選手たちを見る目線が“学校の先生”に近いものを感じさせる。中島もこれまでのレンタル先では「難しい選手」といった見られ方をされがちだったが、沖田監督は「時間が足りない。もっと向き合えば良さを引き出せるのに」ともどかしく感じていたことだろう。そうやって親身になって一人ひとりと向き合い続けることで、群馬は個の力と総合力の両方が上がっていくはずだ。

 超攻撃サッカーを研ぎ澄ませて、上のカテゴリーに上り詰めるのは、ロマンのようにも感じられるが、そういう大仕事をプロ経験のない40代の成長途上の指揮官がやってくれれば、Jリーグも活性化されるかもしれない。

 そういう意味で、沖田監督の一挙手一投足に注目だ。ここから百年構想リーグを経て、本番の26/27シーズンで勝てる集団へと変貌できるのか。その動向を興味深く見守っていきたいものである。

※このシリーズ了(全2回)

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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