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「目が見えなくても台本は読める」全盲のナレーター・北村直也、ITの力を駆使し制作を全て一人で「一切妥協しない」プロの矜持

「目が見えなくても台本は読める」全盲のナレーター・北村直也、ITの力を駆使し制作を全て一人で「一切妥協しない」プロの矜持

生まれつき視覚に障がいがありながらも、ナレーター、声優として活躍する北村直也さん。テレビ東京のレギュラー番組を担当し、ゲームキャラクターの声優や、Netflixの音声ガイドも手がける。原稿の受け取りから録音、音声編集、納品までをすべてひとりでこなすその仕事術の核心には、「点字ディスプレイ」と呼ばれる端末がある。さらにITエンジニアとeスポーツプレイヤーという顔も持つ彼の半生と仕事への姿勢を聞いた。(前後編の前編)

「見えない」壁を技術で超える

2024年4月からテレビ東京の情報番組『クリックニッポン』のナレーターとして活躍する北村直也さんは、「全盲でナレーター・声優の仕事をする人物」として、先駆者的な存在だ。

「初めは声優になりたくて要請所に入るためにいろいろなところに電話していたんですが、そのたびに『あなた、台本読めるんですか?』みたいなところから始まるんです。『読めると思ってるから来てますよ』って内心思いながら、その都度説明をしていました(笑)。

台本を声に出して読み上げる声優の世界に視覚障がいのある方がいなかったのもあると思いますが、今は技術が発達していて、目が見えなくても台本を読めます。『点字ディスプレイ』という端末の存在をもっと周知されたらいいなと思います」(以下、「」内は北村直也さん)

『点字ディスプレイ』とは、テキストデータを点字に変換して表示できるデバイスだ。見た目は横長のキーボード型で、表面の小さなピンが上下に動くことで点字が浮かび上がる仕組みになっている。

「eスポーツ仲間からは格闘ゲームのアーケードコントローラーみたいだねって言われますし、ゲームになじみのない人には電子ピアノみたいだって言われます(笑)。

仕組みは普通のパソコンと同じです。私が使っている端末はWi-Fiを介してネットに接続することができるので、メールに添付されたWordやPDFをそのままダウンロードして、その場ですぐ点字で表示して確認できます。コピー&ペーストも削除もできるので、現場で『この部分をカットしてください』と言われたら、その場で直してすぐに読むことができるんです。現場での修正指示に即座に対応できるのは、電子機器ならではの強みだと思って重宝しています」

相棒でもある点字ディスプレイについて、そう優しい声色で語る。そんな北村さんの仕事の流れはこうだ。

クライアントから届いたデータを点字ディスプレイに読み込み、指で触れながら内容を把握して練習する。その後、自宅の防音ボックスに入って収録。ナレーションをする上で必要な秒数を知らせる音の仕込みやノイズの削除といった音声編集も自分でこなし、納品データを完成させる。

このプロセスをひとりで完結できるのは、声の仕事と並行してシステムエンジニアとしてキャリアを積んできた北村さんならではのスキルがあるからだ。

「宅録(自宅録音)ができるようになると、案件の幅は格段に広がりました。スタジオ収録だと誰かに同行してもらわないといけない可能性が高いので、それが足かせになってました。

もとはせっかく作ったボイスサンプルをネットで発信するために、宅録と音声編集スキルを習得したのですが、やっておいてよかったです。誰かに頼らずとも声優やナレーターの仕事を自分一人で完結できる。今はプロとして『一切妥協しないこと』を何より大切にしています」

ここ数年では、クライアントやマネージャーの力を借りて、スタジオで収録する案件も徐々に増え始めている。

前出の『クリックニッポン』のレギュラーナレーションのほか、『音戦宅球』というゲームアプリのキャラクターの声優、2025年配信開のNetflix作品『デスキスゲーム いいキスしないと死んじゃうドラマ』などの音声ガイドも担当した。

「自分も声でなら表現ができる」

彼が全盲でありながらも声優の道を志したのには理由がある。

北村さんは先天性小眼球という病気によって、生まれつき重度の視覚障がいがあった。20歳ごろまでは、「電気がついているのか消えているのかは分かる」「赤と黄色の違いが分かる」程度の視覚だったそうだ。

「小学校に上がる直前くらいで、『どうやら俺の見えている世界と周りの人の見えている世界は違うらしい』と感じました」

視覚障がいがありながらも中学校まで一般学級で過ごしたが、「目が見えないだけで、やっていたことは普通の子どもと一緒でした」と語る。その後、今後の大学進学を見据えて視覚障害者向けの教育を受けてみたいと思ったことから高校からは特別支援学校に進学。そんな彼の青春時代を支えたのが、クリスマスプレゼントにもらったラジオだった。

「野球中継や『オールナイトニッポン』に夢中になり、友達と学校の屋上でラジオパーソナリティごっこをしてました(笑)。架空のお便りまで作ったりして」

耳から入ってくる「声」の情報は北村さんの世界を広げる大事な要素であった。それからというもの彼は「声」の世界に魅了されていく。

自分にとって大きなターニングポイントだったと振り返ったのは、高校3年生の時。

「文化放送が運営する声優・ラジオの養成所『A&Gアカデミー』のウィンターセミナーに参加したんです。ラジオトークのコースで成績が優秀だと文化放送の特別番組に出演できるというのを聞いて、それが目当てで(笑)。

ラジオドラマコースのほかに演技コースがあったのですが、どうせなら全部まとめて受けてみようと思ってチャレンジしてみました。そしたら意外と演技のレッスンが面白かったんですよね。

当時の演技の先生が言った『人って生まれながらに表現者です』という言葉が胸に響いて、“自分も声でなら表現ができる”と思いました。それが声優を目指すようになったきっかけです」

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