
美大在学中から音楽活動をスタートしたシンガーソングライター・小林私が、彼自身の日常やアート・本のことから短編小説など、さまざまな「私事」をつづる連載企画。今回は、小林私の日常について綴ったエッセイです。
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世間はたいへんにリバイバルブームである。
このアニメまたやんの~!?とキャッキャしていたのも束の間、下手したら新しいアニメの情報の方が少ないんじゃないかとさえ思う。
少し前ならば、現代人は新しいものに飛びつく元気も金もないので昔のものに思い出補正で金を使ってもらおう、という感じもしたが、今となっては完全なブームだ。アニメやシール帳、ガシャガシャのラインナップもお茶犬とかウサハナとかそんなん。
例に漏れずこの俺も、誕生日を少し過ぎた頃に会った同級生にプレゼントと称して中古のPSPを買ってもらっている。っぱ「フロンティアゲート」だよな。
では中学生当時、今ブームになっているものを真っ正面から摂取していたかというと、別にそうでもない。お台場が日本の中心で、ヘキサゴンが教室のトークテーマで、街に出ればひたすらAKBが流れていて、当然斜に構えていた俺は「そういうのは、あんまかな」であったわけだ。本当はこそこそ羞恥心を聞いていたのにも関わらず。
俺が一番に熱心だったのは、やはり、なりきりチャットである。
なりチャとは、その名の通り、キャラクターになりきってチャットをするという、理解のない人からすれば寒気のする遊びだ。
例えば、田中太郎という大学生を設定して、掲示板に書き込む。
ふう、春から新生活か...。授業についていけるか不安だけど頑張るぞ。
(受験日よりも幾分小さく見えるキャンパスを見上げ、気合いの表れか一息つく。ほとんどため息のようなそれは、胸に去来する焦燥感と、己を奮い立たせる小さな励ましの言葉と共に口をついて出た。)
すると、こんなチャットが続けて書き込まれる。
もしかして君、新入生?良かったらウチのサークル見学してってよ!
(見上げる者は新参と相場が決まっている。そんなことを知ってか知らずか、自分より少し幼く見える男に声をかけた。春風が黒い髪を揺らして、陽光と共に煌めいた。)
こんなだ。今、大学生という設定にしたが、実際はそうではない。
実際は、リラ=ローゼという猫耳メイドと、ヴィショップ・エトランセという貴公子が会話することになる。それを再現するのは、やめようよ。
説明し忘れていたが、なりチャには大きく2つの派閥がある。
オリキャラなりチャと、版権なりチャだ。
前者は上記で触れた、自分で考えたキャラで喋るもの。後者は実在のキャラクターを借りて喋るものだ。
後者の、特に煩雑な掲示板だと、キリトとルイズとハルヒと銀さんで喋っていることもある。
俺はオリキャラなりチャ派閥だ。当時考案したキャラは100以上にもなる。
名前だけ出すと「皇燭(スメラギアカリ)」とか「春夏秋冬千鶴(ヒトトセチヅル)」とか「神無月美守(カンナヅキミカミ)」とか「みけ」とか。
それぞれの細かな設定は、勘弁してください。
こんなだ。
本当はなりチャ時代に起きた事件や初めてのオフ会の話などもしたかったが、名前を遡る辺りで汗が止まらなくなってきたのでまたの機会に...
何が怖いって、掲示板サイトがサ終するときに残ってるキャラ設定の全てをLINEのノートに残したから未だにすぐ思い出せる。
皆さん、俺の思い出はリバイバルしますか?
具体的には、
イケメン鬼と禁忌の恋をする「鬼灯-覚醒- 二藍の刻にひそむ妖」
触れると魔力が回復する主人公が美少女だらけの学園へ!?「マジカ☆マジカ」
黒魔術師のリディア・アーセナルを選ぶと試験がパス出来る「魔女っ娘ア・ラ・モード」
あと「擬人カレシ」とか。
頼むよ。

