北関東某所にある食品加工工場。ここでは毎日のように「スキマバイト」の人材が就労しており、半分近くが65歳以上なのだが、年齢を言い訳にさぼろうとする高齢者の存在が問題になっている。
「主な作業内容は検品と箱詰めです。検品は座ったままできますし、箱詰めも流れて来た商品を並べて箱に入れるだけ。決して大変な作業ではないはずなんですが、『トシだから無理』と言って仕事をしてくれない人がいるんです」(工場長)
具体的に「何が無理」なのかと言うと「目が悪いから、商品の不具合(パッケージの破損など)を見分けられない」「ずっと同じ姿勢でいると腰が痛くなる」「箱が重くて運べない」ということなのだが、作業の内容については派遣会社から事前に説明を受けているはずであり、「トシだからできない」は通用しないのでは?
「おっしゃる通りです。こちらとしても無理な作業はさせません。ですが、『こういう仕事だと分かって来てるんですよね?』と確認しても、『思っていたのと違う』とか『こんなはずじゃなかった』と言って投げ出すんです。
『仕事をしないのだったら帰って下さい』と言うと『金を稼ぎたいから帰らない』と言ってきかないし、挙句に『年寄りにもできる仕事が無い方が悪い!』と逆ギレすることもありますからね。契約上の問題もあるのでの無碍に追い返すわけにも行かないし、かと言って給料泥棒じゃ困るんです。高齢でも普通に働いてる方もいますから、一部の人だけ優遇するわけにも行かないし、頭が痛いです」(前同)
取材ついでに筆者も作業場を覗かせてもらったが、確かに一部の高齢者は台車や積み上げたパレットの上に座り込んだままだったり、外の喫煙所でずっとタバコを吸っていて、働いてる様子はなかった。
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「さぼってるんじゃない。仕事を待ってるんだ」
喫煙所にいた70代くらいの男性に「今、休憩中ですか?」と声をかけたところ「そういうわけじゃないけど、やることがないんだよ」という答えが返って来た。
「軽作業って聞いて来たんだけど、年寄りにとっては重労働ばっかりなんだよ。ここには10代とか20代のやつも来るけど、そんな若い連中と同じことできるわけないだろ? 『年寄りにもできる仕事を回せ』って言ってるのに『そんなものはない』って言われてさ。だからって『はい、そうですか』って帰れないだろ? こっちは生活かかってるんだから、意地でも契約した時間はここにいるよ。でないと金が貰えない」
「さぼってるように見えますが?」(筆者)
「さぼってるんじゃないよ。工場の人間が仕事を持ってくるのを待ってるんだよ(苦笑)」
しばらくして、この男性は段ボールつぶしの作業を任されたようだったが、他のバイトの三分の一くらいしかさばけず、さらに15分置きくらいに喫煙所に向かっていた。そして契約の4時間が終わると、さっさと退勤。実働は1時間ほどだったようだ。
これでは工場長が頭を抱えるのも無理はない。派遣会社にこの実状を報告して説明を求めたのだが「現場のことは雇用側の采配に任せています」ということだった。
取材・文/清水芽々
清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。
