
欧米進出を目指し、ハリウッドで製作された『ウルトラマンパワード』Blu-ray BOX(バンダイビジュアル)。主人公はケイン・コスギが演じた
【画像】一方、これが中国で「大ウケ」して盛り上がっている「ウルトラマン」作品です(4枚)
円谷社長が自ら語った「原因分析」
『ウルトラマン』が放送60周年を迎え、今なおシリーズが続いている喜びをかみしめているファンも多いのではないでしょうか。日本の特撮作品の人気が世界中で高まる今、その魅力を少しでも多くの人に知ってほしいと願うのが、ファンの心です。
裏を返せば、こういう見方もできます。他の特撮シリーズと比べ、「ウルトラマン」シリーズは、アメリカをはじめとする海外市場で、やや支持が低いのではないのか……と。
なるほど「ゴジラ」は、何度もハリウッドで映画化され、大ヒットを記録しています。また「戦隊シリーズ」も1993年以降、『パワーレンジャー』シリーズとしてフランチャイズ化し、定着しています。一方、「ウルトラマン」はどうだったでしょうか。
結論から言えば、少なくとも円谷プロの経営陣からすれば、「ウルトラマン」の海外(アメリカ)進出は一度「失敗」に終わったといえます。このことは円谷プロの6代目社長、円谷英明氏の著書『ウルトラマンが泣いている』(講談社現代新書)に詳しいです。
「ウルトラマン」の海外進出は、過去に何度か行われてきました。例えば1990年にオーストラリアで制作された『ウルトラマンG』は、現地でもテレビ放送され評判も上々ではありましたが、欧米市場の売り込みに苦戦してしまいます。
それでも、円谷は海外進出を諦めません。1993年にはハリウッドと提携し『ウルトラマンパワード』を制作します。『パワード』は日本でテレビ放送され、ビデオも発売。のちの「平成ウルトラマン」への起爆剤となりました。
しかし、せっかくのハリウッド制作だというのに、アメリカではほとんど見向きもされませんでした。次回シリーズも準備していましたが、それも白紙に終わります。どうして、アメリカで「ウルトラマン」は受け入れられなかったのでしょうか。その理由を、円谷英明氏は次のように分析しています。
“アメリカでは、より現実味のある等身大ヒーローが主流でした。(中略)キングコングなどの巨大怪獣は存在しても、それと戦うヒーローが巨大化することはありません。”
「スパイダーマン」「バットマン」などのヒーローが長年愛され続けてきたアメリカの文化土壌において、「巨大ヒーロー」というジャンル自体がうまく馴染まなかったのは、無理からぬことでしょう。この点において「戦隊」と「ゴジラ」が受け入れられたことも、納得できます。
「設定」に対する考え方が違っていた?
加えて円谷英明氏は、次のようにも指摘しています。
“(アメリカでは)ヒーローが持ってる超能力も、ある程度、科学的に説明のつくようにしています。”
これは「程度の問題」かもしれませんが、確かに「ウルトラマン」シリーズにおける「一心同体」および「巨大化」の設定などは、等身大ヒーローに慣れ親しんだ人びとからすれば、説明不足に感じてしまったのかもしれません。
それでは「ウルトラマン」シリーズの人気は、日本国内に留まったままなのでしょうか。それも、違います。過去の進出の失敗は、あくまでも「欧米」の話にすぎません。
近隣のアジア圏では今、ウルトラマンの人気がどんどん高まっています。マレーシアでは『ウルトラマンリブット』というオリジナルの「ウルトラマン」が制作されるほどです。これは私見ですが、「巨像文化」のある国なら、巨大ヒーローはすんなり受け入れられるのかもしれません。
いずれにせよ、ウルトラマンは無理に進出させずとも、自ら飛び立ち、それぞれの国で「我らのウルトラマン」となってくれたら……そう願わずにはいられません。
