
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え、「こんな絵上手かったの?」「可愛いけど怖い」 コチラが小泉八雲本人が描いた『怪談』の「ろくろ首」「雪女」です
実際に和訳したのは、もはや懐かしい「元生徒」
連続テレビ小説『ばけばけ』第25週121話では、主人公「雨清水トキ(演:高石あかり)」と夫「雨清水八雲(レフカダ・ヘブン/演:トミー・バストウ)」がふたりで作り上げた著書『怪談』が、東京の屋敷に届きました。そして同話では、英語が読めないトキのために、かつてのヘブンのリテラリーアシスタントだった錦織友一(演:吉沢亮)」の弟「丈(演:杉田雷麟)」が、『怪談』の和訳版を持ってやってきています。
丈の格好は亡き錦織をほうふつとさせる洋装で、彼の翻訳のおかげでついにトキがヘブンの著作を読むことができるという展開には
「丈が日本語訳してくれたの!?兄に続きすっかりリテラリーアシスタントに…!」
「生涯リテラリーアシスタントであった錦織友一が、かつてヘブンさんをカクノヒトとして再生させ、そしてもう一人のシジミリー…じゃないリテラリーアシスタントであるトキの尽力でKWAIDANができた。それをトキが読めるようにトキに返してくれるのが錦織丈というこの美しい循環」
「トキちゃんは英語が読めないけど、彼女にとっては今迄で一番『書いてある内容が分かる本』だから、それで良いのかな…と思ってたら、丈君に頼んで和訳して貰ってたとは、心配りが憎いぜ八雲氏」
「今朝は丈さんの横顔が錦織(友一)さんに見えて来てウルッときました」
といった感動の声が相次いでいます。
錦織友一のモデル・西田千太郎は1897年3月に亡くなり、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の代表作『怪談』(1904年4月出版)を読むことは叶いませんでした。西田の弟・精は兄が家庭の事情で行けなかった東京帝国大学工科大学土木工学科を卒業し、後に東京帝国大学助教授、九州帝国大学教授を歴任した秀才で、さらに上下水道の専門家として、故郷・松江を含む全国の水道事業の発展に貢献しています。
精は兄に負けない優秀な人物で、おそらく英語もできたと思われますが、『怪談』ほかハーンの著作を最初に和訳したのは彼ではありません。松江に拠点を置く顕彰・研究団体「八雲会」の公式Xは、121話の放送後、
「小泉セツ存命中の大正15(1926)年から昭和3(1928)年にかけて、ハーン(小泉八雲)初の邦訳全集『小泉八雲全集』全18巻が刊行されました。翻訳には田部隆次、大谷正信、落合貞三郎らハーンの教え子たちや、ハーンの次男・稲垣巌も携わりました」
と、史実の情報をポストしました。
トキのモデル・小泉セツ(1932年2月没)は、亡くなる前に夫・ハーン(1904年9月没)の著作の日本語版を見ることができたようですが、『ばけばけ』とは時期も翻訳の体制も違います。
訳者のひとり・大谷正信は、かつてトキにアプローチした松江中学のヘブンの教え子「小谷春夫(演:下川恭平)」のモデルです。彼は東京帝国大学の英文学科に進学してハーンと再会し、恩師の著作の資料集めにも協力していました。また、「勲(演:柊エタニエル)」のモデルである稲垣巌(4歳の時にセツの養家・稲垣家の籍に入る)は、京都帝国大学の英文科を卒業し、父と同じ英語教師になっています。
『ばけばけ』では、ヘブンが生きているうちにトキが彼の書いた本を読み、さらに丈が亡き錦織の遺志を継いだように見せるために、現状のような展開になったのでしょう。20年以上経ってから、小谷や大人になった勲が、協力してヘブンの本を和訳するという展開も見てみたかった気がしますが、残り話数を考えても丈が翻訳をするという展開が合っていたと思われます。
※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)
