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ダンゴムシは食べた鉱物を分子レベルで作り変えて装甲にしていた

ダンゴムシは食べた鉱物を分子レベルで作り変えて装甲にしていた

ダンゴムシは食べた鉱物を分子レベルで作り変えて装甲にしていた
ダンゴムシは食べた鉱物を分子レベルで作り変えて装甲にしていた / Credit:Canva

誰でも一度はダンゴムシを見たことがあるでしょう。

小さな鎧のような殻をまとい、危険が迫るとくるっと丸くなって身を守ります。

ダンゴムシを飼ったことがある人なら、「虫かごに石を入れておくといいよ」と聞いたことがあるかもしれません。

ダンゴムシは石が大好きであり、隙間を住処にするだけでなく、石をかじったりなめたりする習性が知られているからです。

しかし今回、筑波大学(UT)の研究チームが最近発表した研究によると、ダンゴムシは口から取り込んだ石をただそのまま使うのではなく、体内ではとりこんだ結晶の鉱物構造を作り替えて、別の結晶相へ導いていることが示されました。

この結晶構造の変化は、結果として分子レベルの並び方が別のものへ変わっていることを示しています。

ダンゴムシはいったいどんな方法で、分子レベルの制御を行っているのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年3月10日に『Journal of Structural Biology』にて発表されました。

目次

  • ダンゴムシは食べた鉱石をどうしているのか?
  • ダンゴムシは食べた鉱石を作り変えて鎧にする
  • ダンゴムシは鉱石の結晶構造をどうやって変えているのか?

ダンゴムシは食べた鉱石をどうしているのか?

ダンゴムシは食べた鉱石をどうしているのか?
ダンゴムシは食べた鉱石をどうしているのか? / 自然環境を模した対照群(Nat Av)、石英群(Qz-fed Av)、カルサイト群(Cal-fed Av)、アラゴナイト群(Arg-fed Av)つまり、コントロールと3種類の鉱石を与えた4条件で試しました。

ダンゴムシの背中は、黒っぽくて硬そうです。

触ると確かに硬いですが、よく観察すると、実は意外にしなやかでもあります。

もし子供の頃にダンゴムシと戯れた経験があるなら、実感がある人もいるかもしれません。

その秘密は、殻の内部に隠れていました。

これまでの研究で、ダンゴムシの殻は4つの層に分かれていることが知られていました。

外側はカルサイトという硬くて安定した炭酸カルシウムの結晶が多く、一方、内側にはアモルファス炭酸カルシウムという「まだ結晶になりきっていない、ふわっとした構造の炭酸カルシウム」がたくさん含まれています。

こうしたアモルファス炭酸カルシウムは、結晶よりも少ししなやかで柔軟性があり、殻を単に硬くするだけでなく、衝撃を吸収して割れにくくするという重要な役割があると考えられていました。

硬い外側が「鎧」だとしたら、内側は衝撃を吸収する「クッション材」のようなものです。

問題はそこから先です。

ダンゴムシが鉱物をそのまま殻に流用しているのか、それとも体の中でいったん“ダンゴムシ仕様”に組み替えているのかは、まだはっきりしていませんでした。

そしてこの違いは、じつはかなり重要です。

もし後者なら、ダンゴムシの殻は単なる外骨格ではなく、生き物が鉱物を巧みに加工して作る高度な材料だということになります。

そして生き物が鉱物をどう取り込み、どう加工して、どう使いこなしているのかという、生体鉱物化の本質に触れる問いでもあります。

SFでは惑星や小惑星の鉱物を体内に取り込み自らの装甲に加工する生物兵器のような存在が描かれることもありますが、地球産ダンゴムシを調べることで、フィクションではない、鉱物摂食によるリアルな自己装甲化のメカニズムが見えてくるかもしれません。

ダンゴムシは食べた鉱石を作り変えて鎧にする

ダンゴムシは食べた鉱石を作り変えて鎧にする
ダンゴムシは食べた鉱石を作り変えて鎧にする / アラゴナイトを食べていたはずのダンゴムシでも、完成した殻ではアラゴナイトはでは検出されず、別の分子配列を持つカルサイトが検出されました。/Credit:ダンゴムシは食べた鉱物の構造を体内で作り変えて外骨格にしていた

研究チームはまず、ダンゴムシに3種類の“石”を食べさせました。

ひとつはカルサイト、もうひとつはアラゴナイト、そして最後は石英です。

・カルサイトは、炭酸カルシウムからできた鉱物で、石灰岩や大理石の主成分としてよく知られています。

・アラゴナイトも、炭酸カルシウムからできた鉱物ですが中の原子の並び方がカルサイトとは違っていて、貝殻やサンゴ、真珠などにも見られる、いわば別バージョンの炭酸カルシウムです。

・石英は、炭酸カルシウムではなく、二酸化ケイ素からできた鉱物です。

砂や岩石の中にごく普通に含まれる、とてもありふれた鉱物ですが、ダンゴムシの殻づくりに必要なカルシウムは含んでいません。

つまり「材料の種類だけを変えて、それ以外は同じ条件」で育てたわけです。

そして約60日後、ダンゴムシの背中の殻を取り出し、顕微鏡で形を観察し、さらに光やX線を使って「中にどんな鉱物ができているのか」を詳しく調べました。

まず結果の第一段階として見えてきたのは、「石の種類で殻の育ち方が変わる」という事実でした。

石英を食べさせたダンゴムシは、殻があまり厚くならず、全体的に頼りない構造のままでした。

一方で、カルサイトやアラゴナイトを食べたダンゴムシは、外側も内側もきちんと発達した、しっかりした層構造の殻を作っていました。

ここでまず重要なのは、ダンゴムシは「石なら何でもいい」わけではないという点です。

体を作るためには、やはり炭酸カルシウムという材料が必要で、石英のような別の鉱物では代用できませんでした。

つまりダンゴムシの殻づくりには、使える鉱物と使えない鉱物がある、ということです。

しかし本当に驚くべきなのは、ここから先です。

放射光X線回折という方法で、最終的に殻の中にある結晶を調べたところ、検出されたのはすべてカルサイトでした。

アラゴナイトを食べていたはずのダンゴムシでも、完成した殻ではアラゴナイトはでは検出されませんでした(X線回折での調査)。

つまりダンゴムシは、外から入ってきた鉱物の「型」に従っているのではなく、体内でいったん別の中間状態を経て、最終的にカルサイトへ導いていることが示されました。

しかし、分子レベルの並び方の違いを、ダンゴムシはどうやって制御しているのでしょうか?

あの小さな丸い体のどこに、分子制御機構が隠されていたのでしょうか?

配信元: ナゾロジー

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