「泥臭く、勝てるサッカー」をもたらした知将の"眼"
なでしこ史上初の外国人監督・ニールセンは、UEFA欧州女子選手権2017でデンマーク女子代表を準優勝に導いた実績を持つ。2024年12月に就任するや、就任翌年2025年2月にはシービリーブスカップでFIFAランク2位のアメリカ女子代表を2-1で撃破。「勝てる集団」への変貌を世界に印象付けた。
ニールセンが日本にもたらしたのは、欧州基準の「勝負への冷徹さ」だ。かつてのなでしこは、ボールを保持しながらもゴール前で跳ね返されるシーンが目立った。
しかしニールセンは「持たされる時間」を許容しながら一瞬の隙を突くカウンターと、局面での個の打開力を徹底させた。7万人の完全アウェーという極限状況で見せた安定した守備ブロックは、まさにその真骨頂。「綺麗なサッカー」から「泥臭く勝てるサッカー」への脱皮こそが、アジア制覇の根底にある。
試合後、監督は静かに、しかし確信を持って語った。「今日はベストな内容ではなかった。それでも選手たちのキャラクター、最後まで信じて戦う姿勢が、重要な局面でチームを10〜20%強くしてくれた。そこがとても気に入っている点だ」。
「2人部屋から1人部屋へ」宮本会長が断行した"聖域なき投資"
ピッチ外でこの優勝を下支えしたのが、日本サッカー協会・宮本恒靖会長による「環境改革」だ。遠征時の宿泊を2人部屋から1人部屋に変更。飛行機移動をビジネスクラスに格上げし、専属トレーナーを2人から3人体制へと増強。男子代表と遜色ないレベルへの大胆な待遇引き上げである。
「選手が求め、協会側が応えてくれている。であれば結果を出すことが一番の責任だと思う」とキャプテンの熊谷紗希。2011年W杯優勝メンバーの33歳は続けた。「2011年とは比べ物にならないくらい環境や待遇が良くなっている。あとは選手がそれに応えなければいけない。タイトルという形で責任を果たしたい」。完全アウェーの大舞台で、その宣言通りの結果を出してみせた。
