
1980年代のアニメ『キャッツ・アイ』のオリジナル・サウンド・トラック(徳間ジャパン)
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エアロビ、シャワー、エクスタシー…インパクト大だった旧作アニメ
『キャッツ・アイ』の完全新作アニメが、ディズニープラス「スター」にて、2025年9月26日から配信開始されました。北条司先生のマンガ『キャッツ・アイ』は、1983年に初めてアニメ化されています。杏里さんが歌う主題歌「CAT’S EYE」が大ヒットしたことを憶えている方も多いでしょう(新作ではadoさんがカバーしています)。その後、1984年に第2期が放送されました。
80年代の『キャッツ・アイ』の印象は「セクシー」という一語に尽きます。「来生瞳」がレオタード姿で登場するオープニングは、瞳の優美な肢体とともに憂いを帯びた表情などを見せており、大人っぽい雰囲気が打ち出されていました。瞳と「来生泪」「来生愛」の三姉妹が登場し、当時流行していたエアロビクスダンスを大胆に取り入れたエンディングも、お茶の間でテレビを見ていた子どもたちをドギマギさせるには十分なものでした。
オープニング、エンディングの演出だけでなく、キャッツ・アイの3人がレオタード姿で盗みを行う場面も刺激的でした。さらに第3話、第6話、第21話ではシャワーシーン、第25話では三姉妹の入浴シーンも描かれています。
第2期のオープニングはさらにアダルトな路線で、レオタード姿の瞳がうつ伏せのままカメラを振り返って親指をくわえるカットがあるなど、イメージビデオのような仕上がりになっています。シルエットや後ろ姿で全裸も描かれていましたが、何よりエクスタシーを感じているような瞳のイメージカットには驚かされました。エンディングのエアロビクスダンスは、実際にダンサーが踊った映像をトレースしているそうです。
「お色気」が含まれているアニメは、『キャッツ・アイ』以前にもたくさんありました。73年の『キューティハニー』は「如月ハニー」が露出度の高いコスチュームを引き裂かれるシーンがありましたし、81年の『まいっちんぐマチコ先生』でも「麻衣マチコ」が何度もトップレスになります。しかし、『キャッツ・アイ』のセクシーさは明らかに「一段上」と感じられる表現でした。いったいなぜでしょうか。
「一段上」の色気が表現できた背景
まずは作画の進歩が大きかったと考えられます。77年の劇場版『宇宙戦艦ヤマト』、79年の『機動戦士ガンダム』以来、空前のアニメブームが巻き起こり、作画の技術は格段に進歩しました。80年代に入ると、『超時空要塞マクロス』をはじめ、1970年代の「テレビまんが」とは明らかに違う、より美しく高密度で、リアルな作画のアニメが見られるようになりました。『キャッツ・アイ』はその流れのなかにあります。
瞳、泪、愛は、まるで映画やドラマに出演する女優のように美しく描かれていました。北条先生によって作り出された魅力的なキャラクターに、アニメ映像が優美さ、艶やかさ、実在感を加えています。他のアニメの女性キャラクターより年齢が少し上だったので、子どもの視聴者からは「憧れのお姉さん」に見えたでしょう。そんな素敵な女性たちが、露出度の高いレオタード姿で華麗なアクションやエアロビクスダンスを披露するのですから、セクシーさが際立つのが当然です。
翻って新作の『キャッツ・アイ』はどうでしょうか。第1話の時点では、それほどセクシーさは感じられません。三姉妹は美しく描かれていますが、現代のアニメ作画の中では標準的です。コスチュームは原作者の北条司先生の当初の構想通り、レオタードではなく「ボディスーツ」という解釈になっています。本編でも、ことさらセクシーさを強調した演出は行われていません。泪が胸の谷間を露出して古典的な色仕掛けを使うシーンが、ちょっと浮いているように見えました。エンディングは「手」に焦点を当てたアニメで、セクシーさとは無縁です。
新作の『キャッツ・アイ』は80年代の『キャッツ・アイ』に登場しなかった「平野」や「武内」が登場するなど、より原作に寄せているように感じます。第2話以降はセクシーさよりも原作のドラマ性を重視して物語が進むのではないでしょうか。今後の展開に注目したいと思います。
