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「失い続けても歩みを止めない」片足のアラフィフ作家が贈る「異色ダンジョン小説」とは?【作者インタビュー】

「失い続けても歩みを止めない」片足のアラフィフ作家が贈る「異色ダンジョン小説」とは?【作者インタビュー】


鋼我先生による小説『汝、現代ダンジョンに希望を持つべからず』表紙(KADOKAWA) (C)Koga 2026 イラスト:みやま零

【画像】美男美女と…凡人(?) これが「現代ダンジョン」に対処する登場人物たちです(5枚)

突然「今日から書きませんか?」と言われて…?

『汝、現代ダンジョンに希望を持つべからず』という作品をご存じでしょうか。購入した中古一軒家の庭にダンジョンがあったために、国により管理を任された主人公が悪戦苦闘する物語です。小説投稿サイト「カクヨム」で連載され、現在はコミカライズと書籍化が同時進行している期待作です。

 作者である鋼我先生は現在40代半ばで、会社員を続けながら創作活動を続けています。現実世界に現れた「ダンジョン」を舞台に、特殊な能力を何ひとつ持たない主人公の地道な「成り上がり」物語が誕生するまでの秘話と、作者自身に起こった「物語」について聞きました。

※同作を出版するKADOKAWA「MF文庫」編集担当の方にも同席いただきました。

* * *

――『汝、現代ダンジョンに希望を持つべからず』(以下、なんダン)とはどんな作品なのでしょうか?

鋼我さん(以下、敬称略) 主人公たちが現在世界に現れたダンジョンを探索し、酷い目にあう物語です(笑)。現代ダンジョンの探索作品は基本的にサクセスの物語で、カジュアルに成り上がっていくことが多いんです。最初少し苦労するくらいであとはどんどん成功していくパターンは自分も好きなんですが、今ではもう目新しくありません。

 似た作品がたくさんあるなかで同じものを出しても読んでもらえないじゃないですか。自分にはあまり時間がなかったので……。

――時間がない、とはどういうことでしょうか?

鋼我 いま40歳半ばなので、チャンスは残り少ないと感じていました。渋滞した道を行くよりも、空いている道を探したほうがいいと考え、主人公に次々と苦労が押し寄せてくる話に舵を切ったんです。異能に目覚めても簡単に勝てる世界ではなく、さらに苦労するという描写に力を入れています。

 あくまで自分にとってですが、苦労させた方が物語の起伏を作るときにすごく楽なんですね。主人公が完璧じゃない、あまり強くない。もっと言ってしまえば欠点がある。そこで物語に起伏ができて、成長の要素も生まれてくると思うんです。失敗したらマイナスも発生しますが、挽回する物語を書くことができます。なので自分の作品の場合、主人公は大抵ひどい目にあうのです(笑)

――書籍化の話があった時は、どのようなお気持ちでした?

鋼我 2025年4月にwebでの連載をスタートしたんですが、第1章が終わる前に別の会社さんからコミカライズしないかというお話があって、その次に今回の書籍化のお話が来ました。

――先にコミカライズのお話が動いていたんですか!

KADOKAWA編集担当 文字通り先を越されました(笑)

――注目されている作品だとそういうことがあるんですね。ところで『なんダン』は、もともとアスキーアート(コンピュータの文字や記号を組み合わせて絵やセリフを描く表現手法)の作品でした。なぜ鋼我先生はアスキーアートで作品を発表していたのでしょうか?

鋼我 アスキーアートを始めたきっかけは覚えていませんが、絵をペタっと貼ってセリフを入れればマンガの1コマを作れて、少し続ければ簡易的な作品ができるので、物語を作りやすいなと感じていました。それに掲示板というシステムのなかでやるので、読者からすぐに反応が来るんです。

 反応してもらえるってことは「面白い」と思ってもらってるということなので、モチベーションが発生するんですよ。それで続けていくことができました。

――そこから小説に切り替えたきっかけはなんなんでしょうか?

鋼我 実は、ある専門学校のノベルス科に通っていたことがあるんです。でも小説は全然書いていなかったんですね。そんなある日、ゲーム仲間の作家さんに突然「今日から書きませんか?」と言われたんです。

 その時、「今ここで書かないって言ったら、俺は一生書かないだろうな」と直感しました。その勢いで以前書籍化されたデビュー作『決戦世界のダンジョンマスター』の冒頭部分を書き上げたんです。世界観も一切考えず、主人公がヒイヒイ言いながらゴブリンと戦うシーンだけをまず書いて、そこから続けて書き進めていきました。あのときかけてもらった言葉と、自分のなかの焦燥感から、小説を書くようになったんですね。

 そこから1日3000文字を書いては、友人たちに見てもらってレスポンスをもらう日々が続きました。そのおかげで書き切ることができたんです。

右脚を失った「突然の事故」 乗り越えた「現実逃避能力」とは?

――良い友人を持てるのも、アスキーアートで作品を作り続けてきたからなんでしょうね。ところで、鋼我先生はいま作家以外にも仕事をされているのでしょうか?

鋼我 若い頃はバイトをしながら作家になろうとしていたんですが、全然書かないうちに20代半ばを迎えてしまい、就職することになったんです。でもそんなある日、出勤途中にバイク事故を起こして右脚を切断する羽目になりました。今は義足なんですよ。

――凄まじい事故だったんですね……。

鋼我 バイクのエンジンをかけて家から出た次の瞬間から、記憶が途切れてます。目覚めてから意識がぐにゃぐにゃしてるし、痛みも出てきて、そこで自分が事故にあったことに気付きました。そこからは障がい者雇用枠で地元企業にパートで入っている状態です。

――そのような状況から、どうやって立ち直ったんでしょうか。

鋼我 周りの人が滅茶苦茶へこんでいたんですよ。親は泣いてる、自分に車をぶつけた人も泣いてる、友人も落ち込んでる。こんな状況で自分がへこんだ顔を見せたら、死んじゃう人が出るかもしれないってレベルでした。それなら明るくなるしかないじゃないですか。落ち込んでても自分にプラスになることが何もないんです。

 障がい者雇用で仕事もできるし、保険も出るし労災も出る。右脚は無くしましたけど義足を付ければ歩けるし、別にマイナスだとは感じませんでした。へこんだのは自転車に乗れなくなったことくらいかな?

――うまい言葉が出てきませんが、とにかく精神的にタフだとは感じます。

鋼我 創作に使う現実逃避能力を、自分に当てはめただけのような気がしますけどね(笑)。


主人公・春夫(中央)と、ともにダンジョン管理業務に携わる御影兄妹 (C)Koga 2026 イラスト:みやま零

配信元: マグミクス

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