「ワークマン」から出た3300円(税込)のローファーが、発売と同時に店頭から消えた。3月20日に全国のワークマンカラーズで並んだ「ハイバウンス バラストローファー」は、1店舗あたりの入荷が15足前後。開店直後に完売する店舗が続出し、フリマアプリでは定価の数倍で転売される事態になっている。秋頃の増産が予定されているが、それまでは手に入らない。
3300円のローファーに、なぜここまで人が殺到するのか。この靴、見た目はローファーだが、実は中身は完全にスニーカーなのだ。最近ではこうした靴を「スニーファー」と呼ぶらしい。
踵にはワークマン独自開発の高反発素材「バウンステックエコ」、アウトソールには横ブレを抑えるスタビライザー。踵を包み込むカップインソールに、靴擦れ防止の緩衝材まで入っている。合成皮革のアッパーはマットな質感で、ビジネスカジュアルに合わせても浮かない。革靴の形をした別の履き物である。
ただ、売れた理由は靴の出来だけではなかった。サラリーマンの足元で進んできた「革靴離れ」があるからだ。
オフィスのカジュアル化が加速し、スーツに革靴という組み合わせが絶対ではなくなった。「疲れる」「雨に弱い」「オフィスでは楽に過ごしたい」。こうした声はもはや少数派ではない。
では革靴は終わったのかといえば、話はそう単純でもない。むしろ今起きているのは、革靴が進化して別の存在になりつつあるという動きだ。
「洋服の青山」が展開する「スリッポンコインローファー 2WAY」(税込8789円)がわかりやすい。踵を踏み潰せばスリッパになり、起こせばそのまま外を歩ける。価格はワークマンの倍以上だが、それでも1万円でお釣りがくる。「履く靴」と「脱ぐ靴」の境界を壊すという発想は、同じ方向を向いているのだ。
ワークマンも洋服の青山も、求められていることは同じだ。我慢して履くものではなく、楽で場面を選ばない靴。3300円の多機能ローファーが一瞬で消えたのは、当然の流れかもしれない。
売れすぎたことへの不満はもちろん、出ている。発売翌日に店舗へ足を運んだがすでに棚は空だった、という報告がSNSに相次いでおり、転売対策として最初からもっと入荷数を増やしてほしかった、という声は少なくない。秋の増産でどこまでいき渡るか。まずはそこが、次の焦点になりそうだ。
(ケン高田)

