
春先になると、くしゃみや鼻水に悩まされる人は非常に多いです。
日本では国民の約半数が花粉症などのアレルギー性鼻炎を抱えているとも言われています。
そんな中、「ある飲み物」を飲むことで、くしゃみそのものを抑えられる可能性が示されました。
この研究を行ったのは、東京大学大学院 農学生命科学研究科のチームです。
チームによると、アレルギー性鼻炎のくしゃみを抑える効果を持つ飲み物は「抹茶」でした。
研究の詳細は2026年3月5日付で科学雑誌『npj Science of Food』に掲載されました。
目次
- 抹茶は「免疫」ではなく「症状」に作用していた
- くしゃみを起こす「脳のスイッチ」を弱めていた
抹茶は「免疫」ではなく「症状」に作用していた
代表的なアレルギー性鼻炎である「花粉症」の仕組みは、一般的に次のように理解されています。
体内に入った花粉を免疫系が異物として認識し、IgE抗体という「センサー」が反応します。
その信号を受け取ったマスト細胞(免疫細胞)がヒスタミンを放出し、くしゃみや鼻水といった症状が引き起こされるのです。
多くの治療法は、この免疫反応を抑えることを目的としています。
しかし今回の研究では、少し異なる結果が得られました。

研究チームはマウスのアレルギー性鼻炎モデルを用い、抹茶を摂取させたうえでアレルギー反応を誘発しました。
その結果、くしゃみの回数は明らかに減少したのです。
ところが詳しく調べてみると、IgE抗体の量やマスト細胞の働き、T細胞の反応にはほとんど変化がありませんでした。
さらに腸内細菌の構成も大きくは変わっていませんでした。
つまり、抹茶はアレルギーの「原因」となる免疫反応にはほぼ影響を与えていなかったのです。
では、なぜくしゃみが減ったのでしょうか?
くしゃみを起こす「脳のスイッチ」を弱めていた
チームは視点を変え、くしゃみを引き起こす神経の働きに注目しました。
くしゃみは単なる反射ではなく、鼻からの刺激が脳に伝わり、神経回路を通じて発動する反応です。
実験では、ヒスタミン(くしゃみを誘発する物質)を投与した際の脳内の神経活動を調べました。
その結果、通常であれば活性化する「くしゃみ反射に関わる神経回路」の活動が、抹茶を摂取したマウスでは弱まっていたのです。
具体的には、神経の活動指標である「c-Fos」というタンパク質の発現が低下しており、くしゃみを引き起こす中枢の興奮が抑えられていることが示されました。
つまり抹茶は、アレルギー反応そのものを止めるのではなく、くしゃみを引き起こす「脳のスイッチ」を弱めることで症状を軽減していた可能性があります。
花粉症対策は「神経」からも考えられる時代へ
今回の研究は、花粉症の見方に新しい視点を与えるものです。
これまでアレルギー性鼻炎は「免疫の問題」として語られることがほとんどでしたが、実際にはその先にある「神経の反応」も重要な役割を担っていることが示されました。
抹茶のような身近な食品が、この神経の働きに影響を与える可能性があるという点も興味深いところです。
もっとも、この研究はマウスで行われたものであり、人間でも同じ効果が得られるかは今後の検証が必要です。
また、日常的に飲む量で十分な効果が出るかも明らかになっていません。
それでも、花粉症対策が「免疫を抑える」だけでなく、「症状の出方をコントロールする」という方向にも広がる可能性を示した点で、この研究の意義は大きいと言えるでしょう。
参考文献
抹茶で花粉症も一服⁉ ―抹茶を飲むことでくしゃみを抑えられる可能性―
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20260323-1.html
元論文
Matcha alleviates sneezing response in a murine model of allergic rhinitis
https://doi.org/10.1038/s41538-026-00777-9
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

