
『いずれ群馬に戻りたい』紆余曲折を乗り越えてザスパに。中学生と向き合うシュナイダー潤之介の充実感「毎日、情熱を示してくれる」
2026年2月に前橋育英高校の山田耕介監督をGMとして招聘し、元日本代表FW永井雄一郎をアカデミーダイレクター兼U-18監督(2月下旬からはクラブアンバサダーも兼任)に抜擢するなど、アカデミー強化に余念がないザスパ群馬。U-15に関しても、シュナイダー潤之介を監督兼GKコーチに据え、新たなスタートを切ったところだ。
彼は三菱養和時代に1つ年下の永井とともにプレー。明星大学を卒業後、2000年に群馬FCフォルトナ(のちのアルテ高崎=2011年に解散)入り。そこからサガン鳥栖、ベガルタ仙台、ガイナーレ鳥取、横浜FC、奈良クラブを渡り歩き、2015年末に最初の現役引退に踏み切った。
翌2016年からはザスパ(当時はザスパクサツ群馬)のGKコーチに就任。4シーズンにわたり指導にあたったが、その間にはJ3降格もJ2昇格も経験。布啓一郎監督が率いた2019年にJ3で2位になった時のことは良い思い出だという。
その後は栃木シティへ。2020年に現役復帰し、選手兼GKコーチとして活動。公式戦出場こそなかったものの、スタジアムに隣接する日帰り温泉とスポーツジムのボイラー担当としても働きながら、21年までプレーヤーとしても走り切った様子だ。
これを機に完全に指導者業へ舵を切り、松本山雅FC、AC長野パルセイロのGKコーチを歴任。だが、長野にいた2024年に前立腺がんを患っていることが発覚。ステージ4と公表し、治療に専念。25年末には現場復帰のメドが立ち、長野を離れて再び群馬に戻ってくることになった。
「パルセイロは『1年限定の契約』だったので、その時期はまだ療養中で、体調を見ながら募金活動をしてくれたチームにお礼行脚をしていたんですが、群馬にも来る機会があり、前回在籍時の社長だった奈良知彦先生(育英大学教授)に挨拶に出向きました。そこで自分が現場復帰を望んでいることを伝えたのがきっかけになって今回、正式なオファーをいただくことができました。
前回はトップチームのGKコーチで、今回はU-15ですけど、『いずれ群馬に戻りたい』という気持ちが強かったので、カテゴリーは関係ありませんでした。実際、育成年代の指導にも携わってみたいという思いもありましたから。
病気の方も今は動けるようになったんですが、手術をしたわけではないので、骨の痛みがあったりします。でも、できる範囲で治療とケアをしながらピッチに立っている状況です」と、シュナイダーは様々な紆余曲折を乗り越えて、今の環境に赴いたことを明かす。
中学生と向き合う生活は人生初。実際に始まってみると、彼らのサッカーに対する情熱と向上心が伝わってきて、想像以上の楽しさを感じているという。
「まだ1か月くらいしか経っていないんですけど、選手たちが僕の提示するゲームモデルを理解し、毎日、情熱を示してくれるので、充実感を覚えています。明治安田J2・J3百年構想リーグの開幕戦だった2月14日のヴァンラーレ八戸戦も、選手たちと一緒に見に行ったんですけど、みんなザスパが大好き。『いずれトップに上がるんだ』という意欲も押し出してくれるので、まずは1人でも多くの選手がユースに上がれるように尽力したいと思っています」とシュナイダーは力を込める。
とはいえ、U-15はまだ群馬県リーグ1部を戦っている状況。関東リーグ昇格という目標を達成することが、その一歩となる。群馬県のジュニアユース世代の強豪と言えるのは、かつて柏レイソルで活躍した大野敏隆を輩出した前橋ジュニア、2025年E-1選手権で日本代表デビューを果たした中村草太(広島)が所属した前橋FCなどで、こうした相手に勝つことが今季のターゲットになってくる。
「僕は三菱養和出身ですけど、関東エリアを見ると、養和はもちろんのこと、Jクラブの育成組織が強いですね。そのいくつかのチームが中学生年代から筋トレを取り入れているので、僕らと身体が全然違って、真っ向勝負ができない感じです。
ただ、僕としては中3の段階から器具を使った筋トレをガンガンやるのは避けたいという考え方なので、身体の使い方や動きの改善、走り方の改善など、できるところから進めていこうとしています。
今、取り組んでいるのはステップワークや上半身・下半身の使い方。フィジカルコーチと相談しながら取り組んでいますが、そういう部分は伸びしろがありますね。雄一郎とも話しますけど、今の子どもたちは外で遊ばないので、転んだ時の受け身や瞬間的な反応ができなかったりする。
僕が小学生だった時は、昼休みに相撲大会を率先して開いたりしましたけど、今の子たちは絶対にやらないですよね(苦笑)。結果的に多彩な動きができなくなる。そのマイナス面に目を向けて、できることから着手しています」と、シュナイダーは神妙な面持ちで言う。
サッカースタイルについては、トップチームの沖田優監督が志向する超攻撃的なサッカーを念頭に置いているが、そのうえで重視しているのが「全員攻撃・全員守備」。練習試合後には必ずミーティングを行なって、どこまでできたかどうかを選手たちに検証させることもしている。
「まだ中学生なので、すべて丸投げしてしまうと良い方向に進まないと思いますけど、できるだけ自分で考えて、前進していくように仕向けています。
僕はゴールキーパー出身なので、現役時代は監督になったつもりで守備の指示を出していました。そういう感覚を大事にしながら、守備のオーガナイズを中学生にも教えています。
特に攻守の切り替えは大事にしている部分。それを繰り返し言い続けているせいか、トップチームの開幕戦を見に行った際、1人の選手が『切り替えが遅れてる』『もっと速く』と声をかけていた。その姿を見て、すごく嬉しくなりましたし、少しずつ意識が浸透しているんだと感じました。
そうやって選手たちが着実に成長し、ユースに昇格して、トップで活躍してくれればいいと強く願っています」と彼は目を輝かせた。
GK出身で、GKコーチも兼務しているため、GKの育成も人一倍、力を入れている。昨今は鈴木彩艶(パルマ)のように欧州5大リーグでプレーする日本人GKも出現するなど、世界的な評価が上がっていることを実感している様子だ。
「少し前までは『この選手はアカデミー時代にもっとしっかり指導してもらえたら良かったのに...』と残念に思うことが比較的、多かったんですが、最近はしっかり指導を受けた選手が増えてきました。
良い例が鹿島アントラーズの早川友基。彼が大卒で入ってきた時の正守護神だったクォン・スンテは相当レベルが高かったのに、彼からレギュラーを奪って出続け、日本代表に上り詰めたのは凄いなと思います。
小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン)も僕が前回、群馬でGKコーチをしていた時に『レンタルで取りたいな』と思っていた選手。その翌年にベンフィカに引っ張られたんですけど、才能ある若手が海外から目をつけられる流れになったのを嬉しく感じました。
もう1人、名前を挙げたいのが高丘陽平(バンクーバー)。僕が横浜FCにいた頃、ユースに在籍していて、トップの練習にも参加していましたけど、非凡な能力に加えて人間性も素晴らしかった。彼のプレーを見ていて、『今、それどうやったの?』と尋ねたこともありました。
彼らのような人材を群馬のアカデミーから出したいというのも、僕の夢ではあります。中2でユースに帯同しているゴールキーパーもいるので、すごく楽しみですね」
すべてに対してポジティブマインドで前進し続けるシュナイダー。彼のような人材がいれば、群馬のU-15は明るく前向きな雰囲気で高みを目ざしていけるはず。まずは2026年の群馬県1部リーグでの戦いを注視していきたいところだ。
(本文中敬称略)
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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