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「母親になって後悔してる」が共感を呼ぶ日本の結婚…子育ての身近なロールモデルがいない中で結婚後の「美しい景色」を語れるのは誰か

「母親になって後悔してる」が共感を呼ぶ日本の結婚…子育ての身近なロールモデルがいない中で結婚後の「美しい景色」を語れるのは誰か

 誰が結婚後の「美しい景色」を語るのか

一方の「会社の先輩」などの大人たちについて、Z世代は辛辣な言葉をもらします。

「共働きで子育て中の先輩が、髪振り乱して全然幸せそうに見えない」「僕には、やっぱ(出産・子作りは)無理かな。両立できる体力もないし」

なかには、子育てを「エベレスト」や「グレートレース(耐久レース)」にたとえて、こんなふうに訴える若者たちもいるのです。

「私(僕)にとって出産は、エベレスト登山や、グレートレースのようなものなんです」

すなわち、子育てに興味がないわけではないけれど、そのゴールは、遥か彼方にある。しかも、一旦ゴールを目指して登ったり走ったりし始めたら、子育ては途中でやめるわけにはいかない。それなのに、周りの大人は、誰も自分を助けてくれそうにない。

彼らは言います。

「もし、自分より前に登り(走り)きった人たちが、ゴールから見える景色を『こんなに美しいんだよ』と教えてくれれば、まだ『やってみよう』と思うかもしれない」

でも現実は違う。会社の先輩や周りの大人たちは、「子育てにはお金がかかる」や「仕事との両立が、こんなに苦痛だなんて」と嘆くばかりで、景色の美しさはまるで語ってくれない。その姿を見ても、「ああなりたい」とは思えないし、やれる自信もないのだと……。それを聞くにつけ、胸が痛みます。

確かに40代以上の共働き(フルタイム)夫婦に取材しても、「産んでよかった」「子育てって、本当に楽しい」といった喜びの声は、あまり聞こえてきません。それだけ彼らが、毎日仕事をしながら育児を続けていくことに疲れているからでしょう。

また、近年は「子どもが欲しくてもできない」と悩み、不妊治療を経験する夫婦が「4.4組に1組」とも言われ、表立って「産んでよかった」と言うことがタブー視される環境にあるとも考えられます(25年厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」)。

『母親になって後悔してる』がベストセラーに…

ですが22年、一つのタブーが解放されました。イスラエルの社会学者オルナ・ドーナト氏が著した『母親になって後悔してる』(新潮社)が日本でもベストセラーとなり、母親たちが「誰にも言えなかったけど、私も思ったことがある」など、次々と声をあげ始めたのです。

日本では長年、「子どもを産んで後悔している」と人前で話すのは、大きなタブーだったはず。でも、そこが解放されたわけですから、逆に「産んでよかった」とZ世代に語り、出産の先にある「美しい景色」を見せてあげる大人が増えてもいいはずです。

既述の通り、親が自分を愛してくれたと感じているZ世代が、年収や雇用形態、あるいは「親ガチャ」などの境遇を超えて、「自分も子どもを育ててみたい」「新しい家族が欲しい」との思いをどこかに秘めているのだとすれば……、彼らが出産(子作り)に向けて勇気ある一歩を踏み出すためにも、まず親として、人生の先輩として、大人世代の私たちが変わるべきではないでしょうか。

なぜなら、先行き不透明な時代に「国も会社も守ってくれない」と嘆く若者たちの多くが「最後の砦」だとするのは、親であり、家族であり、信頼できる大人だからです。

文/牛窪恵

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