パチンコ・パチスロ業界が、その存亡を懸けた大きな転換点を迎えようとしている。
日本遊技関連事業協会(日遊協)は2026年3月13日の定例理事会にて、業界の悲願ともいえる「キャッシュレス化」と、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した「依存症対策」の具体案を報告した。
2027年度中の開始を目指すというこの計画は、単なる利便性の向上ではなく、深刻な売上減少と「ギャンブル依存症」という社会問題に対する、業界を挙げた背水の陣ともいえる取り組みだ。
かつて「30兆円産業」と呼ばれたパチンコ市場は2000年代半ばから長期にわたり縮小が続いており、矢野経済研究所の予測では2030年のパチンコホール数は5,600店舗、遊技機設置台数は308万台にまで減少するとされる。業界全体が崖っぷちに立たされている中での、苦肉の策でもある。
スマホ決済導入へ。業界を挙げた「脱・現金」の狙い
日遊協の西村拓郎会長は記者会見の冒頭、「次世代へ健全な形で業界を引き継ぐためには、キャッシュレス化の推進が不可欠だ」と強い危機感を露わにした。
具体的には、スマホを活用した決済システムを導入し、自己申告・家族申告プログラムと連動させることで、デジタルの力による依存症対策を加速させる方針だ。
実施の詳細についてはPSA(パチンコ・パチスロ安心・安全推進協会)を中心に今後詰めていくとしている。
これまでのCR機時代のような一律の強制導入ではなく、導入を希望するホールが任意で選択できる形を目指すとしており、早ければ2027年度中、来年には先行導入店舗での運用を開始したい考えだ。
西村会長は「スマホが普及している今の時代において、使用上限を設けられるキャッシュレス決済は強力な依存対策になり得る」と言葉を強めた。
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しかし、この方針転換の背景には、業界が直面している厳しい現実がある。パチンコホールの売上高は長期的な減少傾向にあり、ファンの高齢化や若年層のパチンコ離れに歯止めがかかっていないとされる。
キャッシュレス化は、手元に現金がなくても遊技できてしまうため、一見すると「依存を助長する」との懸念も根強い。それに対し日遊協が打ち出したのは、「デジタルでの使用上限設定」というブレーキ機能をセットにした導入だ。
「打ちすぎ」をシステムで物理的に抑制することで、社会からの信頼を回復し、安心・安全なエンターテインメントとしての地位を再構築しようという狙いだが、これが実際の売上にどう影響するのか。利便性が増すことで客足が戻るのか、あるいは制限によってさらなる収益悪化を招くのか、業界内でも慎重な議論が続いている。
注目すべきは、業界内でも温度差があることだ。全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)の阿部理事長は同時期、「キャッシュレス導入より遊びやすい環境整備が先」との認識を示しており、足並みが揃っているとは言い難い状況でもある。
