女子15人制ラグビーのワールドカップが現地時間8月23日よりイングランドであり、同9月28日の決勝は開催国が制した。
各試合の会場は黒山の人だかり。以前は学校のグラウンドで行なうこともあったというこの大会にあっては、抜群の盛況ぶりだ。
女子ラグビーシーンの変化を感じさせるこのキャンペーンにあって、サクラフィフティーンこと日本代表は予選プール敗退。長期合宿による鍛錬で強豪国との差を詰めようとしての結果とあり、国内選手のための環境整備を含めた抜本的な改革が求められるとわかった。
爪痕は残した。スペイン代表との最終戦は29―21で制した。
「勝つことしか考えていなかった。(チームで)繋げてトライを獲れたこととか、全てを嬉しく思います」
こう振り返るのはンドカ ジェニファ。このゲームで大会初出場のナンバーエイトだ。
「常に自信があるというプレーヤーではないのですけど、皆がプラスの声をかけてくれた。たくましい皆の言葉が、自分の自信に繋がりました。今後も、自分はできると自信を持ってサクラフィフティーンを盛り上げていきたいです」
これからを見据えてこう述べる24歳は、これまでの道のりにも妙味があった。
父がナイジェリア出身で母が日本人、兄のボニフェイスとチャールスがJリーガーという家族の長女として、バスケットを楽しんだ。埼玉の強豪、昌平高校の3年時には、センターのポジションで全国大会のウインターカップに出た。
ここで感じたのが、自分の立ち位置だった。
達成感もあった。
「小、中学校ではバスケで自信があったほうなんですけど、高校では自分よりもうまい人がチームにも試合の相手にもいっぱいいて。そこで頑張って、頑張って、ギリギリ試合に出られるくらいでした」
「大学でバスケをやったとしても、高校より楽しいバスケ生活はないなと思ったんです」
人生のページを切り替えるタイミングで出会ったのが、楕円球だった。
高校のラグビー部を教える、御代田誠氏に勧められた。日本スポーツ振興センターによるアスリート発掘プログラムの「J-STAR PROJECT」で、7人制ラグビーに触れてもいた。進学する流経大で、本格的にプレーを始める。
やがて身体能力抜群のナンバーエイトとしてジャパンのジャージーを着ることとなるが、初めは勝手を覚えるのに必死だった。
「ルールが本当に難しくて。ペナルティーで10メートル下がる時も、皆が下がるから下がる、みたいな。(詳細は)社会人になってやっと覚えたくらいです」
受難の時期は、他者との繋がりで乗り越えた。大学2年時に、新型コロナウイルスの感染拡大により生活が激変。茨城県内の寮に隔離されるなか、周りの部屋の先輩や同期の優しさに触れた。
「まず、(流経大の)チームが好きになって、このチームのためにラグビーをするという気持ちになれたんです。(動きを合わせるための)サインを練習前に教えてもらったり、試合が終わってからは一緒に映像を見てもらったり。プライベートでも、ゲームとか、ご飯とか…過ごしやすい環境を作ってくれました」
親しくなった仲間にラグビーを教わり、暮らしを支えてもらうのは、日本代表に加わったいまも変わらないよう。合宿中の移動時などに忘れ物がありそうな時は、フランカーの川村雅未に助けてもらうようだ。
「サクラフィフティーンの皆さんも、家族みたいで大切です。川村雅未さんは本当にお姉ちゃんみたいに気遣ってくれて…。ラグビーでわからないことがあったら、まずは雅未さんに聞きます」
15人でプレーするこのスポーツのよさに触れ、人生を豊かにする。改めて、競技をスタートさせた頃を思い返して笑う。
「(当初は)本当に嫌でした。でも、断れずに。始めた後も『こんなに痛い思いをして…』『もう、辞めたい』なんて思っていたのですが、結構、長くやってきました」
先人をロールモデルにして自分らしくジャパンとなったジェニファは、後進のロールモデルにもなるつもりだ。北海道の現所属先、出身校、地元で、ワールドカップでの学びを還元したいという。
取材・文●向風見也(ラグビーライター)
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