・困惑
若者「あと、結局犯人って、何がしたかったんです?」
おじさんA「おっ……」
私「無数のレイバーを暴走させて、首都圏を混乱に陥れたかった……」
若者「それはそうなんですけど、そうじゃなくて」
おじさんA「おぉ……」
おじさんB「ンフフフフフ」
若者「生きてるならわかるんすけど、最初から死んでるじゃないですか」
若者「意味なくないですか?」
私「それも正しい感じ方だと思うよ」
おじさんB「端的に言うと、わからない」
私「死んでるから。作中でも推測しか語られない」
おじさんB「正解の有無はともかく、元ネタというか、思考のための養分が豊富にあるのがいいよね」
若者「元ネタ?」
おじさんB「元ネタというか、モチーフというか」
私「ヒロインの名前、覚えているかい?」
おじさんA「イズミ・ノアだよ。ノアちゃん」
私「帆場の計画で被害を被ったのが、バビロンプロジェクト」
若者「あっ……! 旧約聖書っすか?」
おじさんA「人の手でバベルの塔を壊す」
若者「でも死んでるんですよ。テロを起こしても、先が無いじゃないですか」
私「そうだねぇ」
おじさんB「確信犯なんだよ」
若者「えぇ……。じゃあ皆さんずっと話してるわりに、わからないってことっすか」
私「オタクおじさんにわかることなんて、ほとんどないんだよ」
おじさんA「現実の犯罪だって、おかしな思想に染まった確信犯の頭の中なんて理解不能でしょう」
おじさんB「明かされないままなのが、ある意味リアルだよね」
おじさんB「そもそも戦後の復興とバブル景気に沸く東京を体験した世代じゃないと難しい気がする」
おじさんA「失われていく東京の景色を憂いてってやつかい?」
私「再開発で変わっていく郷里……と言い換えたら、どうだろう」
若者「でも、街なんて変わっていくのが普通じゃないです? そのために復讐みたいなことをするって、狂ってません?」
私「その帆場の内面を最も深く考察してみせたのが……」
おじさんA「後藤さんが、まるで帆場が乗り移ったかの如く語るわけよ」
おじさんB「視聴者にとって正義側の軸みたいな立場の後藤さんであれをやるの、上手いよね」
若者「あっ、そういう……? うぉおお……!」
映像表現そのものにやられた若者は、内容でもやられていた。彼は帆場という犯人に困惑しているようなのだ。
会話の流れで彼が「アニメの犯人像」として出してきたのは、『名探偵コナン』のものであった。「金田一少年」世代の私はコナンをよく知らないが、基本的に犯罪計画の成功には自身の生存と逮捕されないことが必要最低条件なタイプの犯人だと思われる。
帆場のように計画の発動前に自死するというのは前代未聞だったもよう。しかし彼は、そのような犯人像を否定しているのではなかった。
帆場が未知すぎて理解の外にあるが、しかし物語は完全に成立しているため、彼はその仕組みを理解したがっているようであった。
なんにせよこれは完全にハマっていると見ていい。その後はメシ屋に移動。少し遅い昼飯を食いつつ、1時間くらい雑談は続いた。
若者「結局よくわからないw」
おじさんB「でも面白かったでしょう」
若者「すごいアニメでした。説明できないけど、カコイチですよ」
私「世界が広がったわけだ」
若者「2はこの続きなんですか?」
おじさんB「ンンンンンw」
おじさんA「見るといいよ。21時までだからさ」
おそらく彼は『機動警察パトレイバー2 the Movie』も見るだろう。だが、2は押井監督特有のテイストがとても濃い。1作目の感じを期待したまま、2作目に行くのだろうと思うが、きっとびっくりするだろう。
参考リンク:パトレイバー
執筆:江川資具
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