「10年間、僕が監督をやった時から最初に4番に指名して、チームを離れるまで一緒にやってきました。正直、いちばん手がかかったし、いちばん気になったし。そんな選手です」
これは9月19日の引退試合で中日・中田翔に向けられた、栗山英樹氏の言葉である。
この日のヤクルト戦(バンテリンドーム)に「4番・一塁」でスタメン出場した中田は初回、フルスイングで空振り三振に倒れ、2回の守備途中で交代。試合後の引退セレモニーで送られた、日本ハム時代の恩師からのメッセージが冒頭のものだった。
すると中田は堪えきれず、大粒の涙を拭う。日本ハム時代は不動の4番として通算261本塁打、950打点を記録。しかし、中日での2年間は不振と故障で通算6本塁打に終わり、18年間の現役生活に別れを告げることになった。
2007年のドラフト1位で、日本ハムに入団。しかし、2021年シーズン途中に、同僚選手への暴力行為が発覚する。球団からは無期限の出場停止処分を受けた。
ところが、球団の処分からわずか9日後の8月20日、突如として巨人への無償トレードが発表されたのである。翌日のDeNA戦で代打出場すると、22日には本塁打を放つ。巨人移籍と同時に出場停止処分が解かれことに加え、日本ハム所属時に謝罪会見を行わなかったことに対し、「ファンへの筋は通すべき」との批判を浴びることになったのである。
そんな中、自身のインスタグラムで中田が打席に立つ写真を公開したのは、ボクシングWBA世界ミドル級王者の村田諒太だった。
〈中田翔選手。打席に立つだけで雰囲気の出る類稀な選手。世の中では罰を与えろとか言う輩もいるみたいだが、罰ばっかり与えて面白い人間を消すのはやめようよ〉
この中田擁護のコメントに対し、当然のことながら賛否の声が広がることになる。スポーツ紙記者が振り返る。
「村田はアスリートの中でも無類の読書家であり、理論派として知られています。村田自身にはいろいろと思いがあるのでしょうが、インスタの文章を読む限り、村田が対象にしているのは『罰を与えろという輩』、つまり世間の声ということになる。ただ、今回は移籍が『処分の抜け穴』になったと捉えられても仕方がない事案です。村田が言うように『類稀な選手だから』との理由で処分が免除されれば、競技全体の秩序が乱れてしまう。村田の投稿には『論点がズレている』といった声が多かったことは事実ですね」
だが、その後も村田の投稿は続き、9月10日のインスタには同日の巨人×中日(東京ドーム)を観戦したとして、
〈打席に立つだけで雰囲気の出る選手…あっ、ヤベ笑〉
〈打席に立つだけで雰囲気の出る選手… あっ ヤベ…笑 しかし何を言われても意見は変わらんのだが 「人を裁くな そうすればあなたも裁かれることはない」 スキャンダルなんて当事者同士の問題でも、有名というだけで事以上に叩かれる しゃあないのだろうが、昨今は度が過ぎている気がするな〉
またしても同じ持論を展開。ボクシング世界王者による、たび重なる「問題発言」が、波紋を広げることになったのである。
(山川敦司)

