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「男闘呼組は休止しただけ。解散していない」…成田昭次(52)が会社を辞めて再始動を決めた“あの日の覚悟”

「男闘呼組は休止しただけ。解散していない」…成田昭次(52)が会社を辞めて再始動を決めた“あの日の覚悟”

1980年代後半に一世を風靡したロックバンド「男闘呼組」。長い沈黙を経て2022年に再始動し、大きな話題となったが、その裏にはメンバー・成田昭次(52)の人生を賭けた決断があった。会社員として働きながら音楽から離れていた昭次は、男闘呼組をもう一度動かすため、すべてを手放して再び東京へ向かうことを決意する。その葛藤と覚悟とは。

『人生はとんとんー成田昭次自叙伝―』より一部を抜粋、編集してお届けする。

「一度ついた火を消せない」

「やったほうがいいよ。こういうチャンスは逃したら二度とやってこない。自分の中に悔いがあったり、後悔するんじゃないかという思いが少しでもあるなら、やったほうがいい、絶対に。

工場のプロジェクトは、またいくらでもチャンスがあると思う。ただ、男闘呼組再始動ということになれば、チャンスは二度とないかもしれない。やるだけやってみるべきじゃないか?」

昭次が3年後の2023年に男闘呼組を復活させ解散ライブを行い、ケジメをつける計画だと伝えると、社長は言ってくれた。

「だったら3年後、戻って来ればいい」

昭次は「まだ僕と社長だけの話にしてください」と伝え報告を終えたが、翌日出社すると、すでに同僚たちは知っていた。
「いつ東京行くの? 」
「頑張れよ。ライブ行くからな」

その後昭次は、和也、耕陽と何度も話し合った。和也も耕陽も「一度冷静になれ」と昭次を落ち着かせようとした。
耕陽が言った。

「お世話になった会社を辞めていいのか? 社長にお世話になったんだろ? 男闘呼組再始動の方法はひとつじゃない。自分のつてをたどって再始動するって方法もある。会社勤めをしながらできる再始動の形を追求してみてもいいんじゃないか?」

耕陽の提案は至極まっとうなものに聞こえ、昭次の葛藤は続いた。

「常識的に考えて、50歳をすぎた人間が、しかも、10年のブランクがあるにもかかわらず、すべてをなげうって何かに挑戦するというのは、あまりにも現実的じゃない。僕自身がブランクを乗り越えられるかはもちろん、男闘呼組を再始動させるためには、越えなければならない壁が無数にある。ある意味で非現実的だというか……」

それでも、昭次は立ち止まることよりも、一歩踏み出すことを決める。「一度ついた火を消せない」と常識も現実も度外視した。

「このまま男闘呼組再始動に関して何も行動を起こさなかったら、きっと今際の際に後悔する。男闘呼組を再始動させるチャンスとタイミングがあったのに、みすみす見逃したまま死ねない」

今度は、昭次が和也と耕陽を説得する番だった。

「男闘呼組は休止しただけ。また動かないと。解散もしてない。解散ライブもしていない。このままでは、あの日応援してくれた人たち、ファンの人たち、スタッフの人たちに対して、あまりにも不義理だ。

メンバー全員が50歳をすぎ、あの日何が起こったのか受け止めることができるようになったんだよ。あの日つけられなかったケジメをつけよう」

最後は和也も耕陽も賛同してくれた。その瞬間を耕陽が振り返る。

「昭次が言ったんです。『男闘呼組を再始動させてケジメをつけたい』って。俺も和也も、最後まで昭次のことを心配してました。それでも、昭次がそう決めたのなら、やってみよう。信じようって。

それを和也にも伝えて、和也も『じゃあわかった』って。だから、ある意味で男闘呼組再始動に関して、提案したのは健ちゃんかもしれないけど、決定権は昭次にあったと言うか。俺も和也も、昭次が決断しなければ、絶対に再始動に賛同できなかったからさ。そう、だから、男闘呼組の再始動を決めたのは昭次なんだと思ってる」

「これからまた音楽やるよ。兄貴のギター、使わせてもらうね」

もちろん、昭次にも不安がなかったわけではない。

ソロ活動時代を経験し、音楽で食べていく難しさは痛いほど身にしみている。これだけのブランクがあって、いきなり音楽だけで生活できるほど甘くないのは百も承知だった。

谷川も、「最初から音楽だけで生活するのは難しいでしょうね」と率直に指摘し、ある提案をしてくれた。

「リズメディアは飲食店の経営もしている。その厨房に立ち、料理の仕事をしながら音楽活動を少しずつ再開するというのはどうでしょう?」

昭次は、飛び出した“料理”というフレーズに戸惑う。それでも、昭次の決心は揺らぐことはなかった。

改めて、母の説得を試みようとしたが、母もまた心を決めていた。

「最終的に決めるのは昭次、あなた。昭次が自分で決めたことならば、あなたのことを信用してるし、信頼もしてる」

昭次の母は再び独居が始まるのだと覚悟した。ただ昔から「将来、子どもの世話には絶対ならない。ひとりで自立して生きていく」というのが信念だった。そのために備えもしてきた。

「昭次が本当にやりたいことを見つけたのなら、親の私が抑え込むことなどできない。もし私が反対して無理やりにでも上京を止め、いつか昭次が後悔したら、それこそ取り返しがつかない。そんなことになれば、私自身が悔やんでも悔やみきれない。あとは本人に任せよう」

快く息子の新たな旅立ちを見送ろうとした時だった。昭次が言った。

「お母さんを名古屋にひとり置いてはいけない。何かあったら心配だから。一緒に行こう」

昭次はすでに計画を立てていた。上京後、リズメディアの社員寮で生活し、なるべく早く部屋を借り、そこに母を迎えともに暮らすことを。

母の脳裏に、ひとりでお泊まりできず、泣きながら足元にしがみついた幼き日の昭次の姿が浮かび上がった。

「この子は大きくなっても絶対に私から離れられないだろうな」

あの日の予感は外れてはいなかった。ただ、離れられないのは甘えからではなく、昭次の優しさからだった。

昭次は兄の墓前に誓う。
「これからまた音楽やるよ。兄貴のギター、使わせてもらうね」
成田昭次、52歳。
再びの上京。
オレンジのグレッチとともに――。

構成/水野光博 写真/井村邦章

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