親や教師に言えない悩みを抱えた生徒たち
太田 インセル(*4)、ミソジニーの暴走みたいな事件を見聞きすると心配にもなりますが、でも実際に中高生に授業をすると、前向きな反応も多くて希望が持てますよね。
アル 本当に。男子生徒が「性差別に反対する自分はフェミニストだと気づきました」なんて言ってくれると涙が出る(笑)。授業中は発言できなくても、後から話しに来てくれる子もいるんですよ。セクシュアリティにまつわる悩みを打ち明けてくれることもあるし。彼氏からセックスを求められて、断ると逆ギレされたという話をしながら泣いちゃう女の子とかも。性にまつわることって、親や先生よりも、私たちみたいな赤の他人のほうが話しやすいんだと思う。
太田 親には言えない相談ですね。彼氏が避妊をしてくれないとかもね。
アル デートDVって知ってる? と質問すると知らない子が多いんだけど、殴る蹴るの身体的な暴力だけじゃなくて、携帯の連絡先を消させるといった束縛系、セックスで避妊しないといったこともデートDVの一種だよと説明すると、自分が受けていたとか、友だちが経験してるって答えはかなり多いよね。
太田 知っておくことで「これは受け入れてはいけないやつだ」とわかって、誰かに助けを求めることもできますよね。
アル 一方で、一人ひとりはそうやって悩みを抱えていても、クラスの中で声の大きい男子がミソジニー的な発言をすると、まわりが萎縮して発言できないこともある。からかわれたり、笑われることが怖いんだよね。
太田 そういうのもホモソの悪い影響ですね。
アル そういう子が一人いると教室全体の空気が変わってしまう。たまに、後から「アイツが失礼なこと言ってすいませんでした」って代わりに謝ってくれる子もいるんだけど。
太田 なんていい子なの(笑)。
男子も女子もそれぞれにある「呪い」
アル ミソジニーに染まった生徒もいるけど、基本的には真面目ないい子が多いと感じます。「男の子は泣いちゃいけない、男なら我慢しろ、男なんだから頑張れと言われてきたよね」と言うと男子はうんうん頷いてる。自分たちが「男らしさ」の呪いをかけられてきたことは、多くの生徒が実感として持ってるよね。
太田 特にエリート校の生徒たちは、そこに行くまでの環境ですでに親や周囲の期待を強く受けてますよね。いい大学やいい企業に入ることが今の環境の延長であり目標、というのは暗黙のうちに、あるいは明確に感じてるのでは。そういうことも「女子枠」や「女子限定」みたいなアファーマティブ・アクション(*5)への反発の背景にあるのかも。
アル 「逆差別だ」と。ネットでもリアルでも何億回も聞いてます。
太田 女子枠に対する反発は、女子生徒からも結構聞きますね。努力して合格したのに、女子枠だから入れたと思われたくないとか、なにかアンフェアな「得」をしてしまうのはよくないことなんじゃないか、みたいな。その気持ちもわかるんだけど、社会全体の偏りを是正していくための制度で、それによる利益は社会のみんなが受けるわけだからね。あなたの努力を上げ底だと言っているわけじゃない。
アル そう。個人を優遇するためではなくて、社会構造を変えていくためなんですよ。女性が働きながら子育てしづらいような職場環境や、医学や理工分野で女性が極端に少ない現状を変えることがゴール。日本の女子学生は理系の成績も世界一優秀なのに、理系に進む女子は少ない。女子に理系を選んでもらうためには構造を変えなきゃいけない。少数の女性が活躍したとしても、全体の数が増えないと構造を変える力にはならない。それを後押しするための過渡期の制度なんですよ。
太田 その理解はとても大事ですね。
アル 将来ジェンダー平等が実現して、何もしなくても男女が同数になる社会になれば、女子枠はめでたく廃止すればいいんだよね。

