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「この橋の持ち主を探しています」全国に1万3000か所以上…“正体不明の橋”が存在する理由

「この橋の持ち主を探しています」全国に1万3000か所以上…“正体不明の橋”が存在する理由

「この橋の設置者又は管理者の方を探しています」。そんな看板が掛かる橋の写真がSNSで話題を呼んだ。橋を架けたり維持したりするには国や自治体からの許可が必要だが、その手続きがなされず誰が管理しているのか分からないこうした橋は“勝手橋”とも呼ばれる。日本には万単位で存在するが、全国規模の調査が行なわれたことがなく、実際の数も不明という謎の存在だ。なぜそんなものがあるのだろう。

いつ誰が? 「正体不明の橋」のナゾ

2月にSNSで写真が拡散したのは岐阜県恵那市にある観光地「日本大正村」のそばにある鉄骨造りの人道橋だ。

風情も漂う立派な欄干に、設置者を探す「岐阜県恵那土木事務所」の看板が付いていたことが話題を呼んだ。

近所に職場がある女性は「私は30年ほど前から働きに来ていますけど、そのころにはありましたね。近所の住民はよく使っておられます。丈夫なので揺れたりしませんよ」と話す。

恵那土木事務所によると橋は少なくとも1976年にはあったことが確認できるが、いつ、誰が設置したのかはわからない。それらを調べるために昨年10月に情報提供を呼びかける看板を掛けたという。

そもそも川に橋を架ける場合は河川法に基づき、川を管理する国か自治体に占用や工作物建築の許可をとる必要があり、勝手橋は形式上、河川法違反状態になる。

ただ恵那土木事務所は「違法かどうかは設置時期や経緯が不明であるため判断ができません。そのため橋の設置経緯を含めて管理者の情報提供依頼を⾏なっています」との立場だ。

隠れて行なうのは難しそうな橋の設置工事の主をなぜ特定できないのか。

その疑問について同事務所は「現行の河川法は1965年に施行され、それ以前に架けられた橋は許可を受けたとみなす(同法上の)経過措置によりみなし許可橋とされた経緯があり、それに該当する可能性があります。

また、河川改修時に附帯⼯事として橋が架けられた際に占⽤⼿続きが正しく⾏われていないと推察される例があります」と説明する。

さらに許可は基本的に10年ごとの更新が必要で、これが行なわれず管理者がわからなくなることもあるという。

国土交通省水政課は「川を渡らないと家にたどり着けないような地形で私的に橋を架けた人もいたと思われます。それで建設時にはちゃんと許可が取られても、その人が亡くなったり引っ越ししたりして許可の更新がなされず、管理者不明となるケースもあったと聞いています」と説明する。

「勝手」につくったわけではない橋も多そうだ。

最低でも1万3000か所も…広がる安全性への懸念

そして、こうした橋が全国にどれほどあるのか、全体の規模をつかむための集計がされていないことも関係機関の話でわかってきた。

河川は国土交通省が管理する一級河川、都道府県や政令指定都市が管理する一、二級河川、さらに市町村が管理するそれ以外の河川に分かれる。

「国交省管理の一級河川には管理者不明の橋はありません。都道府県か政令市が管理する一級、二級河川では2022年に都道府県から報告を受け集計すると計9697か所ありました」(国交省水政課)

ただ、当時47都道府県と政令市の計58自治体のうち国交省に報告したのは31自治体にとどまる。

その際に報告しなかった広島県は2024年に県が管理する川に架かる橋を調べ、勝手橋が3395か所あることを確認。これを足し上げるだけで1万3000を超える。

市町村が管理する川に架かる橋の集計もないため、勝手橋がどれくらいあるのか全体像はまったく不明だ。

管理者がいないことによる一番の問題は当然安全性への懸念だ。

岐阜恵那土木事務所は管理者不明の橋があれば「異常がないか定期的にパトロールを行ない、通⾏に⽀障が⽣じる場合には通⾏⽌めなどの措置を取ります」という。

町内に29か所の持ち主不明の橋を抱える富山県立山町は、安全性を調査するための454万円を初めて2026年度予算に盛り込んだ。

こうした負担を減らすには橋の持ち主を探し出すしかない。

「文献を見たり、地域の自治会に聴き取りをしたりする地道な努力で橋の持ち主を探し当てた事例もあり、各自治体がそうした経験を共有できるよう情報を提供したりします。

持ち主が見つかれば、使っていない橋なら撤去をお願いし、まだ使う橋なら河川法に基づく手続きを取るよう自治体からお願いすることになります」(国交省水政課)

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