まさに「次元の違う鬼脚」としか言いようがない。3月28日に行われた三木ホースランドパークジャンプステークス(障害オープン、阪神・芝3140メートル)で、2着馬に10馬身差をつけて大楽勝したホウオウプロサンゲ(牡5)のパフォーマンスは、ジャンプ界の新たな「ニューヒーロー誕生」を予感させて余りある圧勝劇だった。
2着馬は障害重賞2勝のスマイルスルー(騙6)。ところが横綱相撲さながらの「楽逃げ」を打つ同馬を2番手から追走したホウオウプロサンゲは、勝負どころの3コーナーで並ぶ間もなくアッサリと先頭に立つや、余裕綽々の手応えで目の覚めるようなブッチギリ劇を演じてみせたのである。
ホウオウプロサンゲは2021年の「北海道セレクトセール当歳」で、同セールの最高落札額となる4億5100万円(税込み)でセリ落とされた超高額馬である。それゆえデビュー前から「同世代屈指のクラシック候補」として大注目されたが、2024年のGⅠ・皐月賞(中山・芝2000メートル)では11着に敗退。その後、サンタクロースS(3勝クラス、京都・芝2000メートル)を勝ってオープン入りを果たしたものの、平地の重賞レースでは13着⇒14着⇒14着⇒15着と、目を覆いたくなるような惨敗が続いていた。
そこで「世界のヤハギ」として知られる名伯楽・矢作芳人調教師(栗東)ら陣営が、起死回生の一手として選択したのは「平地競走から障害レースへ」という大胆な方針転換だった。
はたせるかな、「障害転向」の初戦となった障害4歳以上未勝利戦(2月28日、小倉・芝2860メートル)では、60キロの斤量を背負いながらも、2着馬以下を完膚なきまでに封じ込める大差勝ちを収めたのである。
そして今回の「2連勝ブッチギリ」。競馬ファンならここで、何か思い出すのではないだろうか。平地から障害に転向してJGⅠ・中山グランドジャンプ(中山・芝4250メートル)など、トップクラスの重賞障害戦線で赫々たる成績を収め、競馬ファンからの絶大な人気を得たあの馬、オジュウチョウサンである。筆者はもとより、多くの競馬メディアが「ホウオウプロサンゲは第2のオジュウチョウサン」と、ニューヒーローの誕生に期待を寄せているのだ。
競馬に関する珠玉のエッセーを残した寺山修司が生きていれば、ホウオウプロサンゲの「第2の挑戦」をどのように表現しただろうか。競馬を通じて人生を味わい直す。競馬への関わり方は人それぞれだが、やはり競馬は第一級のエンターテイメントである。
(日高次郎/競馬アナリスト)

