山には危険区域はあっても禁止区域はない
スキー場が管理するゲレンデの場合、滑走禁止エリアを設けているケースがあるが、山はどこを歩こうがスキーをしようが基本的には自由だ。そのため危険を顧みないスキーヤーが後を絶たないのである。
そこで最近では、ゲレンデからバックカントリーに出るためのゲートを設置するスキー場も増えている。地域全体でバックカントリーのルールを定めているのが北海道・ニセコ町だ。
1980年代、ニセコではバックカントリースキーが常態化し、毎年のように死亡事故が起きた。
「40年以上この町で暮らす私の体感では、雪崩の8割以上がスキーヤーによる誘発です。しかし、バックカントリーがしたくてニセコに来る人も多い。そこでスキーヤーの滑走の自由を尊重しつつ、最低限の規制を設けた『ニセコルール』を2001年に策定しました」
そう語るのは、ニセコ雪崩調査所所長の新谷暁生氏だ。
「ニセコルール」では、ゲレンデからバックカントリーへの出口を、各スキー場内に設けたゲートに限定、スキー場外では、安全に滑走するために、ヘルメットと雪崩トランシーバーの装着が最低限、ゲートが閉じられている時はスキー場外に出ることを禁止するなどの5つの項目が設置され、ルール違反者はリフト券の没収、販売停止など、スキー場利用を拒否されることもあるなどの罰則も設けられている。
「すべての利用者にとって何が最善かを考えた結果です」と語る新谷氏は、スキーシーズン中は、毎朝「ニセコ雪崩情報(https://niseko.nadare.info/)」を発信し、雪崩事故防止の最前線に立ち続けている。
雪崩の危険を未然に防ぐには、まず雪崩が起こりやすい地形の見極め方を理解し、装備を揃えることが重要だ。そのためにも座学やフィールドでの実習を含めた講習会・勉強会などに参加して雪崩に対する知見を深めたい。
バックカントリースキーも登山も雪山は楽園であると同時に危険な場所でもある。その事実を理解することが、事故を防ぐ第一歩なのである。
取材・文/永浜敬子

