現地9月30日から、いよいよMLBのプレーオフが開幕した。ポストシーズンのロースターはレギュラーシーズンと同じ26人。だが、そこには独特のルールも存在する。“意外な抜け穴”も含め、MLB独特のポストシーズン・ロースターにまつわるさまざまなルールを分かりやすく説明していこう。
●大原則は「9月1日までに40人ロースター入りしていること」
プレーオフのロースターに関するルールには、まず一番最初にこのように書いてある。
「アメリカ東部時間9月1日正午時点で40人ロースター、または60日間の故障者リスト(IL)に入っていた選手は誰でもポストシーズンに出場できる」
まずここでのポイントは、出場条件が26人ロースターではないこと。つまり、9月1日時点で1試合も公式戦に出ていなくても、40人ロースターにさえ入っていればプレーオフに出場できる、ということだ。
たとえばレッドソックスでは、ルーキー左腕のペイトン・トーリーがロースター入り。彼はデッドラインギリギリの8月29日に40人枠入り(同日にメジャーデビュー)したため、何の問題もなくワイルドカード・シリーズでロースター入り。第2戦で実際にプレーオフ初登板を果たした。
●禁止薬物使用選手は出場できない
ILとは別に、出場制限リスト(Restricted List)というものがある。これが適用されるケースには大きく分けて、①野球に関係ない個人的な理由などで離脱する場合 ②薬物違反や事件への関与でMLB機構から出場停止処分を科された場合の2つのパターンがある。
昨年7月にダルビッシュ有(パドレス)が離脱した際の理由は①に該当する家庭の事情。一方、22年に当時ドジャースのトレバー・バウアー(現DeNA)が女性に暴力を振るった疑いで制限リスト入りしたのは②のパターンだ。
9月1日時点で出場制限リストに入っていた選手は、厳密にはMLBではプレーしていなかったことになるが、40人枠に入ってさえいれば問題なくプレーオフに出場できる(22年のバウアーのケースでは、ドジャースがメンバーから外した)。
だが、例外がある。それは禁止薬物薬物使用で出場停止処分を受けた場合だ。今季で言えば、5月に80試合の出場停止処分を受けたリリーフ投手ホゼ・アルバラード(フィリーズ)がこれに該当する。
処分をまっとうして8月20日から実戦復帰したアルバラードはその後、平均100マイルに迫る剛速球を武器に勝利の方程式入りしていたが、今年のプレーオフには出場できないため、フィリーズにとっては少なくないダメージとなる。
●シリーズ中に故障者が出たらどうなる?
プレーオフではロースターの26人とは別に、「予備選手」を登録することができる。彼らはロースター内の選手がポストシーズン中に負傷した場合、その穴埋めとして出場することができる。負傷者が出ない限り出番はないが、ゲーム中はダグアウトに入ることも認められている。
ただ、怪我で予備選手と交代したプレーヤーは、その次のシリーズではロースターに登録できない。仮にワイルドカード・シリーズ中に負傷して予備選手と交代した場合には、地区シリーズには出場できず、次の出番はリーグ優勝決定シリーズまで待たねばならない。
●40人枠外の選手が出場できる“抜け道”も!
冒頭でも言及したように、「9月1日時点で40人枠に入っていること」がプレーオフ出場の基本条件。だが、実はここには“抜け道”がある。プレーオフのロースター規定には、以下の但し書きがある。
「上の出場資格の基準を満たさない選手でも、8月31日時点で当該球団に所属していたならば、負傷した選手(※「戦線復帰に必要な最小限の期間」を満たしている必要がある)に代わってロースターに追加することを、コミッショナー事務局に申請できる」
具体例を挙げて説明しよう。昨年のワールドシリーズで胴上げ投手になったウォーカー・ビューラーは、今年8月29日にレッドソックスからリリースされたが、2日後の31日にフィリーズとマイナー契約を結んだ。9月1日時点で40人リースターにはいなかったので、本来ならプレーオフに出場できないはずだが、「故障者の代役」としてロースター入りすることは可能なのだ。
ここで問題となるのが、「誰の代役か」ということだ。現時点でフィリーズは4人がILに入っていて、このうちビューラーと同じ先発投手はザック・ウィーラーのみ。だが、「ウィーラーの代役はビューラー」ということにはできない。なぜならウィーラーは8月31日に60日ILに登録されたため、地区シリーズ開幕日の10月4日時点では、「戦線復帰に必要な最小限の期間」である60日間がまだ経過していない。ビューラーを出場させるためには、8月26日に15日ILに入り、すでに必要な日数が経過しているリリーフ投手のジョーダン・ロマーノの代役ということにしなければならない。
●“抜け穴”が秘密兵器
この“抜け穴”を利用してロースター入りした選手が目覚ましい活躍を見せた例がある。
やや古い話になるが、2002年のエンジェルスは60日ILでシーズンを全休したスティーブ・グリーンという選手の代役として、一人の新人投手をロースターに加えた。9月にメジャーデビューし、わずか5登板しかしていなかった20歳のフランシスコ・ロドリゲスだ。
当初は無名の彼に誰も注目していなかったが、ヤンキースとの地区シリーズ第2戦から3連投といきなりフル回転。その後も快投を続け、結局この年のプレーオフは11登板、18.2回を無失点、28奪三振という快投でエンジェルス初の世界一の立役者となり、“K-ROD”のニックネームで一大センセーションを巻き起こした。
今季で言えば、ガーディアンズのチェイス・デラウターがこの方法を取っている。強肩強打のトップ・プロスペクト外野手であるデラウターは、9月1日時点では40人ロースターに入っていなかったが、メジャー未経験のままワイルドカード・シリーズのメンバーに抜擢。第2戦に7番・センターで先発出場し「プレーオフでメジャーデビュー」という史上6人目の記録を樹立した。
また、レッドソックスの先発投手コネリー・アーリーもこの条件に当てはまっていた。9月1日時点で40人枠には入っていなかったアーリーだが、約1週間後にメジャー初昇格すると、4先発で防御率2.33、奪三振率13.50と好投。ヤンキースとのワイルドカード・シリーズ第3戦では先発マウンドに立ったが、味方のミスも絡んで4回途中6安打4失点で無念の降板。残念ながら、ロドリゲスのような“秘密兵器”にはなれなかった。
26人のロースターに誰を選ぶかが、チーム全体の命運をも左右し得る。プレーオフでは、ぜひ各球団の“編成の妙“にも注目してほしい。
構成●SLUGGER編集部

