何とあの参政党が、劇薬のようなこの男に出馬オファーを送っていた⁉ 中川淳一郎、「NEWSポストセブン」を急成長させ、大手広告会社で今も社会トレンドの議論に加わるバズリの巧者だ。彼はどう対応したのか。独自の参政党分析を含めた特別寄稿!
参政党が先の参議院選挙で14議席を獲得し、神谷宗幣代表が元々持っていた議席と合わせて参院では15議席、衆議院では3議席あるため合計18議席の有力政党に躍り出た。本稿では、参政党から選挙出馬を打診された私が、同党についてのメディア報道・世論への違和感と、実体験、そして彼らのしたたかさを記す。
2024年12月、私が住む佐賀県のとある有力者から電話が来た。参政党の県連の代表が私に会いたいのだという。代表とは電話でやり取りをし、数日後の14時に唐津の飲み屋で会うことになった。
そこにはいかにも「やり手」の3人がやってきて重要な話をする会合となった。打診の詳細は後述するが、まずは同党についてのメディア報道・世論への違和感を記す。私は党員ではないし、支持もしていないことは明言しておく。
参政党は参院選では、既存政党及び支持者から相当な批判を食らった。その基本的論調は「カルト政党」「陰謀論者」「差別主義者」である。新型コロナ対策やワクチン政策への疑問を元々表明したことと、党員向けのイベントでカネを集めたこと(まぁ、政治資金パーティとの違いはよくわからんが)、「日本人ファースト」を掲げたことからこの3つの類型の批判を浴びることとなった。
百田尚樹氏率いる「日本保守党」も存在するが、保守系雑誌に掲載される中高年の主張的なものが目立ち、ネット時代の選挙においては古臭い。そんな中、矢継ぎ早にネット上で若い美女候補にガンガン発言させたり、YouTubeを使って党代表の神谷氏の主張を拡散させる参政党の手法は多くの支持を得た。
私は広告業界出身の編集者のため、今でも大手広告会社の会議に参加している。この会議では最新の広報活動の紹介や社会のトレンドを紹介し、議論をする。その中で参政党の話題も出た。同社は某老舗政党の担当だ。
「伝統ある政党は、思い切ったネット広報をすることはできない。石丸伸二氏、斎藤元彦氏、NHK党、トランプ氏、そして参政党の『使えるものはなんでも使ってやれ』という大胆さはネットが投票行動に影響を与える今、非常に効果があるのでは」
そのうえで、「何でもあり」の強さを別の参加者はこう語った。
「参政党の動画の使い方、演説の配信。さらにはアンチからの抗議の様子も流し、『日本人ファースト』に反対する『反日売国奴』から攻撃されているとのイメージ醸成ができ、より強固な支持を得た」
そうした状況で伝統的な各政党は参政党に対して批判的論調を強めようとする。朝日・毎日を中心とした左派系メディアも参政党支持を「ポピュリズム」「レイシズム(人種主義)の蔓延を助長」などと批判の論陣を張る。だが、それは逆効果で、伝統ある政党と新聞・TVが批判すればするほど支持は高まる。参政党支持者は彼らを「『日本人ファースト』ならぬ『外国人ファースト』で日本を売り渡す反日左翼勢力」と扱っているのだから。むしろ「マスゴミが批判しているということは参政党は正しいんだな」となった。
参院選投開票日の7月20日を前にした15日、山本一郎氏というネット上の有名人が、noteに「参政党を支えたのはロシア製ボットによる反政府プロパガンダ」という投稿をした。基本的には、ロシア製ボットが石破政権批判・印象操作等の投稿・動画をトレンド入れさせて印象操作を行い、大量の政権批判により排外主義的投稿が増加し、参政党への支持が集まった、といった趣旨の文章だ。
この投稿掲載直後、一斉に名だたる議員が参政党叩きに参戦! 国民民主党の玉木雄一郎氏、日本維新の会の前原誠司氏、自民党では三原じゅん子氏、河野太郎氏、小泉進次郎氏、小野寺五典氏が反応。これはタイミングを計ったかのような不自然な流れだと私は思った。小野寺氏に至ってはこうXに投稿した。
〈工作の実態が指摘されています。専門家による調査を検討しています。米大統領選挙でも指摘されましたが、民主政治への重大な犯罪行為かと〉
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)1973年生まれ。大手広告代理店勤務、『TV Bros.』編集者などを経て『NEWSポストセブン』立ち上げに携わる。近刊に『日本をダサくした「空気」 怒りと希望の日本人論』(徳間書店)。

