「今すぐ勝てる子」より、「5年後に伸びる子」を見たい
試合中に盛り上がるアジア甲子園に参加した球児たち「アジア甲子園」ではチーム別の試合以外に「オールスター戦」がある。日本人の助っ人も加えた、アジアの選抜同士の戦いである。この試合のメンバー選出については、柴田さんなりの強い想いがある。それは今すぐのスターづくりではなく、育成の時間軸に重きを置くということ。
「東南アジアの代表選手で、今すぐにプロに行ける子は正直いません。練習も基礎もまだこれからの子が多い。でも、13、14歳の子が5年くらいちゃんと練習してくれたら、プロに行ける子が出てくるんじゃないかと。そういった将来性ある選手を中心に選出していて、経験を積ませようと思っています。
この大会を通じて、みんなが見てた子が活躍する、日本に挑戦する、っていうことをやりたいです。だから将来性のある子をちゃんと見ておく。できれば日本の高校に行ってくれたり、本気で練習を積んでくれれば、5年以内にプロ選手が出るようにしたいです」
では、次の一歩をどうつくるのか。柴田さんが語ったのが、ショーケース(選考会)の構想だ。
大会で熱を生み、「プロ野球への可能性の接点」を置く。スカウトや日本の学校関係者が来やすい「一点」をつくることで、実現の機会につなげる。さらにその先に、アカデミー設立という順番も見据えている。
「夢を語る」のではなく、「夢に到達する順番を考える」。柴田さんの話は終始、地に足がついている。
「人を動かす」のは熱意だけじゃない
アジア甲子園は球児たちの夢や希望を与えるために企画に賛同した多くの大人たちが支えている「アジア甲子園」には、現役選手やレジェンドが関わる機会もある。実際、 NB.ACADEMYは海外での野球教室などを行っており、たとえば現ソフトバンクの山川穂高選手がタイ・バンコクで指導したイベントは、アジアでの野球振興と「第2回アジア甲子園」へ向けた取り組みの一環として実施されている。
では、どうやって多様な人を巻き込むのか。柴田さんはこう説明した。
「自分がプロ野球業界にいたことや、ビジネスパーソンでもあるというどちらの立場や気持ちも分かる人だと認めてくれていることが大きいと思います。仮に野球をやったことがないイベンターが有名選手にオファーを出すと壁もあるし仕事としか捉えられない。でも僕は野球界の将来を本気で良くしたいと思い、海外に移住して本気でやっている。そこが共感につながっているのかもしれません」
「当事者性」と「外の視点」。その両方を持っているからこそ、言葉が届く。さらに柴田さんが強調したのは、結局のところ「基本を守る」ことだった。
「常に感謝の気持ちを忘れないように。皆さんの協力がないとできないことなので。」
華やかなプロジェクトに見えて、支えているのは地味な誠実さだ。スポーツの世界も、ビジネスの世界も、人は最後に「信用」で動く。柴田さんの実感が滲む。
「夢があるなら『やりたいな』と思いながら何もしないよりは、やってから後悔したい」
「行動する人の言葉」には、説得力がある。アジア甲子園の現場が動いているのは、柴田さんがまず自分の人生を動かしてきたからだ。
