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「戦力流出でも勝てる理由」落合博満が証明した“配置と役割”の野球…打率最下位でも連覇した異次元マネジメント

「戦力流出でも勝てる理由」落合博満が証明した“配置と役割”の野球…打率最下位でも連覇した異次元マネジメント

主力が次々と去り、打線はリーグ最下位。それでも中日は勝ち続け、ついには連覇まで成し遂げた。なぜそんなことが可能だったのか――。そこにあったのは、落合博満が徹底した「配置」と「役割」のマネジメントだった。打てなくても勝てる。その異次元の勝利設計を、08年から11年の軌跡で読み解く。

「マネジメント術で読むプロ野球監督論」より一部を抜粋、編集してお届けする。

勝てる組織を維持するために

08年から09年にかけて中日は多くの選手を流失し弱体化したが、逆にいえば落合の采配とマネジメントが一層際立つ時期となった。

08年は福留の海外FA移籍の穴を埋めるために和田一浩を補強し、「完全優勝」を掲げてシーズンに挑んだ。序盤は吉見が頭角を現し、川上の離脱を埋めて完封を連発。

盤石な投手陣を背景に上位を追走したが、森野の離脱で打線が崩壊すると交流戦以降は失速。主力の五輪派遣も重なり、ついに落合政権初のBクラス転落の危機に直面した。

それでも山本昌が200勝を達成するなどベテランが奮起し、シーズン終盤の7連勝でAクラスを死守。役割の徹底によってなんとか体制を維持したが、シーズン通しての打線の弱さと先発陣の息切れは覆せなかった。

規定投球回到達者はゼロという異常事態。打線もリーグ最少得点と苦しみ、主砲ウッズは決定打を欠いた。CSでは2位阪神を突破するも、巨人の前に力尽きた。

09年にも川上、ウッズ、中村紀といった主力が退団し、大幅な戦力低下が予想された。先発を諦めさせるために開幕投手に浅尾を抜擢するなど大胆な起用でスタートするが、谷繁の離脱やブランコの不振に苦しみ、4月は負け越し。

しかし5月にブランコが適応すると打線は一変し、長打力を軸に得点力を回復させた。投手陣では吉見とチェンがともに防御率1点台でリーグを牽引し、川井雄太も開幕11連勝と大きく貢献。

岩瀬も救援の柱として安定感を保ち、浅尾がホールドで記録を打ち立てるなど、投手王国の看板を守った。「勝ちパターンの継投」と「固定された役割」を軸にシーズンを回し、交流戦後には首位争いに肉薄するまで浮上させた。

しかし、巨人との直接対決で勝ち切れなかったことが最後まで響いた。勝負どころでの3連敗や終盤の失速で、最終的に首位と12ゲーム差の2位。CSではヤクルトを退けたものの、巨人に1勝3敗と完敗した。

とはいえ、ブランコが本塁打・打点の二冠、吉見が最多勝、チェンが最優秀防御率、岩瀬が最優秀救援投手と、個々の役割が確立されたことは成果だった。

この時期の落合のマネジメントは、主力離脱や戦力低下を前提に「役割を細分化し、全員が持ち場を全うする」ことを主眼としていた。ベテランには精神的支柱としての責任を託し、若手には舞台を与え、成長を促す。戦略的な継投、守備と走塁の徹底、そして役割を与えるマネジメントが落合中日を最後まで「勝てるチーム」として機能させ続けたのである。

「配置と役割」で勝率は計算できる

10年は井端の衰えを配慮し、春先に荒木―井端の二遊間をあえてコンバートした。序盤は噛み合わず6月に巨人へ8ゲーム差を許すが、落合は「役割の固定」と「最少失点に抑える」スタイルを徹底。

井端の不振を堂上直倫でカバーし、大島洋平の定着で外野守備と走塁の質を底上げ。ナゴヤドームでは勝率.750を記録し、広い球場の特性を最大化する〝守備先行・一点獲得〞へ舵を切った。

攻撃面はキャリアハイの成績を残した和田・森野を核として、出塁から進塁打でランナーを進め、長打で返すような形で「量より効率」を徹底。リーグ5位の打率・本塁打・得点でも、要所の1点を拾う勝ち筋を日常化した。

投手運用はより明快だ。先発は吉見とチェンを軸に、中田、山井、山本昌の相性と球場を掛け合わせて配置。勝ちパターンは髙橋聡文、浅尾、岩瀬で固定し、平井正史、鈴木義広、小林正人がリリーフ陣の厚みを担保。

セットアッパーの価値が最も活きる戦い方をした結果、浅尾は中継ぎで12勝。巨人が山口を先発転向させて継投の背骨を失う一方、中日は〝8回の浅尾、9回の岩瀬〞を崩さず、打高の年にチーム防御率は唯一の3点台前半でリーグ1位を記録。

7月にはNPB新記録となる5試合連続完封を記録する盤石さを見せた。浅尾はシーズン59ホールドポイント、25試合連続ホールドポイントのNPB記録を樹立した。

夏場以降は強力打線を擁した巨人、阪神を直接対決で上回り、9月に首位へ。接戦時の勝率で上回って最終盤の同率首位から抜け出し、まさに「1点」と「1勝」を取り切る野球で僅差のレースを制した。

CSでも落合のプランは揺るがない。お得意のナゴヤドームで巨人打線の長所である引っ張り長打を外し、相手の得点期待値を抑制して制圧。

日本シリーズでは、吉見の不調に対し、チェンを軸にやりくりし、延長戦を複数拾いにいく短期決戦仕様へ。第2戦は初球攻撃と一巡目集中で先発を崩す〝ショートラリー〞、第4戦は継投勝負での延長11回勝ち切りと、プラン自体は機能した。

しかし第6・7戦は浅尾の同点・決勝被打を含むリリーフ疲弊、先発の再現性不足を露呈し、ロッテの上位から下位が切れ目のない打線に押し切られて敗れた。データ面でも被打率、防御率で後手に回った。

この年の中日は06年などと比べると強力ではなかったが、だからこそ落合の「らしさ」が色濃く見られたといえる。

守備力と球場の特性を活かした失点の最小化、勝ちパターンの固定、セットアッパーの価値を最大化した勝ち試合の勝率向上、進塁と1点生産の徹底。これらが噛み合い、追う立場からの逆転優勝を現実にした。派手な補強がなくとも「配置と役割」で勝率を計算できる、それが落合野球の真髄である。

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