現地時間3月31日に行なわれたダラス・マーベリックス対ミルウォーキー・バックスの一戦で、アデトクンボ兄弟の末っ子がNBAデビューを果たした。
118-92と、バックスが26点リードでほぼ勝利を手中にしていた最終クォーター残り2分48秒、アレックス・アデトクンボは静かにコートに登場。
残り2分1秒に相手のファウルを誘ってフリースローラインに立つと、2本目を決めて記念すべきNBA初得点をマークした。
この日はメンバー外で、私服姿でベンチに座っていたヤニスとタナシスの2人の兄は、その瞬間、同時に立ち上がって弟を祝福。アレックスはその後もフリースロー2本を沈めて、デビュー戦を3得点で終えた。
1992年生まれのタナシス(2014年2巡目51位ニューヨーク・ニックス)、94年生まれのヤニス(13年1巡目15位バックス)、97年生まれのコスタス(18年2巡目60位フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)と、3人の兄たちはいずれもドラフトで指名を受けた。コスタスは20年にロサンゼルス・レイカーズで、そしてタナシスとヤニスは21年にバックスで優勝を経験している。
一方、2001年生まれのアレックスは、ヤニスがバックスでデビューした年、12歳でミルウォーキーに移り住んだ。
現地のハイスクールを卒業後はカレッジ進学ではなく、欧州のプロクラブでプレーすることを選択。スペインリーグのムルシアでデビューし、翌21年のドラフトにエントリーしたが指名漏れに終わっている。
その後はトロント・ラプターズの下部組織であるラプターズ905や、バックス傘下のウィスコンシン・ハードで短い期間プレーするもなかなか芽が出ず、欧州に戻ってリトアニアやモンテネグロ、さらには生まれ故郷ギリシャのリーグを転々とした。
そうした経験を経ているだけに、昨年10月にバックスと2WAY契約にこぎつけ、ようやくNBAのコートに立った喜びは格別だった。
「ついに夢が叶った。サブで出場するだけでも、周りを見渡してしまうような感じだったよ。ミルウォーキーで育った僕にとっては、本当にクレイジーな出来事だ。これまでバックスの試合は数えきれないほど観てきた。そのジャージーに袖を通すことができたのは本当にアメージングだ」
前日から出場の可能性を告げられていたアレックスは、緊張しながら出番を待っていたというが、兄ヤニスも緊張のあまり手に汗をかいていたと、ドック・リバースHC(ヘッドコーチ)が試合後の会見で明かした。
一方のタナシスは、「リラックスして、深呼吸して。これまでたくさん努力してきたんだから大丈夫だ。きっと良いプレーができる」と声をかけ、弟を落ち着かせていたそうだ。「サイドラインに彼らがいるのを見て、何をすればいいか指示してくれたりした。こういう瞬間を、僕はずっと夢見ていたんだ。それを実際に、たとえ1日でも体験できたことは、本当に素晴らしいことだよ」
試合終了のブザーが鳴ると、コートサイドにいたヤニスは矢のようなスピードでゲームボールを腕の下に抱え込んだ。この記念すべきデビュー戦のボールを弟のために確保することを、ヤニスはこの日のミッションに掲げていたという。
元サッカー選手で、現在は音楽活動をしている長男のフランシスも頻繁に応援に駆けつけるなど、アデトクンボ兄弟の仲の良さは有名だ。
末っ子のアレックスがハイスクールの選手になった頃、ヤニスはすでにバックスのエースとしてリーグのスター選手になっていたが、時間があれば彼の試合を見に行き、練習にも付き合った。プレーが気に入らなければ、試合後に体育館へと直行し、翌日に試合が控えている時でも深夜まで特訓することもあったという。
そんな弟が晴れてデビューを飾り、兄弟から4人目のNBA選手が誕生したのを見てヤニスは、「これでもう引退できる。やり切ったよ」とジョーク混じりに感動を表現していた。
ヤニス以外の3人はベンチプレーヤーであり、コスタスは現在は欧州でプレーしているが、デビューすることさえ難しいNBAに、一家から4人の選手を輩出したことは偉業と言っていい。兄弟3人が同時に同じチームに所属するのは、NBA史上初の快挙だ。
2019年12月、インディアナ・ペイサーズ対ニューオリンズ・ペリカンズ戦でホリデー3兄弟が同時にコートに立ったことがあったが、アーロンとジャスティンはペイサーズ、ドリューはペリカンズと、それぞれ敵として対峙していた。
アレックスは翌4月1日のヒューストン・ロケッツ戦にも約4分間出場した。
今季Gリーグでは、平均18分のプレータイムで4.2点、2.7リバウンド、1.2アシストと目覚ましい数字をあげているとは言い難いが、まだ24歳。NBAの空気を体験したことを刺激にここからさらに成長していくことを、兄たちも大いに期待していることだろう。
文●小川由紀子
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