西洋の鎧を着込み、斧や剣で全力で打ち合い、パンチやキック、投げ技まで繰り出すフルコンタクト競技「アーマードバトル」をご存知だろうか。甲冑がぶつかり合う金属音がとにかく激しいのが特徴で、観る人を「今の時代、ここまでやっていいのか?」と震え上がらせる。14〜15世紀ヨーロッパの戦いを忠実に再現した知る人ぞ知る競技だ。
そんなアーマードバトルの魅力を、東京・目白にあるアーマードバトル・スクール『キャッスル・ティンタジェル』を運営するジェイ・ノイズさんとアーマードバトル歴9年のMさん、国際大会への出場経験のある加川聖香さんに聞いた。
大きな斧で頭パッカーン‼︎
——競技の基本ルールを教えてもらえますか。
ジェイ・ノイズさん(以下ジェイ) 試合でのルールは「アーマー・アズ・ウォーン」と言います。攻撃のターゲットは対戦相手が実際に着用している鎧に基づきます。ターゲットへの攻撃が合計6ポイントになる、または鎧のない部分(弱点)への「クリティカルヒット」(寸止めの一撃)が入るまで戦うというルールです。剣や斧などさまざまな武器を使いますが、殴る、押す、倒すといった行為もOKです。
——限りなく「何でもあり」なルールってことですね。Mさんと加川さんはなぜ社会人になって過激なこのスポーツを始めたのでしょう?
Mさん(以下M) 質問の前提をひっくり返してしまいますけど「安全」だからです。僕はスポーツも格闘技も無縁の人間ですが、映画『ロード・オブ・ザ・リング』のようなファンタジーや騎士文化が好きで。
甲冑体験ができると聞いてこのスクールに来たのですが、ジェイさんに大きな斧で頭をパッカーン!! って殴られまして(笑)。衝撃はありましたが、鎧をつけているとびっくりするくらい痛くなかったんです。それに感動して、これなら自分もできると思い、始めました。
加川聖香さん(以下加川) 私は幼少期に空手と柔道の経験がありまして。社会人になって体を動かしたいと思い、いろいろ探したのですが、仕事が不定期なので一般的な武道教室の固定スケジュールでは通いづらい。
でもここは家から近く、毎日オープンしていて通い放題のシステムだったので見学に来ました。そしたらちょうど両手剣(両手で扱う大きな剣)の試合をやっていて、その戦い方がすごくカッコいいなと。洗練された技術の体系があると知り、すぐに入会を決めました。
死んでいない間は戦い続ける
——スクールでの練習を拝見しました。男女混合で容赦なく打ち合っていましたが、国際会では男女別ではないのですか?
加川 別です。私は女性なので戦う相手は女性ですが、海外の選手はゴツくてガタイもいいので男性と変わらない(笑)。あんな大柄な選手に取っ組み合い(レスリング)に持ち込まれたら負けてしまうので、試合中はとにかく相手を近づけさせないことを最優先にしています。常に考えながら動き続け、安全な距離を保ち、隙を突いて攻撃するという、小さい体格ならではのアドバンテージを活かしています。
M しかも加川さんは一撃一撃が速くて綺麗なんです。相手の防御が空いているところを連打で叩く技が得意で、相手が1をカウントする前に5回くらい叩いています。
ジェイ 加川さんは試合をゲームではなく実戦のつもりで戦う感覚とスタミナが強み。スクールでも「死んでいない間は戦い続けること」という指導をしていますが、彼女はその意識を持っているんですよ。
加川 ゲームとはいえ戦いですからね。実戦ならあきらめた時点で殺されて終わっちゃうって気持ちは持っていますよ。
——試合や練習中に「今、死んだ!」と思うことはあります?
加川 いいヒットを受けると「やられた! 死んだ!」ってなったりします。逆にかすっただけだと、自分の中で「いや、今のは死んでない」って負けを認めない(笑)。
M 最初の話に戻っちゃいますけど、そうやってリアルな戦争ならとっくに死んでいるくらいフルパワーでやり合っても痛くないとこがこのスポーツの良さです。
加川 そもそもアーマードバトルは歴史的な慣行として、騎士達の訓練のためにやっていたものなんです。要は「軍事訓練」ですから、ケガをさせたり、死なせないように考えられた競技なんですよ。
——楽しいと感じるのはどんな瞬間ですか?
加川 周りから「スカッとしますか」ってよく聞かれますけど、ストレス発散の目的はないかも。やはり最初にハマったロングソード(両手で扱う大きな剣)の技を実戦の中で試したとき。思い通りに出せた瞬間が一番気持ちいいです。
M 僕も技が上達して強くなったと感じられたときは楽しい。以前、家にゴキブリが出たとき柄の長い床用粘着テープを槍のように使って、一撃で倒したことがあって。初めて実生活でも技が活用できてうれしかったです(笑)。

