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「体育の時間、だからブルマを履くのがイヤだった」世の“当たり前”を揺さぶってきた直木賞作家が綴る、時代の欲望と心理

「体育の時間、だからブルマを履くのがイヤだった」世の“当たり前”を揺さぶってきた直木賞作家が綴る、時代の欲望と心理

本に出てくる映像作品のタイトルは170以上。しかし「あなたの見たことのある映画は、たぶん、出てきません」と、著者の姫野カオルコさんは言う。『うわべの名画座 顔から見直す13章』(ホーム社)は、<名画座>と題するとおり映画エッセイであるが、いわゆる<映画評>とは読み心地が異なる。著者が綴るのは映画の内容というより、映像作品の<うわべ=顔>が浮き彫りにする時代や社会の価値観、人々の欲望や心理であるからだ。たとえば、『エマニエル夫人』は衝撃的と「誤解されて」いると姫野さんは書く。なぜ誤解されたのか。あるいはなぜ、少年漫画の「眉」は細くなったのか。なぜ、あのロボットの顔が気になるのか──。世の“当たり前”や“多数派”の価値観を揺さぶってきた姫野さんに、刊行を機に話を聞いた。

映画を「見ていない人が読んでください」

──『うわべの名画座』には170以上の映画が登場します。戦前の映画から、令和公開の映画まで、どのように選ばれましたか?

まず、お伝えしたい。あなたが見たことがある映画は、たぶん、一作も出てきません。出てきたとしても一作か二作。

次に、「映画について語り合いましょう」という本ではありません。映画や映画に登場する人物を「とっかかり」にして、時代の価値観の変化、いろいろな思いや考えを綴った随筆集です。

みなさんが知っている映画は出てこないけれども、「とっかかり」から綴った思いや考え、出来事は、きっとみなさんにとっても身に覚えのあることではないだろうか、という本だということをお伝えしたいです。そして「とっかかり」は映画だけではなく、漫画、アイボ、近年炎上したポスターなどが出てきます。

──映画好きの姫野さんは、この本に挙げられている以外にも、たくさんの映画を見てこられたと思います。その中から、あえて、古い映画や、あまり知られていない映画を「とっかかり」にしたわけでしょうか?

はい、あえて古い映画を中心に選んでいます。

たとえば、好きな異性をデートに誘ったとき、「会社の○○部長がね」とか、「学校の○○先生がね」といった、身の回りの人の話は避けたほうがいい、とモノの本に書いてありまして……。近くの人や事物ではなく、「今日は三日月だね」とか、「あっちに見えるのは○○山脈かな」とか、遠くの事物を話題にしたほうが、自分たちが近くにいることを感じやすい心理が働くのだと。

こうした心理に似ていて、もし、今話題になっている映画や、ここ数年の大ヒット映画を本に出すと、読者は「見た」「見てない」が気になってしまって、見ていない人は置いてきぼりになってしまいます。

反対に、昔の映画や遠くにある映画、あるいは、皆が忘れたモノなどを「とっかかり」にすると、「見た」「見ていない」から意識が離れて、読み手の側の体験や思いが呼び起されるだろうと。

ですから、この本に出てくる映画を「見ていない人が読んでください」と言いたいくらいです。見ている必要は全くないのです。いくつかの映像化作品の中から一位を決める「ひとり映画祭」の章も、これから見るガイドにしてもらえれば、と。

なぜ人は顔ではなく、雰囲気を見るのか

──「とっかかり」になっているのは、具体的には、映画などに出てくる<うわべ=顔>です。雰囲気ではなく「顔を見る」とはどういうことかが、この本の読みどころの一つです。

私に限らず、顔にはみなさん、興味があると思うんです。ただ、前作『顔面放談』に、誰と誰が似ている、という<発見>を書いたら、「えー、そうかなあ?」という否定的な意見ばかりでした。なぜそういう意見になるかというと、目の形、皮膚の質感、毛髪の固さといったパーツを、多くの人は見ていないからです。

髪型がロングかショートか、眼鏡をかけているか、スカートかパンツか……そんなことくらいしか見ていない。雰囲気すら見ていなくて、早い話、「髪型」と「眼鏡」しか見ていないことがよくわかりました。

腹立たしさはありますけど、そのことを何度もくどくど言っても仕方ないので、今回の本では「似ているかどうか」から離れて、映画や日常生活で目についた顔のフォルムから思い出したこと、考えたことを書いたほうが、読んでもらえると思ったのです。

──多くの人は「顔」を見ていないと、これまでも姫野さんはおっしゃっています。では、なぜ姫野さんは、顔を見ることができるのでしょうか?

絵を描いていたからでは? 顔の「かたち」を見る癖がついています。美大志望でしたが、下手だったので挫折しました。世の中の人全員が、デッサンから絵の勉強をするわけではないので、髪形や眼鏡や口紅の色が与えてくる雰囲気だけを見てしまうのだと思います。

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