ここ最近、まことしやかに囁かれている噂をご存じだろうか。
「今年6月、パソコンが突然、起動しなくなるらしい」
起動時に働くセキュリティー機能の「証明書」が期限切れを迎え、ある日を境にWindowsが立ち上がらなくなるというのだ。
思い出すのは世紀末の「2000年問題」である。あの時も「ATMが止まる」「飛行機が落ちる」と大騒ぎになり、世界中の企業と政府が数千億ドル規模の対策を打った結果、大事には至らなかった。
では今回も空騒ぎに終わるのか。結論から言えば、6月にPCが即死することはない。だが「何も起きない」と高をくくっていると、じわじわと痛い目に遭う。
問題の正体は「セキュアブート」である。PC起動時に不正なプログラムを弾くセキュリティー機能で、その証明書が2026年6月から10月にかけて順次、期限切れになる。
2011年に発行されて約15年。たとえるならば、PCというビルを守る警備員の身分証が失効するようなものだ。身分証が切れても警備員はビルに立ち続けるし、ビルは普通に使える。
ただし、新しい防犯カメラの設置や不審者リストの更新ができなくなる。建物は動くが、セキュリティーが日に日にザルになっていくというわけだ。
事実、Microsoftは「証明書が切れてもPCは正常に起動し、通常のWindows Updateもインストールされる」と公式に明言している。ただし同時に「ブートレベルのセキュリティー更新はいっさい受けられなくなる」とも言っており、これはPCの玄関口が無防備になるということだ。
近年、猛威を振るうブートキット型マルウェア「BlackLotus」のような脅威に対して、丸腰で立ち向かうことになる。即死はしないが、免疫不全には陥るのだ。
MicrosoftはWindows Update経由で、新しい証明書を自動配布する予定だ。ならば安心かといえば、そうでもない。2024年にはあのGoogleが、第2世代Chromecastの中間CA証明書を10年間にわたって更新し忘れ、端末が軒並み使用不能になる大失態を演じている。IT巨人の「自動でやるから大丈夫」は、酔っ払いの「終電には間に合う」程度の信頼度だと思っておいた方がいい。
今すぐできる対策はあるのか?「Windowsキー+R」から「ファイル名を指定…」
では、実際に危ないのは誰か。ズバリ、Windows Updateの通知が来るたびに「後で通知する」を押し続けてきた、ズボラな人たちである。さらにMicrosoftは「サポート切れのWindows 10以前のOSには新しい証明書を配布しない」と明言しており、昨年サポートが終了したWindows 10を使い続けている層は、完全に置き去りだ。
そこで今すぐできる方法を伝授しておく。キーボードの「Windowsキー+R」で「ファイル名を指定して実行」を開き、「msinfo32」と打ち込んでEnter。表示された画面で「セキュアブートの状態」が「有効」なら、ひとまずセキュアブート自体は機能している。ただしこれは「鍵が付いているか」の確認であって、「鍵が最新か」は別の話である点には注意されたい。
きちんとWindows Updateをかけていれば、6月にPCが動かなくなることはない。だが放置すればするほど、あなたのPCは玄関の鍵が壊れたまま住み続けている家と同じになる。
Dドライブの奥底に溜め込んだ、家族には絶対に見せられないコレクションごと丸裸にされたくなければ、すぐにでもUpdateを確認しておくことだ。
(ケン高田)

