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ブラックホールの残骸は「7次元の宇宙ハードディスク」になるとする新理論が発表

ブラックホールの残骸は「7次元の宇宙ハードディスク」になるとする新理論が発表

ブラックホールの残骸は「7次元の宇宙ハードディスク」になるとする新理論が発表
ブラックホールの残骸は「7次元の宇宙ハードディスク」になるとする新理論が発表 / Credit: Institute of Experimental Physics of the Slovak Academy of Sciences

スロバキア科学アカデミー実験物理研究所(SAS)などで行われた研究により、ブラックホールは蒸発を続けても最後に水素原子よりも軽い残骸のようなものが残り、そこにはブラックホールが吸い込んだ物体の膨大な情報が振動の形で保存される可能性を示しました。

しかもこの理論はブラックホールの情報問題だけでなく、「なぜ素粒子は重さを持つのか」という、まったく別の大問題やダークマターの問題にまで光を当てる可能性を秘めているというのです。

研究内容の詳細は2026年3月19日に学術誌『General Relativity and Gravitation』にて発表されました。

目次

  • 7次元のねじれがブラックホールの最後を止める
  • ダークマターもブラックホールの残骸に関係するのか?
  • ブラックホールと質量の起源がつなぐ理論
  • 科学を動かす大胆な統一になるか?

7次元のねじれがブラックホールの最後を止める

ブラックホールの残骸は「7次元の宇宙ハードディスク」になるとする新理論が発表
ブラックホールの残骸は「7次元の宇宙ハードディスク」になるとする新理論が発表 / Credit: Institute of Experimental Physics of the Slovak Academy of Sciences

アインシュタインの一般相対性理論では、重力は時空の「曲がり」として説明されます。

重い天体があると時空がへこみ、そのへこみに沿って星や光が動く、という考え方です。

今回の研究は、その一般相対論を少し拡張したアインシュタイン=カルタン理論を使っています。

この理論の面白いところは、時空が単に曲がるだけでなく、“ねじれる”ことも許す点です。

たとえば透明なゼリーを指で押すと、まず表面がへこみます。

これは、重力によって時空がゆがむイメージに少し近いでしょう。

けれど、もしゼリーの内部に見えない筋繊維のようなものがたくさん通っていると考えると、強く力がかかったときには、へこむだけでなく、その筋が力を受けて少しずつ向きを変えたり、ねじれたりする感じも想像できます。

この「へこみ」に加えて起こる、内部の向きのずれやひねれが、この理論でいう時空の“ねじれ”のイメージです。

少し抽象的に表現すれば、空間の中に潜む「ねじれのようなクセ」とも言えるでしょう。

今回の理論は、時空にもそうした「ねじれ」のような性質があるかもしれない、と考えるわけです。

このような「ねじれ」は普段はほとんど目立ちません。

空間がねじれている様子を肉眼で見ることもないでしょう。

しかしブラックホール内部のような極限状態では突然主役に躍り出る可能性も秘めています。

研究チームは、この“ねじれ”を含んだ特殊な7次元空間を使ってブラックホールを考えました。

すると、ブラックホールが極限まで縮み、プランクスケール級の超高密度に達したとき、このモデルではこのねじれが反発力のような働きを生み出すことが示されました。

これはとても重要です。

ホーキング放射でブラックホールがどんどん小さくなっていくとしても、最後の最後でこの反発効果が効けば、ブラックホールはゼロまで消え切らずに済みます。

つまり、完全に蒸発するのではなく、極小の安定した“残骸”が残るのです。

論文では、その残骸の質量は約9×10⁻⁴¹キログラムと見積もられています。

数字だけ見ると途方もなく小さく水素原子のさらに何十億分の一以下ですが、研究ではこの残骸が持つ「その残骸ならではの振動パターン」に情報が宿っている可能性が提案されています。

研究チームは、ブラックホールが残した極小の残骸にも、ねじれ場に由来する固有の“鳴り方”があると考えました。

そして、ブラックホールに落ちた物質の情報は、この残骸内部の長寿命の振動パターンの中に符号化されて閉じ込められると提案しています。

鐘を叩くと、その鐘特有の響き方をします。

ギターの弦にも、太鼓の膜にも、それぞれ固有の振動があります。

形や材質が違えば、振動のパターンも違う。 ブラックホールが蒸発しきって最後に残る残骸にも同じことが言えます。

そのブラックホールが飲み込んだ物質の「個性」が、残骸固有の振動パターン(準固有振動)として非常に長期間(ほぼ永遠)に刻み込まれているというのです。

コラム:ブラックホールと情報のパラドックス

ブラックホールは、何でも飲み込んで終わり――そんなイメージがあります。でも現代物理学では、話はそう単純ではありません。車椅子の天才物理学者として知られるスティーブン・ホーキングは1970年代「ブラックホールは、実はじわじわと光や熱を放出しながら縮んでいき、やがて完全に消えてなくなる」という衝撃的な発見をしました。なんでも飲み込んでいって、最後には消えてしまうわけです。ところが、ここで大問題が起きました。物理学の基本ルールに「情報は宇宙から消えない」というものがあります。本が燃えても、煙や灰の動き方を完璧に計算できれば、理論的にはもとの文章を再現できる——というイメージです。情報は形を変えても、宇宙のどこかに必ず残るはずなのです。でも、ブラックホールが完全に消えてしまったら?その中に飲み込まれた星も、ガスも、情報も、すべて跡形もなく消える。これは「情報は消えない」というルールと正面からぶつかります。この謎は「ブラックホール情報パラドックス」と呼ばれ、物理学の最大の未解決問題のひとつとして長年放置されてきました。

論文ではさらに、その保存容量まで計算しています。

たとえば太陽質量程度のブラックホールの場合、その残骸は約1.515×10⁷⁷量子ビットもの情報を保存できると見積もられました。

これはまさに天文学的な数字です。

「そんな小さな欠片に全部の情報が入るわけがない」と思いたくなりますが、研究チームはこの数字を数学的に丁寧に導き出し、「十分に入る」と答えているのです。

ある意味で、ブラックホールは情報を食べて終わりにするのではなく、最後には究極の「宇宙ハードディスク」のようなものになるのかもしれません。

ではブラックホールが最後に消えずに、小さな残骸を残すとしたら、その小さな残骸は宇宙でどのような役割を果たすのでしょうか。

ダークマターもブラックホールの残骸に関係するのか?

ブラックホールの残骸は「7次元の宇宙ハードディスク」になるとする新理論が発表
ブラックホールの残骸は「7次元の宇宙ハードディスク」になるとする新理論が発表 / Credit: Institute of Experimental Physics of the Slovak Academy of Sciences

ブラックホールが最後に消えずに、小さな残骸を残すとしたらどんな影響があるのでしょうか。

ここで興味深いのが「ダークマター(暗黒物質)」との関係です。

私たちが知っている宇宙の中で、目に見える星やガスなどの物質が占める割合はほんの数パーセントに過ぎません。

実際の宇宙には、私たちが目で見ることができず、望遠鏡でも観測できない謎の物質がたくさん存在します。

これを天文学者たちは「ダークマター」と呼びます。

今回の理論では、余剰次元に由来する新しい粒子が、ダークマターに関わる可能性も議論されています。

もし、ブラックホールが蒸発の最終段階で消えずに極端に小さい残骸が残るなら、それは安定で、非常に寿命が長く、目に見える光や電磁波を放つこともないでしょう。

そうした物質は、通常の観測手段では決して見ることができません。

しかし、重力的には確かに存在を示すことができます。

この論文で議論されている残骸の質量は、非常に小さいものであると推定されていますが、もし宇宙の歴史の中で大量に生成されて宇宙全体にばら撒かれたなら、それらが集まってかなりの量の質量を持ち、宇宙の重力的な挙動を左右することも考えられます。

まさに「見えないが重さはある」というダークマターの条件を満たす可能性があるのです。

研究チームはこのような極小の長寿命残骸を「プランクの遺物(Planck relics)」と名付けました。

「プランク」とは物理学における最も小さなスケール——重力と量子力学が両方効いてくる究極の限界——を意味するスケールで、この残骸がまさにそのサイズに近いことに由来します。

ですが研究ではさらに意外な結果も得られました。

それは素粒子の「質量の起源」とブラックホールの関係です。

配信元: ナゾロジー

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