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ほぼ全てが貝塚で覆われた3000平方メートルの島を発見

ほぼ全てが貝塚で覆われた3000平方メートルの島を発見

ほぼ全てが貝塚で覆われた3000平方メートルの島を発見
ほぼ全てが貝塚で覆われた3000平方メートルの島を発見 / Credit:Canva

フィジーのバヌアレブ島北岸沖に、一見なんでもない小島が浮かんでいます。

マングローブに囲まれ、満潮になっても水面から頭を出すその島は、面積わずか3000平方メートルです。

しかしその正体は、驚くほど風変わりなものでした——島を作っているのは、土でも岩でもなく、貝殻だったのです。

オーストラリアのサンシャインコースト大学( USC )やフィジーの南太平洋大学などの研究チームによる調査の結果、この島の表層を覆う堆積物の70〜90%が貝殻で占められていることが明らかになりました。

研究チームはこの島を、人びとが長い年月にわたり貝を食べ、殻を捨て続けた結果として生まれた「貝塚島」である可能性が高いとみています。

詳細は2026年3月15日、学術誌『Geoarchaeology』に掲載されました。

目次

  • 地表だけでなく地下も貝殻が含まれている
  • なぜこんなに多くの貝があるのか?

地表だけでなく地下も貝殻が含まれている

地表だけでなく地下も貝殻が含まれている
地表だけでなく地下も貝殻が含まれている / Credit:Canva

この島が最初に記録されたのは2017年のことです。

バヌアレブ島北岸を対象とした地球考古学調査の最中に、研究者2名が沿岸の小さな突起に気づきました。

クラサワニという、ごく人口の少ない地域の沖合でした。

当初は本土が少し張り出しているように見えましたが、2024年の本格調査で、実際にはマングローブ林に四方を囲まれた独立した島であることが確認されました。

しかしこの島の表面を観察すると、すぐに異変に気がつきました。

どこを見ても、貝殻だらけです。

さらに手がかりになったのが、島に掘られた無数のカニの巣穴でした。

この地域に生息するワタリガニ(Scylla serrata)は、地下30〜50センチもの深さから土を地表に掻き出して穴を掘る習性があります。

そのカニが地表に積み上げた土にも、大量の貝殻が含まれていました。

表面だけではなく、島の中身まで貝殻で満たされていることを示す、最初の証拠でした。

ただ、この段階では、それが人間活動でできたのか、それとも津波のような大きな波で運ばれた自然堆積なのかは、まだはっきりしていませんでした。

この地域の沖合には地震活動の活発な断層帯があり、バヌアレブ島北岸は過去に津波の影響を受けた可能性もあったからです。

そこで研究チームは2024年に2回に分けて本格的な現地調査を実施しました。

20か所でハンドオーガー(2.5センチ径のコアサンプラー)を使って掘り進め、さらに1メートル×1メートルの試掘坑を4か所に設けました。

その結果、表面を覆う堆積層の厚さは20〜40センチでその層の70〜90%が貝殻で構成されていたことがわかったのです。

また採取された貝殻に対して放射性炭素年代測定でどれくらい古いものかを調べたところ、中央値が約1190暦年前(西暦760年ごろ)で、幅は1530〜910暦年前(西暦420〜1040年ごろ)の範囲に収まっていました。

「年代がばらけずひとかたまりに集中している」という事実は、この堆積物が長い地質時代をかけてランダムに積もったものではなく、比較的短い期間に集中して形成されたことを示唆します。

加えて、島の中からは小さな無文土器の破片が発見されました。

地表だけでなく、試掘坑の地中からも出土しており、貝殻の堆積と同じ時代の人間活動に結びついている可能性が高いです。

さらに出てくる貝がすべて食用種だったことも重要です。

発見された貝はアナダラ・アンティクァータ、ガフラリウム・ツミドゥム、コダキア・ティゲリナなどの二枚貝と、トロコス・ニロティクス、ターボ属などの巻貝で、すべて食用として知られる種です。

もし津波が海底を無差別に削り取って運んできたなら、食用でない種や深海性の貝も混ざるはずですが、それが一切見当たりませんでした。

また津波堆積物であれば、島の外側まで広がり、海岸から遠ざかるにつれて薄くなるパターンを示すはずです。

しかし調査では、貝殻層は現在の島の範囲にほぼ収まっており、そのような漸減は観察されませんでした。

これら結果は、この島の貝殻は人間の活動によって蓄積された可能性が濃厚であることを示しています。

しかしそうだとしても、なぜ「貝の島」となるまで人類はこの場所で貝を扱い続けたのでしょうか?

なぜこんなに多くの貝があるのか?

なぜこんなに多くの貝があるのか?
なぜこんなに多くの貝があるのか? / Credit: Geoarchaeology (2026). DOI: 10.1002/gea.70052

この島がなぜ生まれたのか。

まず前提として、この場所は貝を集めるのに非常に向いた環境でした。

島はバヌアレブ島の北岸、川の河口近くにあり、周囲には浅い海や干潟が広がっていたと考えられます。

実際に見つかった貝も、遠くの深い海まで行かなくても採れる浅海性のものが中心でした。

つまりここは、古代の人びとにとって「貝をたくさん確保しやすい場所」だったのです。

では、その貝はこの場所でどのように扱われていたのでしょうか。

論文が有力な説明の一つとして示しているのは、ここが貝を処理するための場所だったという考えです。

というのも、この島で目立って見つかるのは大量の食用貝殻と土器の破片であり、ふつうの居住地ならもっと出てきてもよさそうな魚の骨や石器は少なくとも今回の調査ではほとんど確認されていません。

こうした偏りを見ると、ここは暮らしのすべてをまかなう村そのものではなく、貝を大量に開いて中身を取り出すことに特化した場所だった可能性が高くなります。

人びとはここで貝を採ってきて開き、身だけを土器などに入れて別の居住地へ運び、殻はその場に捨て続けたのかもしれません。

もちろん一日や一年で島ができたわけではありませんが、何世代にもわたって「貝を採る、ここで開く、中身を運ぶ、殻を捨てる」という行動が繰り返されれば、殻だけが同じ場所に大量にたまり続けることになります。

最初はただの捨て場だったとしても、長い時間の中では、それがしだいに厚みを持った堆積層へと変わっていきます。

また論文では、この場所を単なる加工場としてだけでなく、その上や周辺に高床式の生活空間があった可能性にも触れています。

西太平洋では、昔の人びとが浅い海や干潟の上に木の台を組み、その上で暮らしたり作業したりした例が知られています。

もしクラサワニでも似たようなことが起きていたなら、人びとは水際の上に生活や作業の場を持ち、その足元に貝殻が少しずつ落ちてたまっていったことになります。

そうなると、地面の上に人がいたというより、人の生活の下で新しい地面が育っていった、と考えた方が分かりやすいかもしれません。

そして、この貝殻の堆積が本当に「島」になっていくためには、もうひとつ重要な条件が必要です。

それが海面の変化です。

論文によると、この時代のフィジーでは現在より海面がやや高く、その後相対的にゆっくり低下していった可能性があります。

つまり長い年月をかけて、貝殻は積もり続けて島の「高さ」が増す一方で、海面が下がり続けたわけです。

研究者たちは、この2つの現象が重なった結果、貝殻で覆われた「貝塚の島」が誕生したと考えています。

もしこの解釈が正しければ、クラサワニの小島はパプアニューギニアのビスマーク諸島以東の熱帯太平洋で初めて記録された「貝塚島」となります。

貝塚が島そのものになった例は、これまでパプアニューギニアのラピタ遺跡(タレパケマライ、エタコサライ、エタパケンガロアサ)や、ソロモン諸島のラングアランガ潟などで報告されていますが、南太平洋の東側ではこれが初事例です。

参考文献

Scientists discover a 1,200-year-old Fijian island likely built from discarded shellfish remains
https://phys.org/news/2026-04-scientists-year-fijian-island-built.html

元論文

Shell‐Dense Island Off Culasawani, Vanua Levu Island, Fiji: Midden or Muddle?
https://doi.org/10.1002/gea.70052

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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