F1シンガポールGPのフロントロウは、メルセデスのジョージ・ラッセルとレッドブルのマックス・フェルスタッペンが占めた。一方で今季のチャンピオンシップをリードするマクラーレン勢は、2戦続けてフロントロウを逃した。ポールを逃したのは3戦連続だ。
マクラーレンは今回オスカー・ピアストリとランド・ノリスのふたりで13ポイントを獲得すれば、ライバルの結果に関わらず今季のコンストラクターズタイトルを確定させられる状況にある。しかしシーズン序盤に見せた圧倒的な速さが影を潜めているのは気になるところだ。
ピアストリとノリスはイタリアGPで、レッドブルのフェルスタッペンに完敗。続くアゼルバイジャンGPではピアストリがクラッシュアウト、ノリスは7位に終わり今回のシンガポールGPを迎えた。
今回マクラーレンを脅かしているのはレッドブルだけではない。メルセデス勢もラッセルがポールを獲得しただけでなく、3番手ピアストリの後ろ4番手にルーキーのアンドレア・キミ・アントネッリが食い込み、5番手ノリスのタイムを上回った。
ちなみに昨年のシンガポールGPでは、ノリスがフェルスタッペンに20秒差をつけて完勝している。それらを踏まえると、マクラーレンのここ最近の苦戦はコース特有のものではなく、全体的に懸念すべき兆候が見られているのではないかという疑問も生じる。
マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは、このことについて次のように分析する。
「一定のパターンが見えてきた。ブレーキングポイントにバンプや縁石が多いサーキット、カナダやバクーでは、我々はベストなマシンではなかった。シンガポールでも最速ではなかった」
「これは全くの驚きではない。我々がどのような方向性でマシンを開発してきたかは分かっているからだ。一般的に我々は中速コーナーでタイムを稼いでいるが、(シンガポールのようなコースでは)どこも中速の区間が短い。ここはブレーキングとトラクションの要素が大半を占めていて、バンプと縁石が多い条件では我々は少し苦しい」
「週末を通じてメルセデスが非常に競争力のある走りをしていて、それはマックスも同様だ。一方で我々のドライバーはカナダやバクーの時と同じようなコメントをしている。つまりシンプルに我々が一番速いという状況にないのだ」
マクラーレンの強みは高温のコンディションでタイヤを持たせられることにあるが、ハイスピードコーナーの少ないシンガポールでは効果が薄い。さらに、ノリスが今季前半に訴えていたフロントグリップ不足が再び顔をのぞかせているようだ。
ステラは、マクラーレンが2025年仕様のピレリタイヤとストップ&ゴーの市街地サーキットという組み合わせに十分適応できていない可能性を指摘する。
「昨年から今年にかけてのタイヤ変更が、少なからず影響しているようだ」とステラは言う。
「昨年、ドライバーたちはシンガポールでとても走りやすいと言っていたが、今年はフロントタイヤの挙動、特にソフトタイヤでの挙動に不満を口にしている」
ただ、マクラーレンが成績を落としているのはコース特性だけが原因ではない。ステラはマクラーレンが早い段階で今季マシンの開発を打ち切り、2026年のマシンにリソースを集中していることも要因だと認める。
車両レギュレーションが大きく変わる2026年のマシンにリソースを集中させているのはマクラーレンに限った話ではないが、それでもメルセデスはシンガポールに改良版のフロントウイングを持ち込んでいる。レッドブルも、今季バージョンのフロアとフロントウイングからさらなるパフォーマンスを引き出そうとしている。
「我々は2026年に完全に集中していたため、かなり前から(今季マシン用)開発を止めているということがある」
「モンツァに小さなパーツを持ち込んだが、それ以外はずっと2026年に集中してきた。一方でライバルが新たなアップグレードをしてきたのも目にしている。レッドブルはまさにそのひとつだ」
「我々はモンツァやバクーのように、バンプと縁石が多い中でブレーキングを多用するコース、ダウンフォースレベルの低いコースでのパターンを認識する必要がある」
さて、マクラーレンは復活を遂げることはできるのだろうか? そしてもし復活できるならそれはいつなのか? ステラは今季残りのレースの展望を次のように語った。
「(アメリカGPが行なわれる)オースティンは依然苦戦するだろう。多くのブレーキングポイントがタイトなコーナーになっているからだ。我々の得意コースはブラジル、カタール、アブダビといったところだ」
「シーズン序盤、もう少し優位性があった頃は、多少不得手なサーキットでも対応できていた。しかし今は戦いが激化している。レッドブルはダウンフォースの大きいシンガポールのようなところでの問題を克服したようで、非常に完成度が高い。彼らが上位争いに戻ってきたのも不思議ではない」
「厳しい戦いになることは認めざるを得ない。我々の戦いはそういうものだからだ」

