助命嘆願が殺到した、堺雅人演じる山南の切腹シーン
視聴者から「助命嘆願」の電話がNHKに殺到したのは、第33回「友の死」でした。近藤たちとは剣術道場「試衛館」以来の仲間だった山南敬助(堺雅人)が切腹を遂げる回です。
芹沢の暗殺を土方と共謀した山南でしたが、新選組が組織化され、有名になっていくにつれ、次第に隊のなかでの居場所を失っていきます。温厚な性格の山南と、隊の規則の厳格化を図っていた土方とは考え方が合わなくなっていたのです。
山南は無断で京都を出て、恋人の明里(鈴木砂羽)と江戸を目指します。隊から勝手に離れれば「脱走」と見なされ、「切腹」を命じられることを知った上での行動でした。すでに死を覚悟していた山南は、追ってきた沖田に簡単に見つけられます。
山南が切腹せずに済むよう、付き合いの長い原田左之助(山本太郎)や永倉新八(山口智充)らは宿舎から逃がそうとしますが、山南は笑顔でこれを断ります。切腹の介錯は、やはり沖田が務めることになります。
気の合う仲間同士で作ったサークルでも、次第に組織が大きくなっていくと、そこからはみ出してしまう仲間が生じてしまうのは、多くの人が経験していることでしょう。山南を演じた堺雅人さんも、脚本を書いた三谷幸喜氏も学生演劇出身です。演劇の世界を去っていった仲間のことを想いながら、山南を演じていたのかもしれません。
若者たちが歴史を動かした特別な時代
全49話にわたって、近藤たちの波乱に満ちた生涯を描いた『新選組!』は好評を博し、土方が五稜郭の戦いに挑む後日談を描いた山本耕史主演ドラマ『新選組!! 土方歳三最期の一日』が2006年1月に放映されています。NHK大河ドラマ初のスピンオフ作品でした。
山南役を好演した堺雅人さんは、2008年には大河ドラマ『篤姫』で徳川家定を演じ、さらに2016年には三谷幸喜氏の脚本による大河ドラマ『真田丸』に真田信繁役で主演をはたしています。メインキャストで一番の出世頭でしょう。
他にも口数の少ない隊士・斎藤一をオダギリジョーさん、新選組とは敵対する関係だった坂本龍馬を江口洋介さんが演じるなど、その後も大いに活躍を続けている若手キャストが多かったことも印象に残っています。
かつては「人斬り集団」と見なされていた新選組ですが、『新選組!』がきっかけでイメージが大きく変わりました。先のことがまったく読めない幕末において、近藤たちは自分らが信じる道を突き進み、わずかな期間ながら名を挙げ、そして次々と命を失っていくことになります。『新選組!』は、地位や家柄に関係なく若者たちが歴史を動かした特別な時代の、鮮烈な青春ドラマだったと言えそうです。
