
『ウルトラセブン Blu-ray BOX 1』(バンダイビジュアル)
【画像】え、「隊員服を脱いだ私」…? これが『ウルトラセブン』アンヌ隊員の大胆な姿です(3枚)
「ウルトラセブン」と名付けるシーンは撮られていたが…?
いま改めて『ウルトラセブン』第1話を見てみると、これから物語が続くうえで大事なポイントが抜けていることに気付くはずです。それは、凶悪な宇宙人を倒してくれた「赤い巨大ヒーロー」の名前を呼ぶシーンがないことです。
『ウルトラマン』の第1話では、最後のほうでハヤタ隊員の「そうだな、ウルトラマンてのはどうだい?」というセリフで、作中で初めて名前が出てきました。特撮ドラマでは、ヒーローが自ら名乗ったり、誰かが名付けたりして周囲が初めて認識するというのが普通です。『ウルトラセブン』は、いわば番組名だけがひとり歩きした状態でスタートしたともいえます。
では、「セブン」の命名シーンは脚本になかったのでしょうか。実は、第1話のシナリオにしっかり書かれており、撮影もされたそうです。しかし、なぜか編集でカットとなり、名前が明かされるシーンは放送されませんでした。
問題のシーンは、1話のラストにあたる地球防衛軍作戦室でのやりとりでした。主人公「モロボシ・ダン」がウルトラ警備隊に新しく入隊すると紹介された後、脚本はこう続いていました。
* * *
キリヤマ「6名の隊員(※ダンのこと)が誕生したわけか、いや、ひょっとしたら7人目の隊員も誕生したかも知れん」
アマギ「ピンチを救ってくれた幻のヒーローですね」
キリヤマ「うん、7人目の幻のヒーローだからな、ウルトラセブンとでも呼ぶか」
フルハシ「いい、最高にいい名前ですよ!」
* * *
さらに、ダンのモノローグシーンが続き、
「今日から、ウルトラ警備隊のモロボシ・ダンとして地球防衛のために働くのだ。僕が宇宙人だということは絶対の秘密だ。それが我々M78星雲人の掟だ。宇宙人である僕が地球のために働く喜び、それはキリヤマ、フルハシ、アマギ、ソガ、アンヌという新しい友達を得たことで十分満たされるであろう。いかなる妨害があろうとも、この美しい星を守り抜くことを誓う」
……という決意が語られ、第1話が終わる……という構成でした。脚本上では、キリヤマ隊長が「ウルトラセブン」の名付け親だったことになります。
誰が最初に「ウルトラセブン」と呼んだ?
では、実際の放送で最初に「ウルトラセブン」と呼んだのは誰だったのでしょうか。それは第2話の終盤でした。ワイアール星人と戦うヒーローに、「アンヌ隊員」が「ウルトラセブン、がんばって!」と声援を送ります。これが劇中で最初に名前が呼ばれたシーンです。
もしやアンヌが個人的に名付けたのかと思いきや、空を飛ぶセブンを見た戦闘機ホーク1号の隊員からも「あ、ウルトラセブンだ!」(おそらくアマギ隊員)と声があがります。いつの間にか隊員たちの共通認識として「ウルトラセブン」という呼称が成立していたことになります。
それにしても、なぜ、第1話の重要な「命名シーン」はカットされたのでしょうか。実は、名前だけでなく、「セブンはどこから来たのか」「なぜ地球で戦うのか」といった、ヒーロー番組の定石ともいえる情報も語られていません。第1話は多くの謎を残したまま終わっているのです。
円谷一監督の編集意図なのかどうかは定かではありませんが、番組の脚本を多く手掛けた上原正三さんは、「『ウルトラマン』第1話と語り口を変える意図があったのではないか」(雑誌『ウルトラセブン研究読本』より)と語っています。『ウルトラマン』が丁寧に設定を説明する導入だったのに対し、『ウルトラセブン』ではあえて説明を省き、正体や背景をぼかすことで、ミステリアスなヒーロー像を打ち出そうとした、そう考えると、この大胆なカットもまた、意図的な演出だった可能性が見えてきます。
名前すら語られないまま幕を閉じる第1話。その欠落こそが、『ウルトラセブン』という作品の謎めいた魅力の出発点だったのかもしれません。
