国民の3人に1人が極貧にあえぎ、成人のHIV(エイズウイルス)感染率が世界最悪水準の25%を超える絶望の国。ここで国家予算を「自分の性欲と贅沢」のためだけに溶かし続ける男、それがアフリカ最後の絶対君主で、エスワティニ(旧スワジランド)国王のムスワティ3世である。
わずか18歳で1986年に即位したこの国王の本性は、まさに「公私混同の極み」。その名を世界に知らしめたのは、毎年恒例の「リードダンス(葦を捧げる舞い)」という儀式だ。
これは数万人の少女たちが上半身裸の民族衣装で踊り狂う祭典だが、その実は「王妃選び」の場。ムスワティ3世は現在までに15人の妻を持ち、45人の子供をもうけている。
その選び方はすさまじく、2002年には18歳の少女を拉致同然に連れ去り、権力でねじ伏せて無理やり王妃に据えたという「誘拐婚」疑惑まで報じられている。
さらにこの男を象徴するのは、2001年に出した前代未聞の「珍法令」だ。爆発的なエイズ蔓延を食い止めるためとして、10代の少女に対し「5年間の性交禁止令」を発令。違反者には牛1頭の罰金を科した。
ところが舌の根も乾かぬ2カ月後には、自らが17歳の少女を9番目の妻に迎えるという暴挙に出て、国内外から失笑と批判を買うことに。結局、自ら牛1頭の罰金を払って法令をうやむやに撤回させたというのだから、開いた口が塞がらない。
大規模民主化デモが起きても「58歳で新たに婚約」の異常
国民が飢え、平均寿命が50歳を切る一方で、国王の放蕩ぶりはエスカレート。15人の妻それぞれに豪華な宮殿を建設し、ダイムラー製の高級車マイバッハやプライベートジェットを買い漁る。その原資は、本来なら国民の福祉に充てられるべき国家予算だ。
そんな「アフリカの絶倫独裁者」に、ついに終わりの足音が聞こえ始めたのは2021年だった。積もりに積もった民衆の怒りが大爆発し、国内全土で大規模な民主化デモが勃発。一時は国王の国外逃亡説が流れるほどだった。
しかし、依然として権力の座にしがみつくこの男は2024年に、御年58にして元南アフリカ大統領の娘と新たに婚約を発表するなど、相変わらずの絶倫ぶりを見せつけている。
とはいえ、国民を病と貧困に置き去りにし、自ら「処女のダンス」に目を細める前時代的なエゴイストが、自らの贅沢のツケを払わされる日は、そう遠くないはずだ。
(山川敦司)

