カバーオールを着ている姿が、なぜこれほどまで格好いいのかを考えた。労働の現場で生まれ、道具として磨かれてきた背景。身体の動きを妨げない合理的なパターン、必要な場所にだけ備えられたポケット、酷使に耐える生地。すべてが「働く」という目的に根ざしているからこそ、装飾ではない説得力が宿るのだと思う。新品であっても、その原型には百年以上前のワークウェアの設計思想が息づいている。今回はそんな新作カバーオールのなかからSUGAR CANE渾身の一作を徹底解説する。
旧きよきアメリカとフランスを融合させた意欲作

昨年に50周年を迎えた日本を代表するデニムブランドであるシュガーケーン。今回ピックアップしたカバーオールは、“フィクションロマンス”レーベルの意欲作だ。
直訳すると虚構の物語。ディレクターの福富さんが長年積み重ねてきた知見をベースに、史実や資料を的確に紐解き、歴史に埋もれたディテールなどを組み合わせることで、“ヴィンテージでありそうでない”という絶妙な塩梅を表現しているシリーズとなる。
「このカバーオールに使われている生地は、戦前のフレンチワークパンツで使われていたピケのストライプ生地なんです。生成りベースでブルーの糸はインディゴで染色しているため、経年変化も楽しめます。一方でデザインはアメリカ。チェンジボタンやチンストラップ、変形の胸ポケットなどヴィンテージカバーオールがもっとも熟成された30年代のディテールを組み合わせています。もしこの生地がアメリカへ輸出されていたら、このようなカバーオールが作られていたのでは? というフィクションをリアルに体現できた一着だと満足しています」
旧きよきアメリカンワークウエアの中に、ほのかに香るフレンチのエスプリ。当時にあってもおかしくないという説得力やロマンを感じるのは、福富さんの深い見識と確かな復刻の技術があってこそ。

1920〜30年代のアメリカ西海岸のワークウエアメーカーを彷彿とさせるタグデザイン。生地はヨーロッパ由来だが、各部のパーツはアメリカブランドのデザインを踏襲している。

1940年代にはほとんど使われなくなるチンストラップは、生産効率を度外視し、徹底的に作り込んでいた黄金期の米国カバーオールを象徴するディテールのひとつである。

ウォッチポケットやペン挿しを織り交ぜた3in1ポケットは、ワークウエアメーカーの腕の見せ所であり、様々な意匠が存在する。下部にはサイズ表記の入った紙タグが付属する。

第二次世界大戦に突入すると簡素化され、戦後も戻ることがなかった3ボタンのカフスデザインもこの時代の醍醐味。真鍮のボタンはすべてオリジナルロゴが入り、抜かりなし。

内ポケットにはユニオンチケットが付いており、細かな部分まで徹底的に作り込んでいる。内ポケットが付いているカバーオールは意外と少なく、利便性が高いのが嬉しい。


ブランドロゴの入ったボタンは、チェンジボタン仕様になっており、裏のリングもオリジナルというから驚く。当時と同じく表は真鍮、裏は鉄という作り込みも素晴らしい。
SUGAR CANE
FICTION ROMANCE 8oz. INDIGO STRIPE WORK COAT
38,500円
【問い合わせ】
シュガーケーン(東洋エンタープライズ)
Tel.03-3632-2321
米仏の自然な融合

チェンジボタンやチンストラップを用いた1930年代のカバーオールをベースに、フランスで使われていたインディゴストライプの生地をドッキング。着込むことで淡い青に変化していくのも醍醐味である。38,500円
(出典/「Lightning 2026年4月号 Vol.384」)